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初めて保険金を受け取ったの巻。

保険不要論者が強制加入の保険金を受け取る皮肉。

 日本は公的保証が整っている国なので、保険は火災保険と自動車保険を除いて不要論者である私である。

 しかし、鉄道員という職業柄、組合のしがらみで半ば強制加入となっている全労済(現こくみん共済 coop)のセット共済を申請、受給する運びとなったので、これについて思うところを記す。

 全労済の入院費用特約を利用して共済金を申請することになった要因は下記を参照されたい。

 鉄道員にはお馴染み全労済の50口月額2,550円(最近値上げした気もするが)の団体生命保険だが、団体で加入していて保険金を請求する場合、職場(というより組合)経由で申請しなければならず、書類を記入する時間がたっぷりある入院中に、個人で請求できなかったのは何かと面倒であった。

 さて、入院に要した費用は10万円ちょっとで、受け取った共済金が10.5万円だったので、入院費用は全額保険で賄えたことになる。

入院の金銭負担が実質ゼロ。それでも捻くれる。

 一般的な考えであれば、入院費用が実質タダになって良かったと、振り込まれたお金で良いものを食べたり、何かを買ったりしたくなるのが人間というものだろう。

 しかし、私は、全労済に支払っていた保険金の一部が、偶然戻ってきた結果に過ぎないと思った。そして、やはり保険には加入せず、現金で備えるだけで十分だと思ってしまった。

 高卒で鉄道会社に就職したため、セット共済とは、全く不本意ではあるが、50口2,550円がソラで思い出せる程度に長い付き合いになる。

 受給した金額(10.5万円)を月額保険料で割ると、およそ41ヶ月分の保険料に相当することがわかる。つまり、3年5ヶ月の間で保険金が降りたのであれば、トータルで得をしたことになるが、私の場合は3年半以上加入しているため、保険が降りて入院費用を賄うよりも、保険など契約せず、毎月の支払う保険料分を貯蓄して、突然の怪我や病気に備えた方が割が良かった訳だ。

 厳密には私の場合、生命保険料控除や介護医療保険料控除により、掛金の全額が所得控除の対象となっていて節税に寄与していたり、割り戻し金が実質的な負担額は月2,550円に満たないなどの要素があるが、控除や節税のために無駄金を使うのは本末転倒であるため、ここでは考慮しない。

 預金であれば、預けているだけなので、無条件で全額が引き出せるし、その間も運用することで配当や利子を得ることができる。しかし、保険の場合は、個々人から徴収した保険料を元に運用はしているが、その利益は加入者に還元されないか、されたとしても中抜きされているし、そのお金も条件に合致しなければ給付されない。

保険会社の利益と相互扶助。

 保険会社が利益を得るには、個々人から徴収する保険料収入よりも、支払う保険金が少なくなければならない。

 ひとりひとりが少額を出し合って、不幸に見舞われた少数の人を手厚く補償する相互扶助の理念は素晴らしい。しかし、相互扶助の理念を徹底するのであれば、収支トントンか赤字になって然るべきだが、保険会社は民間企業である以上、利益を出さなければならない。

 つまり、民間の保険では構造上、期待値が100%を超えることはないから、長期で見たら確実に損をする。そんな保険があったら会社が倒産してしまう。

 そうは言っても、事業を運営するのに、資金は必要だ。それでも、保険会社のビルは大抵駅前の一等地に立派に建っているし、莫大な広告料金であるテレビCMもガンガン流れている。営業マンの待遇も人並み以上だ。これら全てが必要経費と言えるだろうか?

 しかし、利益を出さなくても潰れない保険がひとつだけある。

国が運営する公的保険。

 詳細は上記の記事に譲るとして、端的には、公的保証をフル活用して、実質的に負担する金額分を預金していれば、保険に加入する必要はない。

 私が今回手術を受けた際の、医療費総額はおよそ100万円、保険適用の3割負担額でも25〜30万円が相場らしいが、限度額適用認定証を健康保険組合に申請し、窓口に提示したことで、実際の負担額は高額療養費相当額の10万円ちょっとで済んでいる。

10万円で手術に備えられるが、20代はその10万円が重い。

 公的保証の存在を知っておき、必要な情報を都度インターネットで検索する能力さえあれば、10万円の貯蓄でも入院と手術に対応出来ることが、今回の経験で分かった。10万円もあれば、保険なんて契約する必要はなく(火災、自動車除く)、十分備えられる金額というわけだ。

 とは言え、金融広報中央委員会の統計によると、年代別の金融資産保有額で20代単身者の中央値は8万円であった。中央値で8万円と言うことは、20代の半数が貯蓄8万円以下なのが実態だ。別の統計では半数が貯蓄ゼロなんてデータもある。

 年功序列制や終身雇用の崩壊で不安定な雇用と、社会に出てから重くのしかかる貸与型奨学金の存在が如実に表れているように感じる。

 今は貯蓄が難しくても、民間保険に対して、貯蓄ができない人が、高いコストを支払って高額な出費に備えるもので、そのコストを支払っていると自覚するだけでいい。無駄に契約しようとは思わないだろうし、内容もわからずに契約している保険を見直すきっかけになれば、この記事を書いた意味があると思う。

 知識がないと、お金に対する不安がなくなることはない。だから、今お金がないのであれば、少しでもお金について知ることが大切だ。それにより、徐々にではあるが、貯蓄できるようになってくるだろう。

収入を上げようとせず、支出を下げて貯蓄する。

 スマホ代、電気、ガスは契約を見直すだけで月5,000円以上削減できることも珍しくないし、水道料金が高ければ節水駒を利用することで、使用量を抑えられる。

 スーパーで安売りの品を買い込み、管理しきれず冷蔵庫で期限切れを迎えて処分していないだろうか。

 まとめ買いして、結局使わずに捨てる羽目になったり、在庫を管理する無駄なコストを払う位なら、必要な時に必要な分だけ買うのは、一見すると割高で損した気分になるが、結果として安上がりとなることは思いの外多い。

 動画や音楽、スポーツジムなどのサブスクは使いこなせているだろうか。毎月だとたったの数百円かもしれないが、年間で見ると結構な金額だったりする。

 整理整頓を心がければ、今よりも家賃が安い小さい住居で住むようになるかもしれない。

 多くの人が、生活レベルを落とすのに耐えられず、余計なお金を払っている。確かに今までの生活レベルを落としたら不便になるかも知れない。でも、不便を苦痛だと思うか、楽しむかは自分の価値観次第だ。不便を楽しめると生きるのが少し楽になる。


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