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2単元保有のすゝめ'e


相場が読めたら苦労しない

 日本株は米国株と異なり、取引する単位が100株単位で、これを1単元と呼ぶ。私は最近になって最低でも2単元、つまり200株を基準に保有するのが最適ではないかと考え、資産の許す限り2単元保有するように心がけている。ただし、優待目的で購入している銘柄はこの限りではない。

 なぜ2単元保有するのかと言えば、相場の上がり下がりを予測するのは不可能で、何より、私が短期売買のセンスを持ち合わせていない。大体は安値だと思って買ったらそれよりも株価は下落する。年初来安値などのデータを参考にして売買したところで、外すときは外すのが人間の性と思い、こればかりは諦める他ない。

 実際に、保有する銘柄の2割は20%以上の含み益が出ているが、もう2割は20%以上の含み損を抱え、6割は±20%で推移している。大型株は当たり、中小型株は外す傾向にあるから、損益上ではプラスの方が大きいものの、銘柄数で見れば得をするか損をするかは五分五分である。

 だからまずは、1単元だけ打診買いしてみて、含み損が大きくなったタイミングでもう1単元の買い注文を入れる。いわゆるナンピン買いと呼ばれているものだが、最初から2単元買うつもりなら、まとめて購入するよりも取得単価を下げることができる訳で、負け込んで無計画に行うナンピン買いとは似て非なる。

 もちろん、買った直後に株価が上昇してしまい、1単元しか保有できなかったケースも存在する。そのような銘柄は少しだけ悔しい思いをするが、1単元も買えないよりは、保有ができているわけだから、打診買いしておいて良かったと考えるようにしている。気にするだけで何も行動を起こさないより遥かにマシだからだ。

それは投資か、それとも投機か

 さて、取得原価を下げるだけであれば、2単元にこだわる必要はなく、時間をかけて買い増していくのも戦略としては考えられるが、「卵は1つの籠に盛るな」の格言にもあるように、一点集中投資は成功すると大きなリターンが得られる一方で、失敗に終わると損失も大きい。

 個人投資家の最大のメリットは、損切りをする必要がなく、運用期間を長く取ることで、複利の力を最大限活用できる点にある。長期にわたり成長が見込める銘柄を予め選定する必要はあるが、何より投資を続けるためには、大きく勝つことにこだわるよりも、大きく負けないことに重点を置くのが私の投資哲学である。

 だから、一か八かの大博打となるようなものは「投資」ではなく「投機」であり、パンピーが株式投資で誤認しているギャンブルのイメージそのままで、個人的には好きではない。

 株式投資そのものが危ないのではなく、一点集中投資や信用取引などの手法を、リスクを見誤って投機するのが危ないだけである。身近な包丁に置き換えて考えればわかる。

 包丁そのものがあって危ない訳ではなく、危険な用途で使う人に問題があるだけなのだ。投資が身近でない人からすれば、得体の知れないものだから、本能的に瞬時に拒絶したくなるのかもしれないが、投資も包丁もあくまでひとつの道具に過ぎず、それを用いることで、便利な生活を送るのも、破滅を導くのも、結局のところ、使用する本人次第なのである。

いかに投資元本を回収するか

 上記の考え方から、できるだけ少ない売買単位で、幅広い銘柄に投資しておく方が分散が効いてリスク管理には有効で、その最適な売買単位が2単元なのである。

 最近では、SBI証券のように単元未満株での売買も可能になっているが、指値等が利用できない上、株主優待は100株単位のものがほとんどだからその恩恵もない。

 通常の証券会社で単元未満株取引を行うと割高な手数料が発生してしまうため、最もコスパの良い1単元単位の取引である方が手数料負けする可能性は少なくなるわけである。

 2単元で保有した場合、買う時にも打診買いで一度様子見できるように、売る時も半分で様子見が可能である。これにより、もし仮に長期的に株価が倍になった場合、半分だけ売却することによって投資元本は回収でき、残った半分の株はタダで入手したも同然になる。これを恩株と呼んでいたのが本多清六だ。

 彼はダサいたま貧農の生まれにして、1代で巨万の富を築いた。著書「私の財産告白」にて、恩株を持つための手法を「十割益半分手放し」と呼び、この手法なら、いつまでも株を持ち続けることができると断言していることからも、投資元本を回収した後は、ほったらかしが最適解なのだろう。

 恩株なら例えリーマンショック後のJALみたいに、文字通りの紙切れとなっても、投資元本は回収している訳だから痛くも痒くもないし、むしろ配当金を生み出すならば、これほど頼もしい存在は他にない。

 実際には、売買益に対して20.315%の所得税及び住民税が発生するから、昔ほど単純ではないが、取得コストがゼロやマイナスの株式を、時間をかけてコツコツと集めていくのが、個人投資家の醍醐味と言えるのではないだろうか。

[増補]二度に買うべし、二度に売るべし

 会社四季報を読んでいると、面白そうな銘柄を発見しては、すぐに買いたい欲に駆られる。しかし、相場格言にも「二度に買うべし 二度に売るべし」とあるように、2回に分けて売買する慎重さと、それができるだけの買付余力を確保してから買い向かうのが無難だろう。

 証券取引所が1単元の売買代金は、50万円以下が望ましいと表明していることからも、逆算して平時の買付余力は100万円程度確保しておいた方が、下落局面で指を加えて見ているだけの状態を避けられ、バーゲンセールに参加できる意味で、確かに運用方針として理に適っている。

 別にホルダーでなくとも、IRからその銘柄のことを、隅々まで調べれば、投資的確か否かを判断することくらい出来るが、人間というのは、どうにも身銭を切らないと本気になれない生き物らしく、1単元打診買いすることで、見える景色があるのが私の経験則だ。

 だからこそ、一度で買付余力を使い切って、8/5のような下落局面で首が回らなくなったり、退場してしまうのは非常に勿体無いことで、最低でも2単元買えるだけの買付余力を確保してから、1単元打診買いする位の慎重さが、個別銘柄を長期で運用するにはちょうど良いのかも知れない。

 売りも同様に、高値だと思ったら、後からチキン売りだったケースや、逆に悲観で投げた所が底値の可能性もあるため、複数回に分けて、時間を分散した売買を心掛け、取得や売却時の単価を平準化することが、読めない相場と向き合う上で重要なのかも知れない。


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