最近の金融経済動向(2024年12月)
高額療養費、平均的年収で負担増に
現状、標準報酬月額28〜50万円の場合、高額療養費制度によって毎月の保険適用部分の上限額が「80,100円+(医療費−267,000円)×1%」となっているが、この80,100円部分を、88,000円程度まで引き上げる調整に入ったとのことだ。
理由としては、前回見直した10年前の平均給与が10%上昇しているからだが、国民負担率の推移を見れば分かる通り、10年前に42%台だった国民負担率は今、何%だろうか。
10%上昇しているらしい平均給与とは裏腹に、手取りは大して増えていないのだから、税率などに表れない形で、現役世代の負担がステルス増になると捉えても差し支えないだろう。
とはいえ、私は社畜時代の平均年収が370万円(勤続年数5年未満)ほどで、標準報酬月額が26万円と28万円の間を行ったり来たりしていた。
病に倒れ入院した時の等級は26万円で、月を跨がずに退院したため、3割負担なら30万円近く負担していた標準治療の保険適用部分は57,600円で済んだ。もし等級がひとつ上の28万円だったら、87,430円と2万円近い差が出ていた。この等級ひとつ違いによる極端な差も刻みを細かくする形で対応するらしい。
そもそも平均的年収水準に満たない20代が、過労で高額療養費制度を利用するハメになること自体おかしな話だが、理不尽で不条理な経験者として記せることは、少なくとも平均的年収以下の、お前が終わってんだよww側の所得レンジで、目先の残業代などに目が眩んで働き過ぎた結果、病気になると馬鹿を見る。
それならば端から日本じゃなくてお前が終わってる事を受容して、年収370万円を超えないよう、労わりながら適当にダラダラ働いた方が、大きな病気を患う確率も下がるだろうし、もし仮に患った際も自己負担は少なく済む。
どんなにダラダラ働いても平均的年収の下限である370万円を超えてしまうような、恵まれた雇用環境に身を置く方は、病気をしないようする他ない。
あくまでも、頑張らないと平均的年収に届かない低所得者層は、無理して平均的年収まで稼ぐメリットがなく、労働力不足が問題となっている中で、就労意欲を削ぐ厚労省の巧妙な意向に乗っかった方が、時間差で企業側が人手不足でバカを見る類の嫌がらせだと思って、働かないアリとして余力を温存するのが現時点での最適解だろう。やはり働いたら負けである。
出生数70万人割れ
先のステルス負担増に通じる話題だが、支える側(現役世代)と支えられる側(高齢者等)のバランスが崩壊していることで、この国で子どもを産み育てることが罰ゲーム化しており、結果として少産多死状態で人口が減少し続けている何よりの証拠が出生数の急激な低下だろう。
高額療養費制度ひとつ取っても、平均的年収以上であれば等級に応じて10〜15%引き上げる見込みなのに対して、平均的年収(370万年)以下の引き上げ率は5%、住民税非課税世帯に関しては2.7%だ。
私のようなレアケースを除けば、基本的に療養費が高額となるような、大きな病気を患う年齢層のボリュームゾーンは、2,700万円前後とされている生涯医療費のおよそ半分が、70歳以降に使われるとされていることからも、老齢世帯であることは想像に難くない。
そして、2019年の国民生活基礎調査によると、住民税非課税世帯の72.4%が65歳以上で占めている。つまり、事実上、現役世代の負担を増やす形で、低所得者や高齢者が負担する高額療養費負担増を抑えているとも捉えられる。
https://www.npo-nenkin.jp/web_koho/source/vol107_column.pdf
民間保険であれば、リスクが高い人ほど保険料は高く付くのが当たり前なのだから、リスクと費用負担の重さが逆相関する公的保険は、そもそもの制度設計が破綻している。
何よりタチが悪いのは、事実上の税金である健康保険は厚生労働省の管轄であり、ホンマもんの税金は財務省の管轄と、連携が取れていないどころか、財源は権力の源であるため、省庁間のライバル意識から、お互いがあの手この手で増税して、頑張って就職して、真面目に働く者がバカを見る”無理ゲー”社会をヒートアップさせている体たらく。
そうして人口減少と少子化が挽回不能となって、省庁間の連携をとるために子ども庁を作ったはずだが、莫大な公金を投入している割には、出生数は下げ止まるどころか、むしろ減少が加速してオウンゴールをキメている。現役世代を巻き添えにした、省庁間の醜い利権争いを続けている限り、この傾向は変わらないだろう。
GPIF利回り引き上げ案
投資とギャンブルの区別がつかないパンピーが、年金積立金を運用していると知ったら、口から泡を吹いて倒れそうだが、運用しているGPIFは、株式と債券が半々、国内と海外を半々と、バランスの良い超堅実なポートフォリオで運用しており、手堅く運用益を出している。
この目標利回りを、昨今のインフレに追従させるために、1.7%から1.9%に引き上げる案が浮上しており、債券売りの株式買いが期待される。
かつてGPIFのポートフォリオで過半を占めていた国内債券は、60%→35%→25%と配分の見直しが繰り返されるたびに減少してきた歴史があり、今回の引き上げ率を鑑みると、国内外の比率は半々のまま、株式:債券の比率が6:4辺りに落ち着くものと思われる。
根拠としては、国内外株式の比率は±7〜8%、国内外債券の比率は±6〜7%、株式・債券括りで±11%の誤差が許容されていることから、6:4に変更したとて、国内外株式+5%、株式全体で+10%、国内外債券−5%、債券全体で−10%で済むことから、即座にリバランスする必要に迫られる事態にはならない。
200兆円の10%とはいえ、国内外の株式や債券でそれぞれ5兆円規模の買いや売りが出れば、相場に影響する可能性が高い。
しかし、長期での期待リターンが高い株式を増やし、反対に低い債券を減らすのであれば、数年間放置するだけでも株式は勝手に成長することが期待され、結果的に債券の比率は下がるのが通例である。
そのため、特段の売りを出さずとも、数年間の時間さえ掛ければ、誤差の範囲内で自然にリバランスできる範疇と踏んでおり、現行の運用方針の制約上、その落とし所の上限が、国内外の比率は半々のまま、比率を6:4にする格好と個人的には推察する。
そのため、日本株の比率が25%→30%まで上昇する期待感はあるものの、買い入れるかは上記の通り別問題であり、過度な期待はしない程度の温度感で相場と向き合うのが賢明だろう。