【Pulse2019参加報告】General Session書き起こし
カスタマーサクセスの世界的なカンファレンス「Pulse2019」がサンフランシスコで5/21~5/24の4日間開催されました。
世界中のCSMが5500人以上も集まる大規模なカンファレンスで、開催されたセッション数は実に130以上。非常に大規模です。
Reproからは3名で参加し、日本とは比べ物にならない熱気、勢いに圧倒されました。
そんな「現場の空気感」を日本にも伝えたいと考え、初日のGeneral Sessionの一部を書き起こしさせて頂きました。
どのような流れで「Human First」や「Product Experience」が語られていたのか?ご一読頂き、少しでも空気を体感してもらえれば幸いです。
またCS HACKさんに「Pulse2019報告会」登壇の機会を頂きました。Repro App Division General Managerの山中より、現場で感じたことや学びを発表させて頂く予定です。こちらもぜひお越しいただけますと幸いです。
それでは以下書き起こしです
※General Sessionの一部のみピックアップしております。
human first.
遂にPulseがスタートすることにとても興奮しています。Pulseでは毎年多くの人との出会いが生まれます。そんな皆さんと作り上げてきたこのコミュニティに、私はいつもエネルギーを貰えるのです。
様々なカスタマーサクセスのリーダーと話していく中で、多くの人々が「人間的なアプローチ」を通じてビジネスを成功に導いていることを知りました。私はそれを聞いて興奮しました。つまり「human first」が大切な考え方なのです。
私はこの「human first」というコンセプトは、カスタマーサクセスに携わる方全員にとって欠かせない考え方だと思っています。
・なぜなら、カスタマーサクセスと言えばデータを指すからです。
・カスタマーサクセスと言えばオートメーションを指すでしょう。
・契約更新ですし
・チャーンです。
しかし、カスタマーサクセスの焦点は人へと回帰する。私はそう確信しています。カスタマーサクセスのみならず、ビジネスにおいても「human first」なアプローチは必要不可欠だと考えています。
pulseというコミュニティの成長
この素晴らしいコミュニティは急成長しています。2013年300人から始まったpulseも、6年間で驚くほど大きな規模に拡大しました。今年は5500人以上が参加しています。
またこのPulseは当社Gainsightのための場ではありません。このコミュニティのための場です。ですから当社はカスタマーサクセスのコミュニティに貢献しようと、多くの事を投資しています。
例えば我々が11月にヨーロッパスタートさせたオンラインのトレーニングもその一つです。
pulseへのプロダクトチームの参加
そして私は、より多くの人をこのPulseに迎えられることに興奮しています。
昨年のPulseで私たちは「カスタマーサクセスは、カスタマーサクセスマネージャーに留まるものではなく、それ以上のものだ」という事をお互いに共有したと思います。
これはCSMに留まらず、オーケストラのように会社全体が協力し、顧客に価値を届ける事を指します。異なる部署の協力を必要とし、どの部署も欠かすことができません。
しかし過去このコミュニティに、最も重要な部署であるプロダクトチームの参加がありませんでした。顧客の成功はプロダクトなしには成し得ません。
2019年、Pulseはプロダクトチームを迎えます。
皆さんはこの数日間で様々なプロダクトに関するセッションに参加することができます。
カスタマーサクセスの環境
驚くべきことにカスタマーサクセスの青本も世界中の人々に読まれています。日本語、スペイン語、ポルトガル語を含む多くの異なる言語に翻訳されています。
またLinkedinによれば、過去4年間でカスタマーサクセスは8倍に急増し、米国以外では10倍近く成長しています。さらに医療産業などのさまざまな業界でも大きく成長しています。
また長い道のりではありますが、カスタマーサクセスはジェンダーバランスの取れたテック分野の一つです。実に48%が女性が活躍しています。
カスタマーサクセスのこれまでと、2020に向けて
カスタマーサクセスのこれまでの歴史を振り返ってみましょう。
この10年間で様々な企業が、
・1.カスタマーサクセスの組織を創設し
・2.解約防止に焦点をあててきました
・3.そしてそれは「解約を防ぐためにすべきことは何でもやる」というような状態でした。
・4.そこから時間が経過するにつれ、私たちはプロダクトの活用促進に積極的になっていきました。
・5.そして私たちは試行錯誤を通じて学んできた。
このような流れだったと思います。
