サブスクとは?メリットデメリットや利用拡大の背景、今後の市場を解説
「今更だけど、サブスクって何?」
「サブスクのメリット・デメリットは?」
「どうしてサブスクが広がっているの?」
サブスクサービスは生活に浸透しているものの、実態を詳しく理解できていないケースも少なくありません。
結論から言うと、サブスクサービスは、経済的負担を抑えながら、コスパ・タイパ良く、コト・モノを利用できるサービスです。
事業者においても、従来の売り切りビジネスモデルよりも経営を安定化したり、サービス提供に集中しやすくなるなどメリットが豊富です。
この記事では、サブスクサービスの概要やメリット・デメリットとともに、注目される背景や今後の動向について順を追ってお伝えします。
この記事を読むと、サブスクリプションビジネスの特徴やビジネストレンドとして注目される要因が把握できます。
1.サブスクの概要
サブスクリプションサービスはここ数年間で急激に認知度を高め、生活の一部として利用されるようになっているビジネスモデルです。
サブスクビジネスは、スマホ1つで開始できる点や、一度に大きな費用負担が発生しない点が人気の支えとなっています。
ここでは、サブスクの概要や仕組み、類似サービスとの違いなど、サブスクに関する基礎情報を整理します。
サブスクリプションの定義
サブスクリプションの仕組み
類似の仕組みとの違い
サブスクリプションビジネスの種類
1.1 サブスクリプションの定義
サブスクリプションに関しては複数の解釈がありますが、共有している定義は以下のとおりです。
現在、サブスクリプションとして提供されているサービスは、2種類に分類されます。
1つは従来の「定額で定量」のサービスで、もう1つが「定額で使い放題」「定額で選び放題」の新しいサービスです。
新しいサービスは従来のサービスよりもユーザーに対するメリットが大きく、サービス拡大の原動力となっています。
なお、本記事では、後者のサービスをサブスクリプションサービスとして取り扱います。
1.2 サブスクリプションの仕組み
サブスクリプションは継続的に定額の費用を支払うことで、契約期間中に自由にサービスを利用できる仕組みです。
利用者から見たサブスクリプションの主な特徴は以下の3つに整理されます。
原則として、費用は定額で継続的に支払うのみ
契約期間中は、設定の上限まで何度でも利用可能
いつでも利用開始・終了を選択可能
1日単位などの短い契約期間でも利用可能なサービスが多く、購入時の費用負担の軽さや始めやすさが、利用者拡大の原動力となっています。
1.3 類似の仕組みとの違い
サブスクリプションサービスを類似したサービスと比較すると、サブスクリプションサービスは利用者にとって優れた利便性があります。
類似のサービスでは、利用期間や支払い方法が画一化されていたり、サービス内容が契約時点から変わらないケースが多いです。
一方、サブスクリプションサービスは従来のサービスにおける課題を考慮した設計になっているため、使い勝手が優れています。
サブスクリプションサービスはスマホを契約の入口としている場合が多く、利用開始の容易さも特徴と言えます。
1.4 サブスクリプションビジネスの種類
サブスクリプションサービスは、体験などのコトを提供するサービスから始まり、現在はモノを提供するサービスの展開も進んでいます。
そもそも、サブスクリプションサービスは音楽や動画の配信サービスなど、体験等のコトを提供するサービスが中心でした。
徐々にサブスクビジネスの認知度が高まると、従来の売買ビジネスでの顧客獲得手段の有力な方法として捉えられるようになりました。
その結果、製品メーカーがアプローチできていない顧客とのビジネス接点を持つ方法としてサブスクビジネスを始める企業が増えています。
2.利用者におけるサブスクのメリットとデメリット
サブスクリプションサービスのメリットが知られるようになり、個人・法人を問わずその利用者は年々増加しています。
一方で、サブスクリプションサービスのメリットばかりに目が行きがちですが、予期せぬトラブルに巻き込まれるケースも見受けられます。
つまり、利用者の立場からサブスクリプションサービスを見ると、メリットだけでなくデメリットにも注意する必要があります。
サブスクリプションサービスをすでに利用している方はもちろん、利用開始を検討している方もメリットだけでなく、デメリットも正しく把握しておきましょう。
2.1 利用者メリットその1:簡単に利用開始・終了できる
利用者視点でのサブスクリプションのメリットの1つは、サービスの利用開始や終了が手軽に実施できる点です。
必要な契約手続きが、スマホで完結し、かつ必要な作業ステップも少ないケースが多いためです。
また、解約手続きもスマホから専用のアプリやウェブページを通じて数クリックで完了できるサービスもあります。
そのため、利用者にとって、契約手続きの心理的ハードルは低くなっており、この特徴が利用者増加に寄与しています。
2.2 利用者メリットその2:利用量が多いとお得度も高まる
