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金融所得課税30%時代に備えた運用方針


新NISAと合わせて3,000万円までは対策の余地あり?

 昨年、いろいろな意味で世間を賑わせた国民民主党だが、現在20.315%の分離課税を採用している金融所得課税を、将来的に30%に引き上げる薮からスティックな意向を示したことが物議を醸している。

 とはいえ、昨年からNISAを拡充したことで、1,800万円の生涯投資枠があり、この範囲で資産運用・形成するであろう大多数のパンピーには影響がない話だ。

 仮に毎月10万円もの余剰資金を、NISAの積み立てに回せるだけの高収入であっても、非課税枠を満額埋め切るのに15年もの期間を要するわけで、少数野党が分離課税の税率を引き上げたい意向に文句を言うよりも前に、やるべきことがあるのではないかと個人的には思う。

 かく言う私は、旧一般NISAの120万円×5年=600万円の非課税枠をフルで使い切っており、特定口座に溢れていた分を24年から新NISAに360万円ずつ利確しては移している格好だ。

 この作業は〇〇ショックで全てのアセットが軒並み半値になる事態が長期に渡って起こらない限り、2028年内に終わる算段だが、仮にこれから数年で金融所得課税が強化されたとしても、アッパーマス層に分類される3,000万円程度までは、対策の余地があると考えている。

新NISA+日本の高配当株

 具体的には、新NISAの生涯投資枠1,800万円は、投資信託やETF、REITなどの日本株以外のリスク資産を収容して、日本株は配当狙いの個別株を、敢えて特定口座で運用して、配当控除を活用する方針がベストだと考える。

 前者は説明するまでもない。後者の狙いは、配当控除の制度趣旨が二重課税の軽減にあることから、金融所得課税が強化されたところで、この構造は変わらないを踏んでいるからだ。

 配当は、企業の「税引後当期純利益」に対する「剰余金の配当」という性質上、企業が然るべき税金を納めた上で残った利益剰余金に対して、個人が受け取る際にも課税するのは二重課税に他ならず、現行制度上は、確定申告で総合課税にすることで、所得税率は10%、住民税率は2.8%の控除が受けられる仕組みとなっている。

 ここで、国民民主党が理想系として掲げている、確定申告で総合課税にすることがミソで、証券口座を「源泉徴収あり」で開設した場合、源泉分離課税で所得税15.315%+住民税5%=20.315%が、自動的に差し引かれて納税が完結している。

 その後、確定申告で配当所得を総合課税にすることで、個人の税率が適用され、そのうえで配当控除が適用される格好となる。

 これが何を意味するか。現行制度で課税所得が330万円(年収換算でおよそ650万円)以下の一般的なサラリーマンであれば、所得税率は5%か10%であり、配当控除で10%マイナスになると、差し引きゼロで所得税が全額還付される。

 因みにこの還付金は雑所得に分類されるため、翌年に申告するのが紳士・淑女の嗜みだ。サラリーマンでこれが年間20万円以下の場合、申告義務がないと言われているが、それは所得税だけの話であり、厳密には住民税の申告義務がある。

 話を戻すと住民税に関しては、源泉分離課税が5%なのに対して、総合課税にすると個人の税率である一律10%に対して、配当控除で2.8%マイナスになるため実効税率7.2%で、逆に2.2%増税となる格好だ。

 そのため、会社に本業以外の所得がバレたくない従順な社畜は、確定申告時に「自分で納付」を選択することをお忘れなく。

 こうして元々受け取り配当金に対して20.315%徴収されていた税金が、一般的な年収のサラリーマンであれば、確定申告により総合課税扱いにすることで、7.2%まで圧縮できる。

 そのため、日本株は特定口座源泉徴収ありで運用し、確定申告を行うことで、NISAの枠を配当控除のない外国株式や投資信託、ETF、REITにフル活用することで、金融所得課税が強化されても、大きな影響を受けずに済む可能性が高い。

 元々株の税率が源泉分離10%だった時代から、旧NISAの導入を期に現在の20%に引き上げられ、その際に二重課税を軽減する配当控除が設定された背景を抑えていれば、仮に分離課税の税率が20%から30%へと引き上げられても、それに応じて配当控除も10%引き上がると考えるのが自然だろう。

インカムに限れば、誰でもほぼ無税で受け取れる

 さて、なぜ私が3,000万円までは対策の余地があると記したのか。新NISAの生涯投資枠は1,800万円のため、差し引き1,200万円は配当控除をアテにした、インカム狙いの日本株なら金融所得課税強化に耐え得るとする根拠がある。基礎控除だ。

 国民民主党が”103万円の壁”の引き上げを公約に掲げ、キャスティングボートを握ったことで2025年に関しては123万円の引き上げで着地しそうな格好だが、まだ確定ではない。

 そのため、ここでは103万円の壁の根拠となる基礎控除48万円を前提として記す。仮に基礎控除が引き上げられた未来にこの記事を発掘した考古学者は、以降の計算過程や3,000万円の総額を、適宜読み替えていただきたい。

 リタイアメントプランではお馴染み、トリニティスタディの4%ルールを参考に、日本株の配当利回りを4%で設定し、1,200万円運用した際に得られる税引前の配当は48万円。

源泉分離課税の手取りは、
$${480,000×(1-\frac{20.315}{100})=382,488}$$円
総合課税時の所得税還付金が、
$${480,000×\frac{15.315}{100}=73,512}$$円
住民税の増税分が、
$${480,000×\frac{(10-2.8)}{100}-480,000×\frac{5}{100}=10,560}$$円
差し引きで手元には
$${73,512-10,560=62,952}$$円増える格好となる。

 結果として、配当所得382,488円+(前年)雑所得73,512円の、計45.6万円が個人の所得として計上されるが、これは基礎控除の48万円で相殺されるため、所得税はゼロ。

控除枠48万円ギリギリまで攻めたい方は、利回り4%で逆算すると、
$${480,000÷\frac{4}{100}÷(1-\frac{5}{100})=12,631,578}$$円
までの年間配当は理論上、基礎控除内に収まる。

 住民税は追加で源泉分離の5%に加えて、差分の2.2%である10,560円を支払う必要があるが、この手法なら金融所得課税30%になろうが、実効税率は住民税の7.2%だけで済む可能性が高い。

 新NISAの生涯投資枠1,800万円をインデックスファンドで運用し、4%ルールで取り崩すと原本ベースでも年間72万円にはなる。そのため、インカムに限れば、先の45.6万円と合算して年間で117.6万円、月換算で9.8万円相当は、誰でもほぼほぼ無税で受け取れる計算となる。

 これは給与所得控除を含めていないため、あくまでも課税所得が330万円を超えない範囲に調整すれば、サラリーマンに限らず適用可能で、アッパーマス層で早期リタイアや、定職に就かず、ゆるく働く方も視野に入る。

一切労働せず、配当所得だけで課税所得330万円を目指すストロングスタイルであれば、
$${3,300,000÷\frac{4}{100}÷(1-\frac{5}{100})=86,842,105}$$円
と、ここに新NISAの生涯投資枠を含めると軽く億を超えるが、それくらいの資産規模になるまで、金融所得課税は多くのパンピーに影響がないと考えれば、大して冷や水でもないのが、私の率直な感想である。

 大事なのは、SNSの炎上祭りに参加することなんかではなく、金融所得課税強化の大局を見極め、将来に起き得る変化を想定したうえで、知恵を絞って今から動き始めることではないだろうか。


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