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iDeCoなんか、すっかり忘れていました。


運用益は非課税も、受け取り時に課税される盲点。

 日経スペシャル「マネーのまなび」12/18放送分にて、NISAとiDeCoの比較が特集されていたが、2024年から大幅拡充されたNISAに意識が向きすぎて、存在をすっかり忘れていた。

 個人的には、NISAの年間の非課税枠が一般が120(18年以前は100)万円、つみたてが40万円だった頃からiDeCoに関しては否定的で、鉄道員時代に某労働金庫から営業されても、開設することなく今に至る。

 無論、旧NISA(一般)非課税枠の上限である600万円など、優に超えるだけの金融資産を保有して、その過半を課税口座で運用しているにも関わらずだ。

 iDeCoのざっくりとした概要は、厚生年金のない自営業やフリーランス向けの、じぶん年金的な立ち位置で、老後資産形成に有利な制度。50歳までに開設して、10年以上積み立てると、60歳以降に一時金ないし年金形式で受け取れる。

 ただ単に積み立てる訳ではなく、NISA同様、運用益が非課税な点と、掛け金が全額所得控除の対象となる。とはいえ、厚生年金がない人向けの制度設計のため、第1〜3号被保険者の違いにより掛け金に上限はあり、12,000円〜68,000円/月と細分化されている。

 掛け金が所得控除の対象となる=税引き前の所得で資産形成ができる点が、税引後の可処分所得から資産形成を行うNISAとの、最大の違いと説明されがちだが、これは課税を受け取り時に繰延しているに過ぎない。

NISAの非課税枠を埋めるのが先決。

 積み立てたじぶん年金を、一時金として受け取る場合は退職所得として、年金方式であれば雑所得として計上される。

 そのため、真っ当にそれなりの規模の会社に定年まで勤めた方ほど、退職金や厚生年金が、退職所得控除や公的年金等控除の範囲を超えてしまうため、iDeCoの受け取り分に関しては丸々課税対象となる可能性が高い。

 思考実験の域を出ないが、元本保証の定期預金で資産形成をすると仮定した場合、平均的な年収だと税金と社会保険料で2割程度天引きされるため、可処分所得で100万円貯めようと考えたら、125万円稼がなければならない。

 これがiDeCoの定期預金型であれば、税引き前のお金で老後資産形成ができるため、理論上は125万円が丸々積み立てられるのと同義である。しかし、この125万円を60歳以降に一時金として受け取る場合、退職所得(分離課税)の税率がおよそ20%だから、税引き後の手取りは100万円となり、iDeCoを使っても使わなくても大差ない。

 公的年金控除を駆使して、ちまちま受け取るとか、退職所得控除を2回使うスキームを利用すれば、実効税率は20%以下に抑えられるかも知れないが、結局のところ、現役時代の賃金で課税されるか、受け取り時に課税されるかの違いに過ぎない。

 そうなってくると、iDeCoで元本保証の定期預金を選択するのは、運用益の非課税メリットが活かせない意味でもったいなく、とはいえ運用するのであれば、同じ運用益の非課税メリットがあり、なおかつ好きなタイミングで現金化できるNISAの非課税枠を埋めるのが先決ではないだろうか。

そもそも所得控除の恩恵が薄い人が8割。

 それに「マネーのまなび」の番組内で、掛け金の全額が所得控除の対象となる税金の差が、運用の観点で有利だと複利曲線で説明されていたが、その際に想定されていた所得税率が20%で、毎月可処分所得で2万円の積立を行う場合と、2.4万円の掛け金を拠出した場合と、パンピーには全く参考にならない数字で、経済メディアを制作する側との温度差を感じた。

 国税庁のデータによると、日本人の平均給与は461万円となっている。これは一部の高年収エリートサラリーマンが全体平均を押し上げた数値となっているため、実態としては中央値の方がアテになる。

 公表されていないため憶測の域を出ないものの、転職情報サイトなどのデータを鑑みると、350〜400万円程度ではないかと思われ、私が鉄道員として賃金労働していた頃の所得レンジと同程度なことからも、肌感覚として大きくは乖離していないと感じる。

 ここまで、ねちっこくデータを並べて何を記したいのか、勘の良い方はお分かりだと思うが、日本人のマジョリティ層の給与所得では、所得税率は5〜10%が関の山で、20%に届く時点で高年収だと言うこと。

 その証拠に、財務省が公表している所得税の限界税率ブラケット別納税者数割合で、0%超〜10%以下が8割を占めており、所得税率が20%以上の時点で、就業者の上位20%と、とても普通とは言い難い。

https://www.mof.go.jp/tax_information/images/image16.pdf

 煎じ詰めると、老後資産形成を真に必要とする、給与所得があまり高くない8割の労働者にはiDeCoの所得控除は恩恵が薄く、逆に家計を工夫すれば、資産形成などなんてことないであろう、上位20%の高所得者には所得控除の恩恵が大きく、誰のために設けている制度なのか迷走している感が否めない。

 無論、賃金形態は日系企業ほど、いつまで保持できるのか定かではない年功序列制で推移しているため、若い時ほど安くこき使われていることから、iDeCoの所得控除は基本的に所得税の5%、住民税の10%しかメリットがないと考えた方がよく、60歳まで資金が拘束されるデメリットの方がどう考えても大きい。

 一度iDeCoを開始すると、掛け金の休止はできても解約することはできず、休止中も口座手数料が取られる。そのため、60歳に受け取るためのデッドラインである50歳を迎える前。

 つまり40代で、それなりの給与所得が得られるようになってから、iDeCoを考え始めた方が所得控除の恩恵が大きく、かつ資金拘束のデメリットを最小化できるため、それまではNISA優先で資産形成をすれば良いのではないだろうか。

 以上を踏まえると、10代〜30代のうちは、iDeCoなんか、すっかり忘れていました位の温度感でNISAを活用すれば良いと、20代ながら思う。もっとも、資産形成できるだけの余剰資金があればの話で、多くはそれがあったら苦労しないと思うことだろう。とかくに人の世は世知辛い。


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