サブスクリプションサービスは、利用すればするほどコスト効率が高まり、お得に感じる点も利用者が感じるメリットの1つです。
サブスクリプションサービスでは、定額費用を払えばサービスを自由に利用できるものも多くあります。
そもそも、サブスクリプションサービスは多額の初期費用が必要な場合が少なく、利用者自身が維持管理をする必要もありません。
つまり、経済的な合理性の高さに加え、経済的な負担感を感じにくい点が、サブスクリプションサービスの人気拡大のポイントです。
要するに、サブスクリプションサービスは、実質賃金が横ばいや減少傾向にある消費者の財布事情に寄り添ったサービスと言えます。
2.3 利用者メリットその3:最新の商品・サービスが利用できる
利用者から見たサブスクリプションサービスにおける3つ目のメリットは、最新のサービスや商品を利用しやすい点が挙げられます。
音声や動画などデジタルコンテンツを提供するサービスは、適宜最新のコンテンツが追加され、利用者を飽きさせない設計になっています。
物品のサブスクリプションサービスでは最新製品を提供し、場合によっては利用者が気に入ったら買取も可能です。
利用者が自ら新製品・コンテンツを入手しに行くのは非常に手間ですが、サブスクリプションサービスだと自動的に提供してもらえる点が魅力です。
2.4 利用者デメリットその1:解約方法がわかりにくい
利用者から見て、サブスクリプションサービスのデメリットとして挙げられる要素の1つは、解約方法の分かりにくさです。
手続き自体はスマホで完了できるものの、解約手続きページが見つけにくく、解約作業に至れないサービスもあります。
国もこの状況を重く見て、消費者契約法を2022年に改正し、2023年6月より解約方法や条件の明示が努力義務に指定されました。
参考:消費者庁「サブスクリプションサービスをオンライン契約により提供されている事業者様へのお知らせ」
サービス解約の容易性は、サービスの人気にもつながるポイントのため、改善しないサービスは淘汰されていく可能性があります。
2.5 利用者デメリットその2:費用が利用状況に関係なく発生する
サブスクリプションサービスは、利用有無に関わらず必ず定額費用が発生する設計のため、費用負担を避けられない特徴があります。
水道や電気のような使用量に応じた課金体系のサービスであれば、利用量が少ない期間はそれ相応の金額の負担で済みます。
しかし、サブスクリプションサービスは費用が定額であるケースが大多数のため、利用量や回数が少ないと費用が割高になりやすいです。
定期的に利用するサービスであれば割安感を維持できますが、見込まれる利用量が変動する場合には、必要に応じて解約するのが得策です。
2.6 利用者デメリットその3:支払い費用が増えやすい
サブスクリプションサービスは料金が手頃なため、複数サービスを契約すると気づかぬうちに費用負担が大きくなりやすいです。
また、サービスによっては、初月が無料で2カ月目以降が有料だったり、自動的にオプションサービスが付加されている場合もあります。
その結果、利用者は契約をしたつもりがなくても、登録上、予定外の費用が発生して請求される場合があります。
利用開始時の契約条件や課金対象の確認漏れが主な原因であるため、利用手続きが簡便であるからこそ契約時の注意が重要です。
費用請求書やクレジットカードの費用明細から意図しない費用に気づけるため、定期的に利用サービスと費用を照会しましょう。
3.事業者におけるサブスクのメリットとデメリット
サブスクリプションサービス事業者から見た場合でも、メリットとデメリットが併存しています。
サブスクリプションサービスは注目度の高いビジネスモデルであり、そのメリットが注目されやすいです。
しかし、無視できない数々のデメリットも存在するため、メリットとデメリットを比較して、関連ビジネスに参入すべきかの評価が必要です。
今後のビジネスモデルとして主流になる可能性の高いサブスクリプションサービスの特性をしっかりと把握しておきましょう。
3.1 事業者メリットその1:継続的かつ安定的な売上が確保できる
サブスクリプションサービスを提供する事業者のメリットとして、安定した売り上げを継続的に得られるという点が挙げられます。
従来の売買ビジネスでは、取引数や取引規模が変動しやすいため、安定した収益を確保するのは困難でした。
しかし、サブスクリプションの特性上、一度契約されると解約されない限り、定額の売り上げが自動的に計上されます。
ただし、売り上げの継続的な安定のためには、新規の顧客獲得や既存顧客の利用促進に向けた取り組みが必要です。
売り上げの継続性と安定性が高まると、既存サービスの改善や新規サービス開発への投資判断がしやすくなります。
3.2 事業者メリットその2:サービス改善で顧客の繋ぎ止められる
サブスクリプションサービスにおけるメリットの2つ目は、提供サービスの改善が顧客の継続利用に直接影響を及ぼす点です。
