インカムは欲しいが、利回り重視でもない。
利回りより重要視する増配率。
私は日本株を高配当な銘柄を中心に運用するように心掛け、取得額ベースで見た配当利回りは4%を超えているが、バリュー株の価値が見直されるなどで株価が上昇し、含み益が増大すると当然ではあるが利回りは低下する。よって、時価ベースで配当利回りを算出すると4%を割ることが多い。
購入時は配当利回り4%超だったのに、何かの拍子で株価が上昇して、増配が追いつかず、利回りが3%を下回るようになると、もはや高配当銘柄とは言えないため、利確して組み替えを検討するが、増配率によっては継続保有したりもする。
以前にも72の法則について記しているが、72/利回り(%)によって、元本が倍になる年数を簡単に算出するものである。配当利回り4%を再投資するなら、おおよそ18年で投資元本が倍になると言った具合である。
とは言え、経済的に独立して金融資産運用を主な収入源とし、早期リタイアに踏み切ると配当金再は生活費として消費することになるため、再投資は出来なくなる。
そこで増配率の出番となる。仮にポートフォリオ全体の増配率が3%であれば、72の法則によって、配当金を再投資せずとも24年後には、受取配当金の総額は2倍に成長している計算になる。
仮に老後資産として確保した2,000万円を年率4%で運用して、最初の年に80万円分の配当を全額使い切っても、毎年3%ずつ増配するならば、24年後には配当総額が160万円に成長していると言った具合だ。
勿論、株価がそのままだと配当利回りが8%となってしまい、そんな利回りは市場原理が働くならあり得ないため、時価総額も4,000万円前後に成長している可能性が高い。元本毀損のリスクがあるとは言え、インカムを全額使っても資産が増える可能性があるのだから、夢のあるプランでもある。
その高配当は持続可能か。
投資を行う目的は、資産を効率よく増やしたいからに他ならない。資産を効率的に膨らますには、アインシュタイン博士が人類最大級の発明と評した、複利の力を借りるのが最も有効である。
複利を最大化するのなら、増配する銘柄で配当金も全額再投資するのが理にかなっているが、それだと家計簿のインカムは一切増えず、最短でお金持ちの道へ進める可能性はあるが、生活が良くなっている実感は湧かず、投資を続けるためのモチベーションを保ち辛い。
全世界株式や米国株式のインデックスファンドで、分配金再投資型のものがそれに該当する。日本株と並行して、外国株式をインデックス運用している身として、正直なところ、それ単体で淡々と積み立てるだけでは、確かに最適解で証券口座の数字は効率的に増えるかも知れないが、それだけで生活が豊かになっている実感はない。
だからこそ、受け取った配当と株主優待は余すことなく消費して生活にゆとりをもたらすと共に、長期で運用することで配当が時間経過とともに増えていく手法がバランス良く、投資を継続するモチベーションを保てる秘訣だと考えている。
配当だけを最大化するのであれば、全額を某たばこ産業の銘柄に突っ込むのが、最も手っ取り早く大きなインカムを手に入れることができるし、それを実践している方も散見される。最近では海運銘柄だろうか。私もフルベットすれば数千株単位で保有できて、百万円単位の配当を手にできるが、そうしようとは思わない。
それはFXで新興国通貨のスワップ金利を受け取る行為と同様、インカムとキャピタルロスのどちらが先に大きくなるかの、チキンレース状態となる確率が高いからである。いくらインカムがプラスでも、元本が毀損している様では持続可能性には疑問が残る。
高配当と成長は相反する。
だからこそ、理想はそこそこ高配当ではあるけれど、成長余力がある銘柄となる。しかし、企業が株主還元の一環として配当に積極的となるのは、自社の事業が成熟して、多額の設備投資を行わなくても安定的に一定の利益を叩き出せるフェーズに入り、事業への有効な投資先がなくなりつつあるから、内部留保で溜め込むよりは株主還元をする動きとなるのである。
これが、本投資手法最大の矛盾である。高配当は成熟産業でなければ実現しないし、増配率を期待するなら成長産業に投じなければならないが、成長を最大化するためには、Amazonの様に生み出した利益は全額事業に投資するのが効果的で、株主に配当など行なっている場合ではない。
両極端で考えると相反する概念ではあるが、現実にはこれら中間のグラデーションで、そこそこの配当利回りと、連続増配を両立している銘柄もある。
他にも自身で安定配当の銘柄と、成長産業で増配が見込める銘柄を組み合わせることで、ポートフォリオ全体で見たらそこそこの利回りを保ちつつ、成長力も持たせるように組み合わせることも個別株投資なら可能である。
私はどちらの手法が長期目線で適しているか、試行錯誤している最中であるため、両者とも取り入れている。連続増配株かつ高配当な銘柄だけではセクターが偏ってしまうし、成熟産業と成長産業の組み合わせだけでも、何かの拍子にバランスが崩れそうなので、成熟、成長、中間をそれぞれ10銘柄以上で構成できるように心掛けている。
とは言え、銘柄数を増やして分散の度が過ぎると、株価指標と似通ったリターンとなるジレンマがあるため、爆発力を持たせたいのなら、ある程度の偏りは必要となり、黄金比で運用する見果てぬ夢を追いかけつつ、日々成長する他ない。