税金を納めても報われない。
ノブレス・オブリージュを忘れた国家。
先日、自賠責保険が値上げとなったが、それが財務省が積み立て金7,500億円のうちの6,000億円を借りているにも関わらず、事実上の踏み倒し状態となったことにより、残りの1,500億円では運用が立ち行かなくなり、値上げを決めたことから、リテラシーの高い一部の人達から、国家の腐敗だと批難の声が相次ぎ、ネットニュースで話題となるに至った。
これに腹立てて、個人が税金を踏み倒そうとすると、重いペナルティが科されるクソ仕様となっている。そのため、個人で行うべき対策は脱税ではなく、いかに国や行政機関から無駄金を取られないように防衛するかを考えることではないだろうか。
実際、「税金を払わずに生きていく逃税術」の中に、税金を納めると日本のためになるどころか、私利私欲に溺れた役人の私服を肥やす財源を与えるだけで逆効果。まさにドブに捨てるようなもので、返って税金を納めない方が日本のためになる。というニュアンスが記されていたのが記憶に残っている。
私も同意見だったが、周囲でこれに共感する人が居るわけもなく、本書を通じて初めて同じ思想を持ち合わせている人を知ることが出来た感動と、これを記した著者が元国税調査官と言うギャップから、海馬が小さい私の短期記憶から、無事に長期記憶に移行されたのだと思う。
社会システムの歪みを利用する。
ここからは思考実験ではあるものの、私なりの具体的手法を記していく。結論をざっくりまとめると、弱者を切り捨てない民主主義と、お金持ち優遇の資本主義という、ふたつの主義がせめぎ合っているのが日本社会である。
だから、表向きは低所得者を装い、行政機関から社会的支援を受ける立場にありながら、実態は金融資産所得で働かなくても生活には困らない小金持ちとして、合法的に税金を納めず、悠々自適にリタイア生活をするというのが、腐敗した国家からお金を吸い取られずに、個人がダラダラと幸せに生きるひとつの手段だと考えている。
このプランは、比較的少額な資産でリタイア可能ではあるものの、可処分所得は国民年金一本(月6.5万円)で暮らしているのと大差なく、自由を代償にして構わないのであれば、生活保護の方が経済的には豊かと言えるような暮らしぶりとなる点である。
それに共感できない方の場合は、橘玲さんが推奨している、個人事業主とマイクロ法人の二枚舌を利用するのが最適解となるが、これには個人と法人2つの事業を軌道に乗せて、一定程度の収入を得ることが大前提となっている。
そのため、会社員を量産する日本の学校教育を受け、起業家精神が育まれることなく社会に出た我々にとっては敷居が高いのが実情であるが、本記事の思考実験では、比較的少額な金融資産で実現可能なため、蓄財するまでに時間は要するものの再現性は高いと思われる。
年収400万円会社員の負担額をおさらい。
年収400万円の会社員の場合、国家や行政機関からおよそ2割の80万円が徴収されていて、この金額は年々上昇傾向にある。失われた30年とも言われるように、賃金上昇率はゼロどころかマイナスにも関わらず、税負担が増えているのだから、生活が苦しくなって当然である。
しかし具体的に、何でいくらのお金が徴収されていて、それが何に使われているのかまで理解している人は少ない。
2022年時点の税制等で年収400万円の場合、所得税が86,000円、住民税が173,500円。年金は333,060円。社会保険料は211,848円。合計804,408円と以前に試算した。
所得税は国の財源、住民税は地方自治体の財源、年金は年金機構の財源、社会保険料は医療保険の財源となっている。その殆どに利権が絡んでおり、お金をドブに捨てるに等しいものの、最低限の金額を納めて、加入しておくべきものが年金と健康保険料である。
年金は加入していなければ、何らかの不幸で障害認定された際に障害年金が受け取れないし、健康保険も、加入していなければ医療機関での窓口負担額が10割となる他、入院・手術が必要となった際に高額療養費の利用も出来ない。
つまり、年金と健康保険料が最低水準になる所得レンジから逆算して、金融資産の利子・配当所得を積み上げてリタイアすることが、最もコスパの良い税金との付き合い方となる。
具体的手法。
