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Vol.20 浜松市の漁獲量事情について

今回は、新聞等で見聞きする話題について感じたことを実際にRESAS等のデータを活用したらどのように見えてくるのかを試してみました。

今回調べてみるのは、ここ数年問題になっている浜名湖周辺の漁獲量の激減について調べてみました。

実際に以下のような報道がされていますね。
<2020年、浜名湖水揚げ過去最低に 10年で半減>

<浜名湖のアサリ激減 漁獲最盛期の60分の1 潮干狩り絶望的>

○浜松市の水産業の概要

(1)沿岸漁業・湖面漁業
平成19年4月1日より政令指定都市となった浜松市は、面積1,558.06平方キロメートルと全国でも有数の面積を誇り、79万人(平成27年度統計)を超える人口は県内最大を誇っています。また、赤石山脈・木曽山脈に挟まれて流れる天竜川、静岡県西部に位置し県内唯一の汽水湖である浜名湖、そして白砂青松と歌われる美しい海岸線を有する遠州灘といった恵まれた自然環境に囲まれています。

(2)内水面漁業
浜松市には天竜川・都田川をはじめとする大小の河川や佐鳴湖があり、天竜川、阿多古川、気田川、水窪川(非出資)、佐久間ダム(非出資)、浦川(非出資)、都田川(非出資)、入野の8つの漁業協同組合があります。これらを内水面漁業協同組合といい、漁法や漁期に関する決まりを魚種ごとに定め、川の環境と資源を管理しています。また漁場改善のため、河川の清掃や、漁場情報・注意事項を記載した看板を設置するほか、漁場監視員が漁場を巡回し、漁場の案内や指導をしています。

(3)養殖業
浜松市では古くからウナギ、アユ、スッポン等の養殖業が行われてきました。特に、日本での養鰻業の発祥地は浜名湖周辺であり、その歴史は明治20年代中頃まで遡ることができます。ウナギ養殖の収穫量では、静岡県は全国4位を誇り、県内では浜松市が全県収穫量の40%を占めます(平成18年度)。経営体数では県下58経営体のうち浜松市が26経営体を占めます(平成17年度)。
 浜名湖周辺では、魚類養殖で必要な三条件を兼ね備えていました。一つ目は、浜名湖に遡上する天然のシラスウナギを採捕することができること。二つ目は、三方原台地から豊富な地下水が供給され、飼料は湖内の小魚などが豊富に獲れること。三つ目は、東海道沿線で他県から飼料用鮮魚が手に入りやすかったことです。しかし、最近は技術革新と輸送手段の発達により、台湾や中国などの輸入ウナギが国内生産を上回る結果となっております。
 浜名湖で養殖を行っている浜名湖養魚漁業協同組合では、遡上する稚魚を高い栽培技術で育て、養殖履歴を明記しトレーサビリティシステムを構築することで、消費者が求める「安全・安心なウナギ」を提供しています。また天竜川ではアユ養殖も行っており、良質な浜名湖産種苗と良質な地下水により、早期出荷の利点を生かし安定した生産をあげています。食用と別に遊漁の放流用にも生産されています。
浜松市HPより
(https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/nousei/food/fish_cal/gaiyou.html)

○浜名湖における主要30種の漁獲量

次に浜名湖における主要30種の漁獲量について、2012年から2021年まで時系列で調べてみました。

出典:静岡県水産技術研究所浜名湖分場「広報誌『はまな』」

これを見てみると、確かに大幅に漁獲量が落ちていることが分かりますね。
2012年比で2021年合計漁獲量は、93%も落ち込んでいます。
この落ち込みの大きな要因は、やはり「アサリ」ですね。

【浜名湖における主要30種の合計及びアサリ漁獲量時系列推移】


(2012年~2021年)

出典:静岡県水産技術研究所浜名湖分場「広報誌『はまな』」一部加工

アサリは、2012年比96%も落ち込んでいます。また、合計漁獲量に占めるアサリの割合は、2012年には93%ありましたが、2021年には約52%にまで低下しています。

また、アサリを除いたその他29種の漁獲量について見てみると2012年は、175,005㎏、2021年は、91,019㎏と48%の落ち込みとなっています。

ただ、その29種の中には2012年比で漁獲量が伸びているものがあります。
その魚種は、「マイワシ」「シラスウナギ」「サバ」「マアジ」「ブリ類」「ノコギリガサミ」「雑エビ」「イカ類」となっています。
特に「サバ」に関しては、2,777.19%と大幅に増加しています。

【対2012年比 増加漁獲量魚種時系列推移】

出典:静岡県水産技術研究所浜名湖分場「広報誌『はまな』」一部加工

○浜松市の海面漁場種類別延べ経営体数

次にRESASの海面業業種類別延べ経営体数について、2008年及び2018年で調べてみました。

〇海面漁業種類別延べ経営体数

出典:農林水産省「漁業センサス」再編加工

まず全体としては、漁獲量の落ち込みからも想定できますが、延べ経営体数は、990経営体から820経営体に減少しています。

また、漁獲量自体は大幅に落ち込んでいますが、やはりアサリの関係者が多いのでしょうか?「採貝・海藻」が一番大きな割合を占めています。ただ、その経営体数は、333経営体から304経営体に減少しています。

ただ、漁獲量の落ち込みほど経営体数が減っていないように見えますので、今後、このような経営体がどのようにしていくのかは大きな課題になりそうですね。

また、この比較においての大きな特徴は、2008年には22経営体であった「その他の網漁業」が、2018年には60経営体と大幅に伸びています。
これは、先ほど見た漁獲量が増加している魚種が影響しているのでしょうか?

