ストラテラを1年半、飲んでいます ~ストラテラを飲んでみた その2~
いつもnoteを読んでいただいて、ありがとうございます。注意欠如多動性障害(ADHD)・精神障害者手帳2級で博士(生命科学)のred_dash です。この文章は「ストラテラを飲んでみた」の続編に当たります。
私が発達障害の診断を受けて、そろそろ1年半が経過します。ストラテラの投薬を受けながら環境調整を行って1年半を過ぎた、とも言えます。この1年半は、研究者である私にとって、いわばストラテラ投与の人体実験でした。投薬から時間が経った今、薬の効果やそれに伴う心身への影響、そして経済面への影響を報告します。
経済面への影響
まずは経済面への影響の具体的な話として、薬の費用について記しましょう。私はだいたいストラテラ10mg を2カプセル、朝晩2回摂取しています。薬局での支払う値段は平均すると、1か月分で約1560円になります。年間でだいたい19000円程度ですね。この金額は自立支援制度によって保険料が1割負担となった結果なので、もし自立支援なければ4680円/月、57000円/年程度になります。薬の値段はストラテラの量に比例して上がりますので、私よりお金がかかっている方も、そうでない方もいらっしゃるはずです。
薬の効果と心身への影響
次に、薬の効果やそれに伴う心身への影響として、薬を飲み続けた実感についてお話します。向精神薬って怖い、と感じる方もいらっしゃるかもしれません。ストラテラは非中枢神経系刺激薬なので当然と言えば当然ですが、依存している感覚はありません(注1)。正直、飲み忘れることもありますが、それによる離脱症状などの副作用もありません。飲み忘れによって生じるのは、何かをしようと思ってもやる気にならないというアイドリングのような状態だけです。これは、薬を飲み始める前によく経験していた感覚です。
ストラテラを飲んで私自身が変化した点の1つに、踏ん張りが効くようになったことが挙げられます。「ちょっときつい、でももう少し頑張ろう」がやりやすいのです。その結果、例えば文章を以前よりたくさん書くこと、よりたくさんの事象やデータについて考えることができるようになったと感じています。私にとっては喜ばしい変化です。
例えば、最近の私は習作を作ることを厭わなくなったと感じています。つまり、文章やデータの試し書きを作ることが嫌でなくなりました。以前の私は頭の中で文章やデータを組み立てている時に、行き詰ると「どうしてこんなクソなものしかできないんだ、嫌だ」と感じてそのまま捨てる傾向にありました。しかし、最近の私は嫌になる前に「いったん形にしよう」と思い立つことができるようになったと感じています。気に入らなければ、しばらく放置した後に元気になってから「ここを直そう」と修正を加えます。
一方で少し残念に感じる変化の一つは、感受性の低下です。以前は、目につくものに注意が吸い込まれて、思考は枝葉が無尽蔵に伸ばしている状態でした。今では多少なり剪定されて取捨選択する傾向に変化した、と感じています。ストラテラやコンサータを飲んだ人の報告に、思い付きが減った、とか、感性が弱まったといったものがありますが、同じようなものだと思います。
「これは私の仕事じゃない」「他の人に任せよう」と選択することが以前に比べて容易になりました。これは望ましい事であるように感じる一方で、私は手を出さない、という残酷な選択をするようになったとも言えます。壁ではなく卵の感性を持ち、壁にぶつかる卵の側に立ち続ける感性を失わないようにしたいと思います。
終わりに
以上が、今の私の主観的な感覚です。周囲から見た客観的な変化も記録できれば、なお面白いかもしれませんね。読者の皆様から見て、noteを書き初めた頃と、今では何か変化を感じるでしょうか。気づいた点があれば、教えてください。
主観的な報告だけでなく、よりメタな分析結果が知りたい方は下記レビューの日本語解説が役に立つかもしれません。ADHDの治療薬の長期的な効果について紹介があります。
【最新レビュー】抗ADHD薬のリスクとベネフィット(1)_長期的効果、運転や教育への影響など - RIDC_JPのブログ -
https://bit.ly/34rx0tB
私自身に障害があることを認め、薬を飲み、障害者として生きる知恵を探り、そして自身の興味と知識に従って研究を続けてきました。私はそんな日々をこれからも続けていくでしょう。多くの人から見れば愚にもつかない細やかな日常かもしれませんが、これが私にとっての挑戦です。
それでは、素敵な一日をお過ごしください。
red_dash
注1: ただし、厳密に言えばなにかに依存している人も「私は○○に依存している訳ではない。ただ...」と説明して否認傾向があります。詳しくは下記を参考にしてください。あくまで、私の主観的には依存してないように感じていますが、実際に依存していることは別問題です。
※本記事はred_dash が2020年11月25日現在までに収集した情報に基づき作成されていますが、情報の正確さ・安全性を保証するものではありません。
※発達障害には個人差があります。必ずしも紹介した全ての事項が当てはまるとは限りません。心療内科や精神科を受診して医師の診断を受けてください。