価値観と運用方針の合致は大切。
どれだけ予測したところで、外す時は外す。
隠居生活を謳歌する中、古くからの友人が連休を機に、わざわざリタイア生活の様子を見に僻地まで来た。
それに備えたつもりはないが、転居の際に不用品を処分してきた反動から、必要に迫られるまで所有物を増やさずに、どこまで生活できるのか、ひとり耐久レースキャンペーンを実施中だったため、コンセプトは「内見」とブラックジョークを交えて中を案内したが、「ホンマや…」とあまりの生活感のなさに呆然としていた。
一応、初めての土砂災害警戒区域上にある物件のため、リスクを抑えるために、これまで以上に床にモノを置かないことを徹底した結果、瞑想であらゆる感覚を研ぎ澄ませられるレベルで、視界のノイズが皆無な、「無」の居住空間が完成し、生活感があるのは、ドアの向こう側にあるキッチン周りのみとなった。
それはさておき、わざわざ僻地で固定費用を引き締め、資産所得で食っていく覚悟を決めた私の所に出向くからには、何かしら有益な投資情報を引き出して帰りたいと思うのは当然の流れである。
一応、大学のAFP認定研修を修了し、FP技能士試験の受験申し込みをして、退路を絶って学習せざるを得ない状況に、自分自身を追い込んだ畜生として、個別具体的な投資助言を有償で行うのには投資助言業登録が必要であることは、倫理規定で学んでいる。
そのため、あくまでも無償で、自分だったらこういう指標を見たり、この手法で分析した上で、近い将来にこうなるだろうと予測を立てて、現時点でこの判断に至るだろうと、その判断に至った背景を論理的に説明する。
その上で、最終的には将来、上がるか下がるかの二択だが、どちらになるかは誰にも分からない上、どれだけ予測したところで外す時は外す身も蓋もなさから、どちらに転んでも良いように、逆指値で利食いor損切りラインを設定しておくのは有効だと伝えた。
テクニカル分析、ウケが良い問題。
とは言え、どちらに動くかは誰にも分からないのだから、どちらに動いても良いような取引を心がけると言う、実に中立的な意見を述べるだけでは何の面白みもない。
そのため、ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析の双方から、こういう見方ができるため、近い将来にこうなる可能性が考えられるといった、推論のアプローチを気になる銘柄や、相手が保有している銘柄を題材にして行う方が、聞く側も真剣だろうし、実になるのは間違いない。
私はファンダメンタルズ分析と、テクニカル分析を二元論とは捉えていない。前者が「いくらで」買うべきかを分析するのに対して、後者は「いつ」買うべきかを分析しているからだ。
短期売買の繰り返すだけのテクニカル分析1本で億を稼ぐ人もいるが、中長期目線で複利の恩恵を得たいのであれば、ファンダメンタルズ分析は必須となる。
とは言え、株価は美人投票みたいなもので、短期的には需給バランスに応じて価格が形成される以上、必要に応じて両方使えば良く、時代の変化に伴って、金融市場や投資環境も変化する以上、引き出しが多いに越した事は無い。
そんな思想から、地道な作業の連続で実に面倒臭い、ファンダメンタルズ分析の方が性に合っている分、比重は置いているものの、売買のタイミングを見計らう際には、テクニカル分析を用いることもある。
2つの分析手法の境界が曖昧であるが故に、まずはファンダメンタルズ分析で、ざっくりと財務状況を把握してから、テクニカル分析で、直近の需給バランスを推し量ろうと試みる。
それを説明する際、定量的なファンダメンタルズ分析はつまらないものとなり、定性的なテクニカル分析は、感覚的にイメージしやすいこともあってか、個人的に専門的に深掘りしている領域ではないものの、他人からのウケは良いため、テクニカル分析で興味を示されると「ううぅぅ専門外…」と思いながら、噛み砕いて説明するのに四苦八苦する。
大事なことは、だいたい面倒くさい。
とはいえ、テクニカル分析を知りたがる、投資初心者の気持ちは理解できる。受給バランスを推し量ろうとするテクニカル分析は、最終的には株価が上がるか下がるかに帰結するため単純明快である。
それに対して、企業の潜在価値を推し量ろうとするファンダメンタルズ分析は、無限にある変数の中から、潜在的な価値がいくらになるかを、浮き彫りにしなければならないため、どうしてもアプローチが複雑怪奇になってしまう。
簿記や経済の知識は元より、あらゆる適時開示情報や、経済新聞、経済雑誌類を読み込み、統計や推論も駆使して、尤もらしい仮説を立てては、数理的な処理を行い、理論値と実行値(時価)とのギャップを探り、期待値を高めていく。
そこまでしたところで、持論で算出した株価よりも、時価が割高だったり、ほぼほぼギャップがなかったりすれば、投資妙味がなく、取引には至らないのだから、想像するだけで骨が折れる。
小見出しの一文は、「プロフェッショナル 仕事の流儀」で、宮崎駿さんが口に出した言葉で、ファンダメンタルズ分析を深掘りするのは、面倒の極みであり、労力の割には直ぐに成果が現れない中長期投資のため、誰もやりたがらない。
だからこそ個人投資家は、成果が直ぐに出る短期投資のテクニカル分析に走り、レッドオーシャン故に多くが相場の波に飲まれ、退場していく。
その点、ファンダメンタルズ分析は、個人では競合を避けられるものの、人員や資金力で太刀打ちできないファンドと競合するため、決してブルーオーシャンではない。
とはいえ、ファンドは運用し続けなければならず、「休むも相場」が使えないため、個人投資家はそれを武器にしつつ、同じ個人でも短期売買を行う多数派との競合を避け、中長期の複利で増やそうとするニッチ戦略が生涯運用し続ける上で、面倒くさいものの大事な気はする。
私は他人が進みたがらない道を、好き好んで進む天の邪鬼な価値観と、ファンダメンタルズ分析に比重を置く、中長期の投資手法がフィットしたことで、高卒、労働集約型で低賃金の労働者でありながら、20代のうちに老後資金問題が解決するだけの金融資産を有する幸運に恵まれたのだろう。
面倒なことと、価値観と運用方針の合致は大事だと思いながら、資産運用、資産形成に向き合えると、リターンがそれに応えてくれるかも知れない。
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