昨年、Gainsightは学習結果を一つのフレームワークにまとめ、「カスタマーサクセス要素の周期表(Periodic Table of Customer Success Elements)」を発表し、カスタマーサクセスの方法論を一歩次へと進めました。
さて。ここから生まれる次の疑問は「我々はどこへ向かうのか?」ということだと思います。
これまでの10年間、契約更新を確実にするために、我々は意思決定者との関係を構築する事に力を注いできたと思います。しかし、新しい時代では、真の力はエンドユーザーの手にあることが分かってきました。私たちは「プロダクト体験(Product Experience)」に投資する必要があるのです。
実際にSlack、Zoomなど、多くの企業がこれを行っています。
1.PRODUCT EXPERIENCE TAKES CENTER STAGE
つまりプロダクト体験が中心となるのです。顧客体験の悪いプロダクトを通じて顧客を成功に導く事はできません。私たちはカスタマーサクセスにおける会話の中心をプロダクト体験に寄せていかなければなりません。CSMとPMが一緒になって素晴らしいプロダクト体験を提供していく必要があるのです。
1.FROM CUSTOMER SUCCESS TO CUSTOMER GROWTH
CS 2020に向けた2つ目のテーマは「顧客の成功から顧客の成長へ」です。
これまでCSは解約阻止に焦点を当ててきました。それはまるで鎮火をミッションとする消防士のように防衛的です。
しかし、我々が挑戦しなければならないのは、「どれだけ多くの顧客を『顧客の成功』から『顧客の成長』に引き上げられるか」という事です。
そう、我々カスタマーサクセスは我々のビジネスにおける収益ドライバーになり得るのです。今日のセッションの中で、CSが新規受注やアップセルに影響を及ぼした驚くべきストーリーを聞く事になるでしょう。
TSIAのデータによれば、企業が「収益責任を持つカスタマーサクセス組織」を持つことで、サブスクリプション成長率が高くなり、営業マーケティングコストは低くなる事が分かっています。
これは私たちを勇気づけるデータです。カスタマーサクセスを通じて収益最大化に結びつくのです。
3.HUMAN-FIRST LEADERSHIP
3つ目の原則は私たち全てのチームに関する事です。
多くの人が顧客のヘルススコア、健康状態に注目しているかと思います。しかしながら、持続可能な成長を目指すためには、われわれチームに目を向けなければなりません。実際Temkin Groupによれば、従業員のエンゲージメント向上が収益増加に直結している事が分かっています。
振り返ってみると、真に強いビジネスを作り急成長している企業は人材に投資している事がわかります。ヒューマンファーストなリーダーシップ(human first leadership)を持つことで、このような偉大な企業に近づく事ができるでしょう。
4.OPERATIONALIZING OUTCOMES
4つめのトピックは「成果の運用最適化」です。我々の多くが常に「成果」について話をしていると思います。
しかしながら現実は、重要顧客に提供している方法と同じことを、他の顧客に提供できていません。成果をどのようにしてコントロール可能にするか。再現性のある手法を数多くの顧客に提供するにはどうすればよいか。またどのようにそれをスケールさせるか。これらを深く知りたい方はカスタマーサクセスのスケールに関するプレゼンテーションを見に行ってください。
5.CUSTOMER DATA INFRASTRUCTURE
CS2020に向けた、最後5つめのテーマは、データについての会話を変えなければならないという事です。
今私たちは数多くのデータを持っています。しかしアクセスできない状態です。データはぐちゃぐちゃ、綺麗に整理されていないからです。データなしに我々の未来はありません。
営業やマーケティング等の組織では、データを取り入れ、活用する事が一般的になっています。そして私たちカスタマーサクセスもデータを取り入れる必要があります。そのため、顧客データ基盤を構築し、データをビジネスの中心的な強みにするのです。より顧客を理解する為にもIT部門や運用チームと協力しましょう。
これらが2020に向けたCSの向かう方向性です。
ではここからはGainsight COOの Allison Pickensに説明してもらいましょう。
Human First Product
テクノロジーによって我々の仕事のやり方は劇的に変わりましたよね。
例えば、これが私の典型的な仕事の週のスケジュールです。
カレンダーは同期され30分の空き時間帯がすぐに見えるようになっているので、他の人が私の空き時間に予定を詰め込むことができます。
メッセージ量も膨大です。会議の空き時間にメールの返信メッセージの返信に時間を奪われます。
しかし問題は、このような生活が人間的には感じられないということです。
私は自分自身がテクノロジーの奴隷であるかのように感じます。まるでもぐら叩きのよう。
