IT重説は遠方の転居に最適だが...
初期費用の交渉がリトマス試験紙。
最近、不動産ジャパンで移住先の物件の目星を付けている。なぜ不動産ジャパンかと言えば、情報が古くなければ、事実上レインズに掲載されている物件が閲覧できる、唯一のサイトだからである。
レインズに掲載されている物件であれば、基本的にはその地域の不動産屋であればどこでも媒介することができるため、初期費用などで交渉決裂しそうになった際に、「他を当たります」という強力なカードが使えるから、保険の意味合いが大きい。
私は家賃交渉までたどり着いた試しがないが、初期費用に関しては必ず内容を精査して、突っ込みどころがあれば忖度なしに突っ込みを入れて交渉するようにしている。
それでも、決してクレーマーレベルの要求はなく、仲介手数料は宅建業法の原則に則り0.5ヶ月以上は承諾しない。どうしても1ヶ月取りたいなら、礼金やオプションを取り払うなどの、仲介手数料以上の仕事をしていただく。
火災保険は特約で指定されていなければ自前で契約する。半ば強制的に契約してもクーリングオフの対象になり、手間が増えるだけだと思うが、それでも契約を盛りたいのならご自由にどうぞ。とあくまでも宅建業法や民法で認められている権利を主張しているに過ぎず、家賃が高い物件であればあるほど、初期費用が万単位で減額されるため、闘い甲斐はある。
しかし、私の場合は大抵の場合、その地域の中でも最安値を争うような物件で闘うため、労力の割に合っているかと問われれば微妙な攻防ではあるものの、その時に不動産会社の対応で、悪徳か否なのかを見極めるリトマス試験紙としては十分機能している。
不動産屋に限らず、仕事でも、宗教でもNHKの集金でも、相手がまともでなければ、まともに相手にする必要がないと言う、伊達政宗の名言を胸に刻んで生きている。
残念ながら、仲介には困らないであろう都内で契約した不動産屋は、悪徳業者にしか当たらなかったため、退去するその時まで気が抜けないが、転出する一方の過疎化に苦しんでいる地方なら、多少はマシな業者に当たるのではなかろうかと思う反面、ローカルルールを押し付けられる可能性もあるため、期待半分、不安半分と言ったところである。
IT重説対応物件に偏りのある現状。
とはいえ、一昔前であれば現地まで足を運ぶのが一般的だったものの、疫病禍となったことで、IT重説(オンライン契約)に対応する物件が少数ながら出始めて来ている。
それを期待して検索している最中ではあるが、地方都市でも場所によっては、オンライン相談のみで、恐らくは従来ながらの対面での重説しか対応していなかったり、IT重説対応物件は家賃が割高な傾向にある。
そのため、結局、2年契約のトータルコストを考えると、下見を兼ねて現地に出向いて契約した方が安上がりになりそうな状況で、どうにかならないものかと頭を捻っている。
希望する条件でIT重説対応物件はゼロではないものの、取扱業者の口コミ的に悪徳業者の可能性が高く、そこ以外はそのエリアのIT重説に対応していない体たらくで、物件は良くても取扱業者で悩まされる呪縛から逃れられずにいる。
これだけ法に則って賃貸契約したいだけの人が困っているのに、現状はオンライン専用のECサイト感覚で合理的に賃貸契約できる全国区のプラットフォームがひとつもないため、自前で創ってローンチすれば覇権を握れそうだとも考えた。
だがしかし、そもそも人口減少で斜陽産業な不動産業界に携わったところで、徐々にシュリンクしていく構造は避けられないことや、ライブドア事件のように、既存の価値観に対抗しようとする者が、既得権益を持つ者に潰されて、イノベーションが起きない風潮は健在である以上、生業としている鉄道業界と構図は変わらず、時間経過と共にジリ貧となる未来しか想像できないため、プレーヤーとして参加することはなく、あくまで「あったらいいな」レベルで傍観に徹してボヤくだけで、やっていることは飲み屋のおっさんと何ら変わらない。
不動産情報サイトに載らない情報。
都市部での生活に慣れていると、どこに住もうが個人の勝手だと思いがちだが、村社会の典型のような地方部の場合はそうもいかず、その地域に縁もゆかりもない余所者だと、審査が通らなかったり、申し込み時点で契約そのものを断られる場合があるのだから興味深い。
仮に契約を押し通しても、町内会への参加や、会費を支払わないなどで不干渉を貫くと、ゴミの集積所が使えないなどの報復的デメリットが生じる可能性がある。これらは決して不動産情報サイトには載らないが、地方暮らしをしたい者からすれば知っておきたい情報である。
行政機関が地方創生を謳い、いくら支援金などを積んだところで、生活実態が身内贔屓で同調圧力が強ければ人口流出は避けられず、それでいて若年層が不足していると嘆いている状態はナンセンスだと感じてしまう。
本気で若年層が来てくれるような地方を目指すのであれば、来る者拒まず、去る者追わず位の、適度に無関心な風土は行政、住人、不動産屋に求められる条件かもしれないと思いながら、地域や物件を吟味している今日のこの頃である。