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水没には役立たずだった、携行品損害保険


こんなとき安心?そうは問屋が卸さなかった

 過日、旅行中に線状降水帯に直撃したことで、傘をさしていたのも虚しく、所持している電子機器が水没した。

 人間はミスをする生き物であることは、ヒューマンエラーとは切っても切れない鉄道業界に、かつて身を置いていた者として心得ているため、自分だけは絶対にミスしないとは考えずに、一定の確率でミスをする前提で、それが起きても致命傷とならないよう、対策してリスクヘッジを行うのが常である。

 旅行先で電子機器が水没したのはショックだったが、そう言った時のために、携行品損害保険に加入している。保険がおりる筈だから、帰宅して修理が完了するまでの辛抱だと、自身に言い聞かせながら不便な状況に耐えて帰宅した。

 具体的な保険商品名は明記しないが、商品ページの「こんなとき安心」の一例に、「外出中にスマートフォンを水没させて壊してしまった。」と記載されているため、このパターンに当てはまると思って、デスクに事故報告と確認をした。

 すると無慈悲にも、大雨は状況が予期できる(=偶発的な事故ではない)ため、保険金がおりないと案内された。重要事項説明書を確認すると、「水災による損害」は「保険金をお支払いできない主な場合」の欄に記載されていた。

 一介の消費者として騙された気分である。商品ページの「外出中にスマートフォンを水没させて壊してしまった。」を読んで、「水災による損害」は保険金がおりないことが理解できる消費者が、過半数を超えているようには思えない。

 重要事項説明書に同意しなければ、契約できないことから、法的には何ら問題なく、争ったところで私に勝ち目はないとはいえ、誤認を誘うような謳い文句で、保険商品を売っている姿勢に不信感ばかりが募る。

 水災を除いた水没の方がどう考えてもレアケースだろう。用水路や排水溝で救出するのに手間取ったとかでもない限り、うっかりコーヒーをこぼしたとか、落とした先が水溜りだった程度なもので、これでは保険がおりるレベルの水没事故はまず起きないだろう。

 そう考えると、端から水没では支払うつもりがないと捉えられても、致し方ないと思うのは私だけだろうか。

安心ではなく、慢心を買っただけ

 年額にして数千円と少額とはいえ、わざわざお金を払って買っていたのは安心ではなく、慢心だったと思うと、愚の骨頂に他ならない。

 仮に全損だとしても10万円程度の損害で、保険がおりようが、おりまいが自身の財力で補填可能な損害ではあることから、そもそも契約する必要があるかないかで問われれば無い。

 月額と補償のバランスで、お得感があったから契約したまでだが、肝心の補償が受けられないのであれば、1円たりとも支払う価値はない。

 これくらいであれば、私のしみったれ具合を晒しただけの、笑い話に思えるかも知れないが、もしこれが生命保険だったらどう思うだろうか?

 癌家系だからと、お高いが補償が手厚いがん保険に加入したものの、いざ悪性の腫瘍が見つかったタイミングで、保険金を請求しようとしたら、冒頭の水没の屁理屈みたいに、悪性新腫瘍は、重要事項説明で定義されている癌とは異なるため、保険金はおりません。と案内されたら、たまったものではない。

 つまり、これは私の失敗談であり、注意喚起でもある。自身が想定している事故に対して保険金がおりるのか、営業マンの言質を取ったり、契約前に書面をよくよく確認した方が良い。

 保険会社が莫大な利益をあげていて、ターミナル駅の近くにご立派なオフィスビルを建てられるのは、契約者が支払った保険料よりも、遥かに払い出しが少ないからに他ならず、相互扶助とは何なのか考えさせられる。

他力本願な保険よりも、まずは自助努力

 私は日頃から、日本は国民皆保険制度があるため、この制度を熟知していれば、民間の生命保険は基本的に不要である持論を展開している。

 逆説的に、必要な保険は対人、対物にまつわるものとなり、具体例として、火災保険、自動車保険、遺された者のための生命保険が挙げられる。

 車を持たない単身者であれば、必然的に後者の2つは必要ないため、基本的には火災保険だけ契約していれば事足りる。日本では貰い火をしても、出火元は重過失でもない限りは賠償責任を負わないため、自分自身がリアル炎上せずとも、隣人ガチャを外して、貰い事故となった時まで備えなければならないため、これだけはマストだ。

 最近であれば自転車保険も義務化されているが、この商品の中身は、自身が怪我をした時の傷害保険と、相手に怪我をさせた場合の個人賠償責任保険がセットになっているだけで、前者は健康保険、後者は火災保険でカバーできる場合が多いため、車なし単身者は、火災保険だけで十分に事足りるわけだ。

 健康保険と火災保険でカバーできない心配事に関しては、安易に保険商品を契約するのではなく、自助努力でリスクに備えるのが、今回の私の失敗談を踏まえても、経済的には合理的だと考えられる。

 老後資金が不安だから個人年金。ではなくNISAやiDeCoを駆使する。壊れたら困るものがあるなら、同じものがもう一つ買える、2倍のお金を貯めてから買えば、わざわざ保険で備えなくても、壊れた時にどうするか、その時に考えれば良い。

 保険会社が儲かっている限り、自分で備えられるリスクは、自分で備えた方が、謎のブラックボックスで中抜きされない分、お金の使い方としては有効だと痛感する今日この頃である。


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