46歳で味わうJTCの闇(前編)
デジタルマーケのベンチャーでIPOの梯子を外された私は、またもや人脈に救われ、いわゆるJTC(Japanese Traditional Company)にキャリアを進めたというお話。
2023年某日、大先輩の導きで私はJTCへ入社する。それは半官半民の某大手通信事業者(N社)を母体とする超大手IT企業(ND社)の子会社。
多大なる私見が入るが、この会社のヒエラルキーはこんな感じ。
政権 > 政府 > 総務省 > N社 > ND社 > 弊社
新卒以来の入社式
まず最初に驚いたのは、中途入社なのに小さいながらも入社式があったこと。これまでの会社はオリエンテーションくらい。入社式なんて新卒の時以来だ。お偉いさんの挨拶があり、取締役から辞令を表彰状のように受け取って各部門に散っていくのだ。
過去もにみた初日のトラウマ
入社式が終わると、出迎えに来てくれていたメンバーに連れられてフロアへ移動し。もちろん上司(私を呼んでくれた大先輩)へ挨拶へ行く。
私「この度はありがとうございます、今日から宜しくお願いします!」
上司「あ。うす。」(PCの画面をみたまま)
・・・・・あれ?
思った感じと違ったのと、SaaSベンチャーで出会ったパワハラ上司が頭をよぎった。初日の印象がブレたことは無い。「おー!どうもどうも!」的な空気感で始まるのかと思いきや「あ。今日からだっけ」くらいの感じ。どうもその時バタバタしていたようではあるが、嫌な予感しかしなかった。
またもや話が違っている
私のミッションは「新規顧客の開拓」「営業のとりまとめ」だった。営業部長として着任し、これまで培った営業・マーケティングの経験を生かしていろいろとアクションを打つ。もちろんWebメディアへの投資も行い、新規リードを獲得し開拓していくための活動を進めていたのだ。
・・・というのは全体の仕事の2割ほど。
残りの8割は企画業務。企画というと何となくカッコいいがこの会社が言う企画とは総務・財務的な立場から部門をサポートする仕事なのだ。特に部門の決起会やオフサイト、出張、イベントなどのとりまとめからお金の管理、売上/利益/経費などの諸表の管理と責任を負うことになっていた。営業活動もままならないのに「数字大丈夫だよね?」と確認される立場だ。なんだよそれ。謎すぎたが何とかこなしていく毎日。そしてこの企画業務の負荷が高いことが後々の問題のトリガーになるのです。
お客様が見えない
新規開拓だけでは飯は食えないので当然の既存もやれという話になる。既存というのはユーザーではなくND社。つまり親会社だ。簡単に説明すると親会社がとってきた仕事を分けてもらう子会社としての営業活動なのだ。なので「私たちのチームでは某プロジェクトでこんなコンサルをやっています」とか、「こんなスキルを持ったエンジニアがいます」などの情報を伝えることで、親会社が持っている案件にマッチするかが勝負となる。なのでエンドユーザーであるお客様のニーズや課題には対峙できないのだ。これは営業ではなく御用聞き、楽だけど楽しくないやつだ。でもここから作りだす数字の70%が部門の売上・利益になるのでやらないわけにもいかなかった。。
仕事のための仕事をする人がたくさんいる
Nという巨大グループを支える何十万人という人員の雇用を守るためなのか、本来あるべき効率化なんてものとは無縁で、無駄な時間と無駄なお金をかけ続けていた。テクノロジー企業なのに。
簡単に例を2つ。
▼PCは最低でもひとり2台
コロナで急にリモート対応になった時の影響が残っていた。そもそもセキュリティがガチガチの会社なので、一般的な対処策として使わるGoogleやZoom、Slackなどはもちろん使えない。本当に最悪なのはリモートデスクトップ接続なのだ。つまり会社に個々人のデスクトップPCがあり、自宅からそのPCへアクセスするためのノートPCがあるのだ。それ以外にも外出専用のPC、開発が必要な人には開発用のPCも割り当てられる。なので社内の資産としてPCが何千台もあったのだ。とんでもない話だ。いいカモだったのか販売店ともグルになっていい思いをしていた社内の人もいたらしいよ。。
▼勤怠管理ポリスがいる
Nというグループは国の息が掛かっているで問題を起こしてはいけない。ハラスメントや労働時間などは絶対に問題になってはいけないのだ。なので時間外や休日のPCを起動しようものなら、翌日には「〇〇さん、時間外のPC起動を確認しました」という警告メールが来る。もちろんCCには上司が入ってくる。このメールを出してくる人は、この仕事だけをしているらしい。
一番私を不安にさせたのは、ここで働いている人のほぼ全員がこの状態に文句を言いながら、慣れに身を任せて何もしないということでした。恐らくこの状況を変えようとすること自体が時間の無駄なのかも知れないが、全くお金を生まない仕事のための仕事がたくさんあり、それで雇用を守っていたのです。そしてその雇用の原資を生み出しているのが各事業部門。当然高い予算が強いられるのだ。人も仕組みもすべてがサイロ化しており風通しも悪く、部門が横串で何かを成し遂げられるような姿は想像もつかない。この社風が私にはとことん異様に映りました。
ただ、我が身の雇用も守られるのがこの会社。家族のため、自分のためにもここで何とかやっていこう。。と自分に言い聞かせる日々だったのです。