最近の金融経済動向(2023年8月)
円安は介入で限定的との見方が強いが…
月初に142円台後半だったドル円は、一時、147円台をつけたものの、現在は146円台前半で落ち着いている印象があることから、市場が日銀の為替介入を意識して売りづらい状況ではないかとの見方が強い。
そもそも円安の背景にあるのは日米の金利差であり、先月の金融政策会合で、事実上の利上げを許容したものの、諸外国のような政策金利にできるような状況にない程度に、日本の経済力が相対的に低下していると捉えるのが妥当だろう。
為替介入の思惑から、一定程度の抑止力にはなるのかもしれないが、外貨を稼げるような産業構造に変えていかない限り、人口減少によるGDPの縮小で、長期的には円安が加速するような未来が現実的なシナリオとして浮かぶ。
とはいえ、先日のジャクソンホール会議では、特に進展するような材料があった訳でもないことから、為替や株式市場は方向感を欠く、グダグダな展開がしばらく続きそうである。
いつ投資するか?
個人的には、投資家がそれに慣れきった後、何かの拍子に急展開となって、市場がクラッシュしてソフトランディング失敗が、備えるべきバッドシナリオであり、最も現実味のある展開と想定すべきだろう。
投資初心者ほど、景気後退局面に突入しそうな不穏な空気感があると、〇〇ショックが起きるまで待とうと考えがちで、当たり前ではあるが、市場がいつクラッシュするのかは誰にも分からない。
明日とか来週かも知れないし、2〜3年後かも知れない。オオカミ少年のようなもので、経済アナリストが恐慌を言い続けて、誰も信じなくなった頃に、何の前触れもなくパニック売りが起きて、退場者が続出するのが常である。
コロナショック経験者として、暴落が起きている渦中に、Google先生に「コロナショック」で調べても、的を得た検索結果は得られなかった。
コロナショックの名称が使われるようになったのは、底打ちしてから1〜2ヶ月ほど経過した頃だったように記憶している。つまり、急落したところで何処が底なのかは誰にも分からないのだから、暴落は甘んじて受け入れる他なく、日頃から爆死しない運用を心掛ける以外の得策はない。
それに今、投資に興味を持っているということは、手元に余裕資金がある証拠で、これが不景気になると、金融商品のほとんどはバーゲンセール状態になるが、多くの人は先行き不安で意識的に買いに行けないし、賃金労働者なら不景気の煽りで投資どころではなくなっているかも知れない。
好景気の恩恵に預かれるのは、資産を運用している者(資本家)だけだが、不景気の煽りを食らうのは全員で、収入源が賃金労働のみだと、リスク(不景気)とリターン(好景気)が釣り合わない。
だから、最適な投資時期など考えずに、今から適切な投資商品で、長期・分散・積立を始め、1日でも早期に、最初は少額で良いから、資本家側のポジションを取って、好景気の恩恵を受けられるようにした方が良いと個人的には考える。
恒大ショックとなるのか…?
中国恒大集団が米国で破産申請したことで、中国マネーはリスク回避の動きが出ていることから、この連鎖反応でリーマンショックのような金融危機が起きるのではないかと予測する者も居る。
構造としては日本の不動産バブル崩壊と酷似しており、2年前から問題視されていたにも関わらず、状況は改善するどころか悪化していることも相まって、もう数年かけて不動産価格が下落・低迷し、一人っ子政策から少子化と、日本と同じ轍を踏む可能性は、それなりにあるように思う。
私も生前の出来事なのでピンと来ないが、日経平均株価が38,915円87銭の最高値を付けた1989年12月29日をピークに、日本経済の状況がガラッと変わったかと言えば、歴史を振り返るとそうはなっていない。
株価は先行指標であり、1989年をピークに下落局面となっても、実体経済に反映されるまでにはタイムラグがあることは、バブル崩壊や平成不況と言われる期間が、1991年3月から1993年10月、就職氷河期的期間が1999年〜2005年と記録されていていることからも窺える。
リーマンショックも同様に、リーマンブラザーズが経営破綻したのは2008年9月15日だが、新卒求人に影響が出たのは2009年〜2010年、JALの経営破綻も2010年とタイムラグがあった。
つまり、中国恒大集団の破産申請は序の口に過ぎず、かつてのリーマンショックのように、最初は大したことがなかった損失額が、時間経過と共にみるみる膨らんでいき、世界経済に大きな影響を及ぼす可能性はゼロではない。
世界で2番目の経済大国が、米国一強を凌駕する勢いで成長したと思いきや、バブル崩壊で長期に渡って低迷して、GDPが他国に追い抜かれ、転落していくシナリオは、我々が一番良く知っているし、失われた30年で産業構造がどうなったかを鑑みれば、ピンチでもあるが、投資のチャンスが掴める絶好の機会かも知れない。