○海面漁獲物等出荷先別経営体数の割合

では次に、それぞれの経営体が、どこに出荷をしているのかを見てみます。

出典:農林水産省「漁業センサス」再編加工

浜松市の経営体においては、「漁協の市場または荷捌き所」への出荷が多く、静岡県平均と比べると10%以上、全国平均と比べると20%以上となっており、特徴的な出荷状況となっています。

また、全国平均と比べると「流通業者・加工業者」「直売所・自家販売(消費者に直接販売)」の割合が低く、販売における高付加価値化に関しては、まだまだ伸びる余地がありそうですね。

○海面漁獲物等及び海面養殖販売金額(経営体あたり)

では、実際に経営体あたりで、どの程度の販売金額になっているのか見てみたいと思います。

出典:農林水産省「漁業センサス」再編加工

これを見ると、浜松市の海面漁獲物等及び海面養殖販売金額ともに、静岡県・全国平均と比べて非常に少なく、小規模経営体が多いことが想定されます。

また、海面漁獲物等においては、静岡県・全国平均とも販売金額が微増していますが、浜松市は横ばいで推移しており、この辺りの要因分析は必要なものと思われます。

海面養殖について見てみると、浜松市、静岡県平均とも伸びてはいるものの、全国平均の伸び率に比べると低調に推移していることもあり、今後は地域の特徴を踏まえた養殖について検討していくことも一つの策となるかもしれません。

○海面漁獲物等及び海面養殖販売金額帯別の経営体の割合

販売金額について、もう少し踏み込んで見ていきたいと思います。

出典:農林水産省「漁業センサス」再編加工

海面漁獲物等についての浜松市の傾向としては、「100万円以上1,000万円未満」の割合が高く、「1,000万円以上5,000万円以上」、「5,000万円以上1億円未満」、「1億円以上」の割合が静岡県、全国平均と比べても低くなっています。

また、ここで注意してみないといけないのは、「100万円以上1,000万円未満」「1,000万円以上5,000万円以上」についての構成割合は増加しておりますが、実際の経営体数は減少しているということです。
割合が増加しているからと言って、実数も増えている訳ではありませんので、ご注意ください。
(100万円以上1,000万円未満=430経営体→390経営体、1,000万円以上5,000万円以上=52経営体→47経営体)※RESASデータダウンロードより抽出

※RESASダウンロードの方法は

一方、海面養殖については、「100万円以上1,000万円未満」の構成割合が、4%から8%に増加し、実際の経営体も3経営体→5経営体に増加していますが、「1,000万円以上5,000万円未満」の構成割合も7%から14%、「5,000万円以上1億円未満」も0%から2%へ増加し、実際の経営体数も「1,000万円以上5,000万円未満」が5経営体→9経営体に、「5,000万円以上1億円未満」も0経営体→1経営体に増加しています。

これは、全国的にも同様の傾向が表れており、養殖における高額販売金額帯へのシフトが起こっていると思われます。

○海面漁業の就業者数と年齢構成

以下は、浜松市の「海面漁業の従業者数」と「海面漁業就業者数の年齢構成」を示しています。

出典:農林水産省「漁業センサス」再編加工

従業者数は、年々減少傾向でありますが、年齢構成を見ると「25-34歳」の構成割合が、11%から14%へ、「35-44歳」は、10%から15%へ増加しています。
実際の従業者数としては、「25-34歳」は、103人→101人と若干減少しておりますが、その他年齢の減少に比べたら非常に少ない減少幅となっておりますし、「35-44歳」に関しては、94人→107人と増加していることもあり、漁業に携わる若い世代が比較的多くなってきていることが伺えます。

○まとめ

ここまで、「漁獲量」「経営体数」「従業者数」等の観点から、色々な数値を見てきました。
漁業全体としてみれば、ボリューム量は確かに小さくなってきていることは否めませんが、それぞれの観点で見ると、伸びている部分がそれぞれの項目においてあることが分かりました。

特に漁業で働く従業者数が若い世代で増加傾向となっている部分に注目したいと思いますが、これら若手従業者が「漁獲量」や「販売金額帯」で伸びている魚種、経営体に配置されているかがポイントではないかと思います。

この辺りのミスマッチがあるようであれば、これらを解消することで、経営体としての労働生産性が改善され、更なる漁獲量増加に繋がるかもしれません。
(伸びているところへの若手人材の流動性向上)

ただ、これらは自然環境や、消費者のニーズにより常に大きく変動することとなると思いますので、常にデータで動向を確認しながら、それに適した策を打っていく必要がありそうですね。

ちなみに、以前調べた「浜松市の農業について」も改めてご紹介しておきます

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