フリーライダー。
タダより□いものはない。
鉄道でフリーライダー、いわゆるタダ乗りを行うのは立派な不正乗車である。係員にバレた時は、通常の3倍の増運賃を徴収できると言う規則があり、鉄道会社によっては取り立てたうちの何割かが手当として支給される、唯一と言って良い成果報酬システムのため、稀に不正乗車探しに熱心な係員がいる。
因みに定期券で不正を発見した場合、起算日まで遡って通常の3倍の増運賃を請求できることになっているので、請求額が10万円を超えることも珍しくない。特に、民鉄の学生定期券は破格の設定なので、良い子は変なことを考えないで真っ当に乗車していただきたいのが鉄道員としての本音である。
私もちょっとしたことで他人名義利用の定期券を見つけ、現行犯で捕まえた時は電卓を叩きながら、極悪人として十数万円をきっちり取り立てて、会社から何割かの成果報酬を万単位で貰うか、善人を装って見逃すかの葛藤があったが、残念ながら相手が未成年だったこともあり、エンジェルが勝り、厳重注意で見逃している。恐らく成人だったらデビルが勝って容赦しなかっただろう。まさにタダより四角いものはないのである。
鉄道におけるタダ乗りはさておき、公共財においても、コストを支払わず、使えるだけ使って利益だけを享受するタダ乗り。いわゆるフリーライダーに関して思うところを記していく。
恩を仇で返す畜生。
青山にある岡本太郎記念館まで自転車で立ち寄った際、港区某所の自転車駐輪場を利用したが、2時間まで無料とのことだったので、2時間以内に精算機を操作して、タダで利用させていただいた。
場所にもよるが、お隣渋谷区の駐輪場では1時間まで無料の場所が圧倒的に多く、目的地まで10分程度歩けば済む距離であれば、港区内の駐輪場の方が2時間無料で都合が良かったりして、港区内の駐輪場やJRの駅施設にあるアトレ駐輪場には度々お世話になっているが、これまでの人生で1円たりとも支払いを生じさせたことはない。
商業施設の場合、損して得取れ的な発想で、無料で車両を停められても、気軽に立ち寄ってもらい、施設内でお金を使って貰えれば、トータルで儲かるというスタンスで2時間までは無償提供されている場合が多いが、私の場合、施設内で利用するのが株主優待券で、ほとんど身銭を切らないのだからタチが悪い。
楽天モバイルに関しても、データ通信は別回線を契約することで、0円の音声通話部分のみを使い、楽天リンクをかますことでかけ放題が実現している。
こちらも、楽天サービスで囲い込ませるためにバラ撒いている看板的な要素ではあるだろうが、最近はもっぱら年間数万円のふるさと納税と、楽天証券の投資信託をクレジットカード決済による積み立てを限度額いっぱいの月5万円以外にお金を使っていない。
投信積み立ても、どうせ買うなら楽天ポイントが1%付くから買い付けているだけで、これも楽天側に旨みはない。実際、私が買い付けているのは証券会社側で手数料がほとんど取れない優良ファンドのため、2022年の9月買付分から還元率が0.2%に改悪される。そのため、SBI証券かauカブコム証券に変えるか悩みどころではある。
規制される前に儲けるまで。
利益にならない目玉商品を広告代わりに利用することで、新規顧客を獲得して合わせ買いで利益を得る手法はマーケティングの常套手段で、スーパーの特売などでもよく目にする。このような場合、店舗側が最もやって欲しくないのは、ほぼ原価の目玉商品だけを買われる行為である。
利益の出ない商品だけを買われると言うことは、顧客は店舗運営費や、設備投資費、人件費、在庫管理費などのコストを支払わずに商品だけを購入したに等しく、運営側が投じたコストを回収できないことを意味するから、いつまでもタダ乗り出来る訳ではない。大抵は一番最初が緩くて、話題になった頃には渋くなっている。QR決済のポイント還元合戦が記憶に新しい。
常にアンテナを張り巡らせて、誰よりも先に手をつけて、条件が改悪するその時まで旨味だけを吸い尽くして、富を得るのは、第35代米国大統領の父、ジョセフ・P・ケネディさんが得意としていた業である。
彼は、銀行検査官で得た財務諸表を読む知識と、証券会社で得た内部情報をもとに、当時は違法ではなかったインサイダー取引や相場操縦による空売りで富を築き、ウォール街の相場師と呼ばれていた。
禁酒法時代となると、酒の密売で大儲けするなど、悪党中の悪党感が強いが、ルーズベルトの「泥棒を捕まえるのに泥棒が必要だ」の名言から、証券取引委員会の初代委員長に任命され、現代の投資家保護の枠組みを創り評価されている。
多くの人は見栄とか世間体を気にしてか、工夫すればタダで使えるサービスや手に入るモノ、情報にお金を支払ったり、スーパーの目玉商品の合わせ買いやクーポン使用時のついで買いに留まらず、コンビニでお手洗いを借りたら何か商品を買うなどの散財を繰り返しては、お金がないと嘆いている。
しかし、ジョセフ・P・ケネディさんのように、悪党中の悪党で自分はたんまり儲けても、一周まわって規制する側となって評価されることもあるのだから、法に反しない範囲であれば、堂々とタダ乗りして良いのではないかと言うのが個人的見解である。みんなで悪党になろう。