従来、サービスを一定期間利用する契約では、終了日が決まっているケースが多く、継続利用には再契約をしてもらう必要がありました。
一方、サブスクリプションサービスでは利用終了日がなく、顧客のサービス満足度を維持・向上させられると、解約率を低く抑える可能性が高まります。
サービス満足度の維持・向上にはサービス改善が重要であり、サービスの利用データを活用したサービス改善が肝となります。
契約行為にかかる営業関連作業を省き、顧客の離反防止につながるサービス改善に集中できるのが、サブスクリプション業者のメリットです。
3.3 事業者メリットその3:新規顧客を容易に取り込める
事業者がサブスクリプションサービスを提供するメリットとして、新規顧客を取り込むことの容易さも挙げられます。
利用者メリットで紹介したように、利用開始に必要な初期費用等は不要なサービスが多く、費用面での心理的ハードルが低くなるためです。
従来のような売買契約だと、全額を一度に支払う必要がある場合が多く、利用者が経済的負担を感じやすい特性があります。
しかし、サブスクリプションでは、月額数百円から数千円で利用可能なサービスが多く、経済的負担を感じにくいです。
そのため、顕在顧客に加え、費用面で諦めていた潜在顧客も新規顧客として取り込むのが容易になります。
3.4 事業者デメリットその1:短期間での収益化が難しい
事業者がサブスクリプションサービスを提供するにあたり、短期間での収益化が困難な点がデメリットの1つです。
サブスクリプションサービスの売り上げはサービス価格✕顧客数で計算され、サービス開始初期にはすぐに多くの顧客獲得が難しいためです。
サブスクリプションサービスは顧客数の増加に合わせて売り上げも増加するビジネスモデルのため、黒字化するには一定の顧客数が必要になります。
そのため、従来の売買ビジネスと比較して、事業の収益化には時間がかかりやすいのがサブスクリプションビジネスの特徴です。
サブスクリプションサービスを始める際には、中長期的な収益化を前提に、投資回収計画を検討しておきましょう。
3.5 事業者デメリットその2:継続的改善が欠かせない
サブスクリプションサービス事業者におけるデメリットとして、利用者数を維持するためにサービスの継続的な改善が必要な点が挙げられます。
顧客のサービス満足度を維持し、向上させ続けないと契約数よりも解約数が多くなり、売り上げが減少サイクルに陥る可能性があるためです。
継続的に改善するには、ユーザーの利用履歴などのデータを解析し、サービス内容を見直す労力や費用が発生します。
そのため、サブスクリプションサービスの収支計画にはサービス開発費用に加えて、改善にかかる費用も見込んでおく必要があります。
よって、サービスの継続的な改善の良し悪しが、サブスクリプションサービスの収益化の成否に影響する点を押さえておきましょう。
3.6 事業者デメリットその3:価格見直しが柔軟にできない
サブスクリプションサービスの特徴として、価格の見直しを柔軟に行いづらいのも、デメリットの1つです。
利用者はサービス利用にあたり、定期的に課金される金額とサービス内容をてんびんにかけて契約をするからです。
もし、サービス内容を据え置きで定額料金を増額すると、コストパフォーマンスが悪化するため、顧客の離反を招く可能性があります。
設定した価格の変更は収益性の向上や改善が期待できるものの、顧客数の減少による売上低下を引き起こすリスクも考慮しておきましょう。
4.サブスク拡大の背景
サブスクリプションサービスが拡大した背景には、生活環境や消費者動向などの時代の潮流が大きく影響しています。
サブスクリプションサービスの拡大に特に影響している時代の潮流は3つあります。
デジタル技術の発達と浸透
モノの所有から利用への価値観の変化
コスパ・タイパの追求
歴史を振り返っても、時代の流れを押さえたビジネスは急速に拡大しており、サブスクリプションサービスもその系譜の1つに数えられます。
4.1 デジタル技術の発達と浸透
サブスクリプションビジネスが拡大している要因には、デジタル技術の発達と日常生活への浸透が挙げられます。
スマホを含めたモバイル機器の世帯保有率は9割を超え、インターネットも個人の利用率が9割近くに達しています。
また、クラウド技術が一般化しており、スタートアップ企業でも容易にインターネット経由のサービスやコンテンツ提供が可能です。
参考:総務省「令和5年 情報通信に関する現状報告の概要」
そのため、サービスの契約から利用までスマホ1つで完結可能な環境が整い、手軽にデジタルコンテンツの利用・提供が可能になっています。
さらに、コロナ禍での外出制限により、インターネット経由のサービスへの需要が急増し、認知度が向上したのも普及に拍車をかけています。
4.2 モノの所有から利用に価値観の変化
消費者を中心に、モノの所有から利用に価値観が変化しているのが、サブスクリプションサービス拡大に作用しています。
背景には、消費者の購買力が継続的に低下している経済状況があります。
過去15年間の実質賃金で前年比増となっている年は4年しかなく、家計において支出に回せる金額は減少傾向です。
