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自己顕示欲は蓄財の妨げとなる?


行動経済学の基本姿勢。

 過日、ポイ活で決して広くは知られていないであろう抜け穴を発見したため、友人と情報共有した。互いにいずれこの穴は塞がれるだろうな。と見解が一致したと同時に、自称投資・節約系インフルエンサーが広めたら、瞬く間に食い散らかされて、そう長くは続けられないスキームだろうと言う結論に着地した。

 友人は「なんでネットで広めるかね。自分の首を絞めるだけなのに。」とボヤいた。以前に記しているが、パイが拡大しない前提だと、儲かる手法を教える=自分の利ざやが小さくなるわけで、儲かる情報ほど、それで儲けられなくなるまで独占しておくに限る。

 視野が広く、頭がまわる側の人間であれば、おそらく美味しい情報ほど無闇矢鱈に広めるべきではない的な結論に帰結するが、自己顕示欲が働くと全体のことまで考えが及ばず、自分さえ良ければと、結果的に長期目線では自分の首を絞める行為に走るのだと思うと滑稽である。

 「自己顕示欲」と聞くと心理学の用語のため、受け手によっては小難しく感じるかもしれないが、平たく言えば「見栄」である。

 他人に良く見られたい的な見栄により、うまい話を拡散しては、その穴が塞がれて全体が不利益を被る。全体に影響を及ぼすのだから、自分さえ良ければと広めた、見栄っ張りな本人も例外ではない。

 ここに行動経済学の基本姿勢である、人は必ずしも経済的合理性に基づいて行動するわけではなく、往々にして感情などの要因から、経済的には非合理的な行動を取るきらいがあることを思い知らされる。

見栄にいくら注ぎ込んでも満たされない。

 学生時代は控えめな性格な奴だと思っていたけど、ああ見えて結構、自己顕示欲強いんだな。

 新郎側の友人として招待された挙式と披露宴で、やらされてる感が出ていれば、心の底から同情する私だが、それを微塵にも感じないどころか、むしろ新婦より乗り気に見える新郎の姿を目にして、ワイン片手にそんなことを考えていた。酒がうまい。

 自己承認欲求が強い人の特徴を調べてみると、用心深い、没個性で自己主張しない、失敗しない、他者を攻撃しないと、冒頭の「ああ見えて」の特徴と概ね一致している。

 そういえば彼、Twitter Blueに課金してたっけ。住まいも23区某所で場所も家賃もご立派だよなと、自分にとって都合良く解釈できる材料が無数に思い浮かぶ辺りに、株式投資で培った観察眼の鋭さと、仮説検証能力の高さが思わぬ局面で機能している。

 ここだけ切り取って記すと、ただ単に性格の悪い奴に成り下がっているが、その場で公言せずに、脳内補完に留めるだけの理性が残されているだけマシである。なにより酒がうまい。

 とはいえ、同じ学舎で苦楽を共にした者同士である。いくら明らかな成功の形を示すといっても、工業高校の出自である以上、レール上の人生を歩むのに際して、良いレールもとい、世間体の良い組織集団に所属した以上でも以下でもない。

 旧帝大や難関私大を出て、外資系で若くして年収1,000万円オーバーとか、スタートアップでストックオプションが付与される世界の住人ではないわけで、成功の形と言っても、生涯賃金という名の天井が垣間見える。

 そうなると、限られた生涯賃金の中から、何にお金を使うか、計画的に割り振る考え方が重要になってくるが、自己顕示欲という名の見栄は、いくら注ぎ込んだところで、決してどこかで満たされて、パッタリ途絶える類の欲求ではなく、個人的にはそこにコストをかけても仕方がないと割り切る必要があるのではないかと思う。

非正規でも、案外何とかなりそうな公算。

 一般的な男性正規雇用者の生涯賃金が2億円(高卒)〜2.7億円(大卒)と言われており、女性は出産や育児に際して、短時間勤務や非正規雇用にシフトする割合が高く、統計では男性よりも5,000万円程度低くなる。

 これを見て男女間の賃金格差で差別と捉えられがちだが、ハーバード大学のゴールディン氏の研究により、子どもを産むことによる収入減と、男性ほどシフト勤務や長時間労働を選ばない差異により、賃金格差は大方の説明が付くことが明らかになった。

 さて、本題に戻ると限られた生涯賃金から、ライフイベントを想定して、何に対していくら割り当てるかのと言った観点が重要なのは先述の通りで、生涯賃金は正規雇用を前提に2億円と仮定する(ケース1)。

 まず、税金と社会保険料で2割ほど源泉徴収されるため、4,000万円差し引いた1.6億円の枠内で考える必要がある。

 そこから住居費で、持ち家賃貸論争はあるものの、一般的には生涯で7,000万円前後と言われており、20歳から平均寿命の84歳まで住居費を支払うと仮定し、概算の総額を768ヶ月で割るとおよそ9万円となるため、そこそこ現実的な数字だと判断して7,000万円を差し引き、残りは9,000万円。

 どうやら年金をアテにすると、老後資金で2,000万円足りないらしいので、算出方法にツッコミどころはあるものの、ケチをつけ始めるとキリがないため、素直に差し引いて残り7,000万円。

 ここまで来て、ようやく子どもを持つか否かの話となり、種の存続を鑑みて2人養育しようと思うと、社会に出るまでの養育費として、ひとり2,000万円程度必要と言われているため、合わせて4,000万円の差し引き。残り3,000万円。

 サラリーマン人生が40年で済むかも怪しいが、おとなしく割り算すると自由に使えるお金は年間75万円。月換算で6万円ちょっと。

 養育費用が二重計上になるものの、基本的には、月6万円の範囲内で、食費やスマホ代をはじめとする家計をやりくりしなければ、一馬力で子ども2人を養い、かつ老後破産しない人生設計と資金計画は実現できず、控えめに表現しても無理ゲーである。

 往々にして、一馬力では資金が不足するため、夫婦二馬力で働く羽目になっているのが現実である。

 しかし、自己顕示欲という名の見栄を手放すと、非正規雇用だとしても案外何とかなるのではないか。というのが私の仮説で、生涯賃金が半分の1億円で仮定(ケース2)してみると税金は2,000万円。

 そもそも単身者なら家賃に9万円はおろか、6万円も掛けないことを踏まえると、2/3に圧縮できて4,700万円。

 老後資金も夫婦で2000万円足りないのであって、単身であれば単純計算なら1,000万円で済む筈である。

 1億円から、ここまで概算した費用7,700万円を差し引いた残りが2,300万円。懲りずにサラリーマン人生で月換算すると5万円弱と、自由に使えるお金は正規雇用と月額換算で1.5万円しか差が付かず、お先真っ暗なイメージほど悪いとは思わない。

 それを考えると、世間体で良い人生を演出するために、結婚や住宅購入、マイカーや子育てで必要以上に消費している可能性が浮上する訳で、人並み人生のケース1と、省エネ人生のケース2の差額である5,300万円のうち、何かを妥協して蓄財に回せば、即座に老後資金問題が解消する可能性を秘めている。

 自己顕示欲とうまく付き合うことが最大の難題ではあるものの、そこさえクリアしてしまえば、蓄財は想像するよりも遥かに易しいものとなる筈である。


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