年金の場合、役所で低所得者と判断されると、手続きを行うことで25%刻みで減額され、単身者の場合、総所得が67万円以下であれば全額免除となる。この際、将来受け取れる国民年金は全額免除にはならず、国庫負担分の半額である、月当たり3.25万円(2022年時点)は受け取れるから、障害年金の観点からも、滞納せずに免除申請をした方が得である。
難しいのが健康保険料で、どんな低所得者であっても全額免除にはならず、7割軽減の総所得も43万円以下と厳しい。養老孟司さんのように、事務手続きを放棄したが故に保険証が交付されず、退職するまで病院に通わないワイルドな生き方も乙ではあるが、リスキーで現実的ではない。
そのため、総所得43万円以下の範囲に収まる範囲内で日本株の配当金を受け取り、配当控除を利用することで20.315%の所得・住民税を、7.2%の住民税まで圧縮。
当然、それだけでは生活できないため、不足分を外貨資産などの配当・利子所得をおとなしく20.315%の源泉徴収をされた手取りで補填する形となる。
ここで想定しているのが金融資産1,707万円を年率4%で運用して、年間60万円、月5万円の生活を営み、税金を最小化する手法である。
日本株の配当金が43万円と仮定、所得レンジの範囲内で配当控除をフル活用し、実質税率7.2%の税引き後に得られるキャッシュは399,040円。必要な元本は43*25=1,075万円。
差分の200,960円を外貨資産で補うには税引前に252,193円必要。 トリニティスタディの4%ルールで補う場合に必要な元本は、株式316万円+債券316万円の合計632万円。日本株の1,075万円と合わせて1,707万円となる。
上記の場合、健康保険料は居住する自治体や介護保険の有無で異なるものの、7割軽減の措置が取られ、保険料は年間2万円前後となる。国民年金は全額免除で国庫負担分の半額が、身銭を切らずに積み立てられ、もしもの時には障害年金も受け取れる。
上記の場合、源泉徴収の所得税が37,829円、住民税が44,364円(30,960+13,404)。年金は0円。国民健康保険料がおよそ2万円。合計82,195円となった。
ただし、投資信託を取り崩す場合は利益に対して税金が課せられるのに対して、思考実験では取り崩した全額が課税対象と想定している。元本を含む取り崩しや非課税枠を利用する場合、実質的な税率は低下するため、82,195円はあくまで想定できる税額の上限であり、実際はこれより少額となる点に留意されたい。
また注意点として、外貨建て資産の為替変動リスクが内包しているものの、日本企業の国際競争力低下から、長期目線では昨今の円安傾向が続くものと個人的には考えているため、ポートフォリオの半分程度は外貨建て資産であったほうが、リスクよりもリターンが大きく得策だと判断している。
加えて、トリニティスタディの4%ルールは米国株式と米国債券を半々で保有した場合の研究で、上記の様な変則ポートフォリオで、25年後に資産が枯渇しない保証はどこにもない。
そのため、リスクを抑える工夫として、税率が軽減されない外貨建て資産をNISA口座を活用して資産の一部を非課税枠で運用したり、日本株特有の株主優待制度をフル活用して生活コストを抑えたり、配当利回りや取り崩しの率を3%に下げるなどは有効である。
税金を納めたくないがために、毎月5万円の質素な生活を行う意義が見出せるかは価値観次第ではあるが、毎年100万円を年率4%で運用しながら蓄財すれば、14年後に年60万円の不労所得で、人によっては経済的独立(LeanFIRE)が選択肢に入ると考えれば、早期リタイアは決して夢物語ではない。
仮にリタイアしなくとも、資産があることで給料で仕事を選ぶ必要がなくなる。リタイア後に資産の枯渇が目に見えても、使い果たして生活保護を受けてしまえば良いし、その頃は、なし崩し的にベーシックインカムとなっている可能性もあるから、老後を過度に心配する必要性を感じていない。
とはいえ、いくら理論上アガリの状態でも、いざ2,000万円を握りしめてリタイアとなると、本当に理論通り行く保証などなく、踏み出せない人も多いだろう。だからこそ、私は来春に地方移住して実証実験を行うべく、現在ポートフォリオを調整している。
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