また、消費者の意識としてもモノの購入よりも利用を重視するようになっています。
参考:総務省「毎月勤労統計調査令和4年分結果速報の解説」、消費者庁「平成 28 年度消費生活に関する意識調査結果報告書」
サブスクリプションサービスは一度大きな支払いがなく経済的負担を感じにくいため、家計事情を踏まえた課金体系として支持が広がっています。
4.3 コスパ・タイパの追求
サブスクリプションサービスの特徴である、利用し放題やいつでも利用可能な柔軟性が、コスパ・タイパのよいサービスとして受け入れられています。
サブスクリプションサービスは若い世代ほど利用者が多く、その若い世代は費用対効果や時間に対する成果を重視する傾向が高いです。
また、サブスクリプションサービスはスマホ経由で利用するケースが多く、デジタル機器の操作に慣れた若い世代には身近に感じやすい特徴もあります。
参考:消費者庁「第35回インターネット消費者取引連絡会 資料1 サブスクリプションサービスの動向整理」、消費者庁「令和4年度消費者意識基本調査の結果について」
つまり、サブスクリプションサービスの特徴や利用経路が若い世代の特性に合致していたため、爆発的な利用者数の増加につながったと考えられます。
5.サブスクビジネスのこれから
サブスクリプションビジネスは、有望な成長産業の1つですが、楽観視は禁物です。
サブスクリプションビジネスが先行している米国では、インフレによる家計圧迫の影響で見直しされる費用項目の1つになっています。
そこで、ここからは日本国内の市場推移や最新動向を3つに整理します。
中長期的な市場の拡大
サブスクリプションサービスの対象拡大
サブスクリプションサービスの競争激化
サブスクリプションサービスはビジネスも生活も変革する可能性の高いサービスであるため、今後の方向性もしっかり押さえておきましょう。
5.1 中長期的な市場の拡大
サブスクリプションビジネスの市場は今後も右肩上がりの成長が予測されています。
サブスクリプションのビジネスモデルのさらなる浸透と、展開されるサービスの種類の増加が拡大要因になると見込まれているためです。
具体的には、日本国内においては、2025年度まで5%以上の成長率で拡大していくとの試算が公表されています。
実際、従来のデジタルコンテンツ配信系に加え、車や洋服などの物品のサブスクリプションサービスが本格的に展開され始めています。
参考:矢野経済研究所「サブスクリプションサービス市場に関する調査を実施(2023年)」
今後、所有から利用の価値観変化に合わせて各社がサブスクリプションサービスを打ち出せば、市場規模も中長期的に成長していくでしょう。
5.2 サブスクサービスの対象拡大
サブスクリプションサービスの種類は、年を経るごとに加速度的に増加しています。
例えば、2023年の日本サブスクリプションビジネス大賞で受賞したサービスは、従来のサブスクリプションサービスにはない領域のサービスばかりです。
グランプリ:猫の見守りトイレ提供サービス
シルバー :和菓子やお茶をセットにしたおやつボックスの提供サービス
ブロンズ :未利用魚を加工・瞬間冷凍した食材の提供サービス
単純に所有から利用に変えたサービスではなく、新たな価値観や生活を提案する画期的なサービスが誕生しています。
5.3 サブスクサービスの競争激化
サブスクリプションサービスが次々と参入してくると、市場における企業数が過剰になり、ある時点から市場内競争が激化すると予測されます。
サブスクリプションサービスが拡大した理由には、実質賃金が横ばい・減少している状況において、経済的負担を減らしたい消費者心理が作用しています。
しかし、複数のサブスクリプションサービスを利用すると、実質的な固定費用が増加し、自由に使える家計が減ってしまいます。
そのため、魅力的なサービスが複数あっても、消費者が全てを利用する経済的余裕はありませんし、取捨選択せざるを得ません。
よって、今後サブスクリプションモデルでの提供数が一定数を超えると、サービスの優劣が明確になり、サービスの淘汰が進んでいくと見込まれます
まとめ:サブスクを活用して、賢いお金の使い方へ
サブスクリプションの概要や利用者と事業者におけるメリット・デメリットとともに、サブスクリプション拡大の背景や今後の見通しを解説しました。
サブスクリプションサービスは、価値観の変化・家計状況・生活様式にいずれも合致している点が高く評価され、順調に市場拡大しています。
利用者からすると、一度に多くの費用負担を回避しつつ、都合に合わせて使いたいものを使い放題である特徴が魅力です。
一方、事業者としても安定した売り上げが期待でき、自転車操業のような非効率な経営を回避できるメリットがあります。
サブスクリプションサービスを上手に活用して、コスパ・タイパを向上させ、満足度の高い生活を実現しましょう。
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