不妊のこころ (2)頑張っている自分を責めないで
カウンセリングを受ける不妊患者さんはみな、その人なりの深刻な悩みを抱えて訪れますが、何の問題も見受けられないように語り出すこともあります。「私は恵まれています。夫も義母も友達も優しくて」ある女性は、そこでいったん言葉に詰まり、こう続けました。「『頑張れ』って言われるとつらい。食事も運動にも気を配り、鍼灸や漢方も取り入れてます。これ以上どう頑張ればいいのでしょう」
私たちは幼い頃から、努力すること、目標に向かって前向きに取り組む大切さを、徹底的にたたき込まれます。学業や仕事で成功を収めるためにです。でも、不妊治療の現実は厳しいものです。女性は年齢が上がるにつれ、妊娠できる確率は下がります。40歳の女性が、体外受精で妊娠するのは、治療1回あたり平均14%という調査結果もあります。
幼い頃から培われた努力の習慣があるから、うまくいかないたび、こう思いがちです。「頑張りが足りないからダメなんだ。もっと頑張らないといけない」周囲も、当然のように「頑張れ」と励ますので、さらに頑張らなくてはいけなくなる。本当にキツイ状況です。次第に、自分を責めるしかなくなります。
もしそんな風に自分を責めておられるなら、まずは、「私はもう十分頑張っている」と、自分に優しく接してほしいと思います。自分が自分の最初の味方でいてあげてください。
周囲の皆さんも、できれば「頑張れ」よりは、「頑張っているね」と努力を認め、ねぎらう言葉をかけてほしいと思います。
※本記事は、以前読売新聞で連載したコラム「不妊のこころ」を再編集したものです
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