iDeCoを使わず老後資金対策。
拘束力のない新NISAが優先。
以前の記事でも、私がiDeCoをやらない理由を記しているが、端的には60歳まで資金が拘束されるデメリットが大き過ぎるためだ。
資産形成で万人が利用できる税制優遇制度は、NISA、iDeCoがそれにあたるが、NISAに関してはこれまで一般NISAで最大600万円、つみたてNISAで最大800万円と、老後資金2,000万円不足問題の数字を意識すると、運用益部分が非課税になるとはいえ、枠内では全部が補えるものではなく、使い勝手も本家ISAと比べると見劣りするものであった。
それが2024年の税制改正の目玉となった新NISAでつみたて部分に相当する枠が年120万円、一般部分に相当する枠が年240万円が併用可能で、生涯投資枠1,800万円まで非課税かつ、非課税枠を売却しても翌年に復活するなど、至れり尽くせりな改正となりそうな雰囲気である。
これまでNISAだけでは飽き足らず、iDeCoも積み立てていた人は、相当な高給取りでもなければ、iDeCoを減額か休止をして、新NISAにまわしたいのが心情だろう。しかしiDeCoはたとえ休止していても、一定の口座管理手数料が発生する。条件にもよるが、会社員の月2.3万円積み立てで手数料比率が0.6%程と、一昔前の投資信託の信託報酬並みの割高感である。
私はこれまで一般NISAの非課税枠を外国株式のインデックスファンドで埋めた後は、NISAではなく特定口座で日本の高配当株を買っていた。日本株のインカムゲインに限れば、確定申告で配当控除を利用することで、個人の所得税率が10%以下の所得レンジであれば、配当に係る税率を7.2%まで圧縮できるからである。
しかも、時には損切りも必要になる個別株運用である。非課税メリットはあるものの損益通算できないNISAと、実質7.2%の税率で損益通算可能な特定口座を天秤に掛けた時に、配当狙いであれば、日本株はあえて課税口座での運用が適していると判断した。
だからiDeCoには手を出さずにこれまで運用してきたし、これからも手を出すつもりはない。拘束力のあるiDeCoにお金を突っ込んでいないから、2024年からの新NISAをロケットスタートで埋めて、生涯投資枠をフル活用する算段である。
年金の繰り下げ受給が老後資金対策に。
それに年金制度の変更で、現行制度の大枠が覆されない限り、iDeCoに頼らなくとも、繰り下げ受給だけで、それなりに対処可能ではないかと考えている。
2023年時点では65歳を基準に、受給の繰り上げが最大5年(60ヶ月)、繰り下げが最大10年(120ヶ月)となっているが、年金機構が給付を反故にしたり、早死にするとの余命宣告でもされない限り、私は繰り上げて受給しようとは思わない。
なぜなら、繰り上げ受給は間接的に、自分が早死にすることを期待していることの裏返しだからで、5年繰り上げで受給した場合と、65歳で受け取った場合の総受給額を積算すると79歳で逆転する。
つまり、79歳以上生きない前提なら、60歳で早々に受け取ってしまった方が、5年間先に受け取っている分だけ得をしているが、79歳以降は65歳受給時と比較して最大で30%減額された老齢給付を、死ぬまで受け取り続けなければならない罰ゲーム状態となる。
反対に75歳まで繰り下げると、65歳受給時と比較して最大で84%増額され、総受給額は91歳で逆転する。現行制度のまま推移するほど楽観していないが、国民年金の年額78万円が84%増額するだけでも143.5万円になる。受給を10年待つだけで、隔月の受給額が10万円、月換算で5万円増やせる。
下記で紹介する本の「年金360万円の法則」で考えるなら、繰り下げ受給で月5万円増やすのは、老後資金で1,800万円用意したことと同義となる。これは会社員がiDeCoの掛け金の上限である月23,000円を積み立て、年率5%で30年間運用した場合の額に匹敵する。
現役時代に毎月23,000円節制するか、年金を75歳から受給するか。こう考えると、現役時代に月23,000円を老後資金として積み立てず、思い出作りなどの経験に充てて、定年してから75歳が到来するまでは慎ましく生活し、満を持して75歳から1.84倍に増額された年金を受給するという選択も、75歳までの資金が確保できる自信がある人には悪くない選択肢に思えるだろう。
当たり前だが、これらはあくまでも現行制度が踏襲された場合の仮の話で、悲観シナリオだと計算の基礎となる年額78万円部分の減額はあるものと思った方が良い。
人は死が目前に迫ると逃れようとする。
私は一昔前まで、織田信長が50歳で生涯を終えているから、自身の人生もそれ位で、特に長生きしたいとも考えていなかったが、信長プランの中腹で大病を患ったことで考えが変わった。
病魔に蝕まれて死を意識した際、日頃からいつ死んでも良いと思いながら生きていた私でも、迫り来る死からは逃れようとするドロドロとした感情が渦巻いていたことや、いざその時が来ると潔くこの世を去れない、見苦しいほどに、しぶとい側面が表出することに気付かされた。
その強烈な死の恐怖体験から、人間というのは、例え最期が近いと分かっていても、観念せずにそれに抗おうとする愚かな生き物であることを学び、意に反して長生きする可能性が高いことを、自身のライフプランに織り込むようになった。
2000年生まれの2人に1人が、100歳まで生きると予想されている人生100年時代である。どうせ長生きせざるを得ないなら、長生きすることへのインセンティブを付けた方が生きがいに繋がる。年金の繰り下げ受給もそのひとつだろう。
と記しつつ、鵜呑みにして繰り下げた人たちが、疫病の変異なんかで思いのほか早死にして、私が受け取るであろう半世紀後まで財源が保つことを期待する今日この頃である。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?