#3 直下率って何?耐震に関係ある?
3つ目のお話は、
『1階と2階の柱や壁が揃ってないのが、具合悪かったんじゃないですか?』
っていう、内容です。
まずは、この図面をみて下さい。
2階の柱(壁)の下に1階の柱(壁)がありませんよね。
柱の直下率
まずは柱のお話から始めましょう。
「柱の直下率とは、2階の柱の下に1階の柱がどれだけありますか?」
ということです。
下の図を見て下さい。
1階は8帖の和室に押入れがあります。
2階は6帖の洋室にクローゼットです。
この8帖の和室の上にどういう形で、6帖の洋室が乗るかですが、まず外壁が揃った状態で乗った場合が下図となります。
■は1階の柱です。
1階に柱がある2階の柱は■に赤〇が付いています。
1階に柱がない2階の柱が赤□です。
では、この場合の柱の直下率を出して見ましょう。
2階の柱の本数が「14本」です。
そして1階と2階の柱が揃っているのが「10本」です。
10本 / 14本 × 100 = 柱の直下率は、71.4%
次にこの場合ではどうでしょうか。
2階の柱は、同じく「14本」ですね。
そして、今度は外壁面が半間ズレています。
その為、1階と2階の柱が揃っているのは「5本」しかありません。
5本 / 14本 × 100 = 柱の着火率は、35.7%
同じ間取りでも全く違った結果となりました。
壁の直下率
では、次に壁の直下率について考えてみましょう。
壁というのは、「耐震壁」です。
「筋交いや構造用合板などで補強された壁の直下率」です。
今回、図面では、開口部以外は耐力壁という前提でお話します。
1階の耐力壁の上にピンク色のマーカーで2階の耐力壁を重ねてみました。
前と後ろの一部の外壁面がズレているため、直下率は悪そうですね。
実際に計算してみましょう。
計算しやすいように、一壁(半間)を1mで考えてみましょう。
2階のピンク色の耐力壁の長さは、「30m」となります。
1階の壁と2階の壁が重なっているのは、「11.5m」です。
11.5 / 30 × 100 = 壁の直下率は、38.3%となります。
直下率をどう考えるか。
1階にある柱や壁に2階の柱や壁が乗っていないということは、梁に乗っていることになります。
その場合、梁には大きな負担がかかっていることになります。
それは、できるだけ避けた方がいいのではないか?ということです。
熊本地震では、この「柱の直下率」が60%以上、「壁の直下率」が60%以上だった建物が大地震に耐えていたのです。
しかし、この直下率は、現行の建築基準法には規定がありません。
また、耐震等級の考え方にも規定がありません。
それが、耐震等級2の住宅が倒壊した理由の1つかもしれません。
実際この建物の「柱の直下率」は47.5%、「耐力壁の直下率」はわずか17.8%でした。
この直下率に規定がない以上、住宅を建てる会社や設計士がどう考えているのかを確認することが、重要なことなのではないでしょうか?
直下率が高ければ地震に強い家なのか?
では、『直下率の高い家を設計してください。』と言って建築を依頼すればいいのでしょうか?
直下率が低いよりは、高い方がいいと思います。
しかし、実際は2階に係る地震力をうまく1階に伝えることが重要なのです。
その1つの目安として直下率があるのです。
直下率が高くても、力の付加の大きい出隅部分などに柱がなかったり、十分な断面の梁で受けられていなかったりすれば、たとえ直下率が高くても地震に強い建物にはなりません。
重要なのは、構造計算です。
構造計算をした住宅を設計し建築する事です。
構造計算をすれば、地震力を伝えるのに必要な梁の大きさなどを計算で求めて設計します。
一般の方からすると、何を当たり前のことを言ってるのだとお思いでしょうが、しかし、これは当たり前のことではありません。
残念ながら、多くの2階建て木造住宅は、構造計算をしなくても建築することが可能です。
実際、ほとんどの2階建て木造住宅は構造計算をしていません。
このお話をすると長くなってしまいますので、詳細はまたの機会に。
要は、直下率は重要な要素ではありますが、これがすべてではないということです。
直下率が高いから安全な住宅とは言い切れませんし、直下率が低いから危険な住宅だというのも一概には言えません。
直下率が低かった場合、危険な住宅かもしれないので、専門家に診てもらったり、耐震補強の相談をするなど検討する程度で考えて下さい。
そんな簡単に直下率を上げれるわけではありませんので。
また、直下率が高いから安全とは考えず、それ以外の危険要素がある場合も十分あります。
不安を煽るわけではありませんが、直下率という1つの事にとらわれず、いろいろな角度から、地震について考えてみて下さい。
次回は、「制震」についてお話します。
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