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経済的に独立(FI)した心境。

税金を考慮した目標資産額を達成。

 世間はお盆休み真っ只中。疫病や戦争の煽りを受けて、日本の実体経済が好景気とは言い難い状況が続いている最中、S&P500指数が半値戻しを達成した。私の保有資産はインフレ耐性のある株式が9割以上を占めているため、水面下で上昇していた。

 実を言うと、6月時点で経済的独立(FIRE)の条件となっている、年間生活費用の25倍の資産規模にはなっていた。しかし、日本の税制は利益に対して20.315%課税されるから、4%の配当や分配金があっても、手元に残るのはおよそ3.2%となる。

 私はこの税引き分を考慮した状態で、年間生活費用の25倍の資産規模とした方が資産の長期的な生存率は高くなると考えているため、25倍の資産を有した後も、それらを鑑みて積立投資を継続していたものの、先日それも達成した具合である。

 スプレッドシートで設定した目標金額と、マネーフォワードMEの資産総額を見比べると、確かにMFの数字の方が大きいが、あまり実感が沸かない。

 経済的独立と言っても、あくまでLeanFIREと定義される、生活に必要な最低限の費用のみを資産所得から賄える水準であるため、国民年金が満額受給できる場合と同程度の資産所得であり、遊興費は別途キャピタル・ゲインや労働によって捻出しなければならない。

 とはいえ、都内の割高な生活費用を基準にしている。今の生活環境で良ければ、最悪働かなくても健康で文化的な最低限度の生活を金融資産所得だけで維持することが出来るし、地理的アービトラージを実行して、更に余裕を持たせることも出来る。

 シミュレーションしたところ、地方都市に移住して、車を所有せず家賃が一定水準まで下げられれば、資産規模は同等でも年間生活費用の33倍相当額となり、取り崩し率を3%まで抑えられる利点がある。

 つまり、余力の1%は将来に備えて再投資するも良し、若くて体力のある20代、30代のうちは、お金はないが時間はある大学生気分で貧乏旅行を楽しむなど、遊興費として活用して経験を積むも良しと、選択肢が生まれるため、空想で色々と考えている今が一番楽しいのかも知れない。

全額運用できる訳ではない。

 目標資産額を達成したものの、これで終わりという訳にはいかない。スプレッドシートで逆算した目標額というのは、その全額を年率4%以上で運用する前提であり、証券や銀行口座に置いてある現金を全て有価証券に変えなければならないからだ。

 基準は人によるが、生活費用の半年分に相当する、数十万円の現金はプールしておかないと、不安定な世界情勢で有価証券が暴落したタイミングで現金が枯渇し、最悪のタイミングで取り崩す事態になりかねない。

 安全性を考慮すると、もう少し資産を増やしてからとか、もっと生活コストを下げようとなりがちだが、これをいつまでも繰り返していると人生が終わってしまう。そのため、どこかのタイミングで吹っ切れる勇気は必要である。

 税率やインフレ率を考慮した上で、綿密にシミュレーションして目標設定を行ったものの、いざ目標額に達すると、銘柄選定を行う時と同様に、リスクを見落としていないか疑心暗鬼になるのが、投資家の性である。

 しかし、自身がそうなることを織り込み、以前から来春に地理的アービトラージを実行すると宣言している。それに加えて、首都圏でしか使えない優待銘柄から、高配当な銘柄に組み換えたり、整理整頓を加速させて、移住の際に処分する予定のもので現金化できるものは現金化し、そうでないものは買い換えずに今年度いっぱいまで使い潰すなど、現状維持と言う名の退路を絶っている状況である。

早期リタイアは、ひとつの手段。

 さて、◯uck You Moneyもとい、生活するために働く必要性がなくなったことにより、自由な生き方を選べる切符を手に入れたことになり、あとは全国の地方都市で良さげな賃貸物件を見つけて、念願の地方移住を実行するのみであるが、20代半ばでこのカードを手にするとは、高卒で薄給ブラック企業に入社した当時は想像もしていなかった。

 同世代の大卒が人生の春休みを謳歌する傍ら、私は月80時間の残業をこなし、手取りは僅か20万円で働いた。何かがおかしいと思いながら10代の最後を過ごしたが、20代で投資に目覚めた。

 それにより、周囲が大卒で入社し数年、労働環境が落ち着いて来たことで、将来や資産形成についてあれこれ考え始める頃に、同い年で既に経済的にアガっている奴が居るのだから、資本主義とは不思議なものだ。

 私が保有若しくは候補にしている、50超の銘柄全ての有価証券報告書や四半期毎の決算短信、会社四季報に目を通していることを知っている友人からは努力家と評されるが、当の本人はこれを苦に感じていない。

 つまり、努力してこの領域に達したつもりはなく、ゲーム感覚で、収入より遥かに低い支出で生活し、種銭を運用して数字を増やす傍らで、金融、経済、会計、心理学を学び、レベル上げを楽しんでいるうちに、気付いたら経済的にアガっていた程度の感覚である。

 昨今のFIREムーブメントから、とにかく会社を辞めたいの一心で必死になって蓄財に励んだり、個人のリスク許容度に見合わないリスクを取って運用している方をネット界隈でよく見かけるが(ネタだと信じたい…)、明石家さんまさんの言葉を借りれば、「必死という字は必ず死ぬと書く」。

 必死になって追い求めた先に待っているのは死そのものである。

 四半世紀の人生経験ではあるが、鉄道業界に入ったからには、花形の運転士にならず業界を去ったら悔いが残ると考え必死になり、周囲が大学生活を終える頃に高卒で運転士となった。

 しかし、想像の数倍見劣りする景色を目の前に愕然とし、アイデンティティ・クライシスに直面して完全に燃え尽きた。必死に追い求めた結果としてぽっぽや魂は死んだ。

 経済的独立と早期リタイア(FIRE)は必死になって努力して達成する類のものではないのかも知れない。かつての私のように、期待値が高くなりすぎて、見劣りする現実世界とのギャップに耐えられなくなる危険性があるからだ。

 社会的信用が低下した退職後に、虚無感に襲われてそこから逃れようとしても、一度社会の枠組みから外れたら、社会は戻ることを許容しない。FIREは何かを実現させるひとつの手段でしかない。

 もし、今すぐ会社を辞めたいだけであれば、◯uck You Moneyがあれば十分な筈である。今一度、どんな人生が歩みたくて、それを実現するために必要な要素がなにかを再考してみると、FIRE以外の選択肢が浮上するかも知れない。


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