ソフトウェアが人間に寄り添ったものに進化していくべきではないでしょうか?そのような問題提起をしたいと思います。
私はこの「ヒューマンファーストなプロダクト(human first products)」という思想が新時代を切り開くと信じています。
そこでhuman first productsの5つの原則を皆様に紹介したいと思います。
1.Growing
1つ目のポイントはプロダクトがユーザーの達成したい目的に沿って、ユーザーに理解されやすく、活用されやすいものであることです。
2.Special
2つ目は、プロダクトがユーザーのやる気を引き出すような、ユーザーの好みに合致した特別でユニークなサービスを、ユーザーごとに提供することです。
3.Vulnerable
3つ目は、脆弱性のあるプロダクトを利用するとき、人は虐待を受けたような気持になり得ることを、我々は認識すべきです。従って、収集したデータは公正な目的を果たすためだけに使い、プライバシーを遵守しなければなりません。
4.Ends not means
4つ目は、プロダクトはあくまで手段であるべきだということです。人間の目標を実現するための手段として、適応していくべきです。購入してもらって終わりではありません。顧客からのフィードバックを大切にしましょう。PMは360度フィードバックを受け、プロダクトを改善し続けるすることが必要です。
5.Autonomos
最後5つ目は、プロダクトは人を独立した意思決定者として扱うべき。ということです。
私はこの5つの原則が、プロダクトのステージごとに存在すると考えています。
1.Growing
まず最初のステージで取り組むべきことはUI自体を設計し顧客を導く事です。プロダクトをどのように利用できるのか、なぜそのプロダクトが有用なのか?これらを顧客に説明しユーザーを導く事が必要です。またこれはカスタマーサクセスチームとプロダクトチームが共同で取り組むべきことでしょう。
2.Special
第二ステージではプロダクトチームは、ユーザーにとって独自の体験を提供するような製品に設計する必要があります。またカスタマーサクセスチームは、単なるアカウントとしてではなく、ユニークな個人としてクライアントを視覚する能力・機能を有していなければなりません。
3.Vulnerable
また顧客一人一人を認識するためにデータを取得することは、同時に顧客を不安にさせる事を意味します。
私たちは会社全体として、個人のプライバシーや権利を尊重しデータを扱わなければなりません。
4.Ends not means
テクノロジーの向かう最終地点は人です。人が「手段として」テクノロジーに使われる存在であってはなりません。「ITシステム優先だから、テクノロジーに必要だから」という理由で人間がテクノロジーに遣えるものであってはなりません。
5.Autonomos
最後に、プロダクトはユーザーに一律に押し付ける事はしてはなりません。例えばプレイブックを単に押し付けるようなことです。そのような押しつけを避けるためにも、あなたの仮説が誤っていないかどうかユーザーの反応をテストする環境を用意するべきです。
しかし、カスタマーサクセスとプロダクトが一体となってヒューマンファーストなプロダクトを設計することには、ビジネス上の理由もあります。
昨年、私たちは業界全体で100人のカスタマーサクセスリーダーをさまざまな側面から調査しました。
そこで出てきた大きな問題点は、カスタマージャーニーを自動化できていないことでした。また多くの企業がチームを拡大する必要性に迫られていました。私たちはどのようにスケールさせるのかを考えなければなりません。
現在、私たちはEBRと呼ばれるベストプラクティスによって、顧客に電子メールを返信するために夜と週末を過ごしています。そしてそれは多くの時間がかかります。
働き過ぎにも拘らず、途方もなく長いtodoリストには、これらすべてのことを全て実施せよと書かれているのです。
しかも、実際問題として、その途方もないtodoリストはプロダクトの継続に必要不可欠だったりします。そしてそれは、そこそこの成果に繋がっています。
しかし私は質問を投げかけたい。
どうしてあなたのプロダクトを活用するのはそんなに難しいのですか?
そしてなぜプロダクトの課題を解決しないのですか?
今、私達はスケールに伴う大きな問題に直面しています。
この問題はまだ解決していません。
ほとんどのプロダクトでは、そのクライアントが活用し成果を上げるまでの間にギャップを抱えています。
カスタマーサクセスマネージャーは、そのギャップ、つまり実際には製品自体によって埋められるべきギャップを、埋めようとしているのです。
Gainsightはその問題を解決する為に、「ENABLEMENT ENGINE」をリリースしました。
チームマネジメントするカスタマーサクセスのリーダーにとって、このENABLEMENT ENGINEは人間と機械の間の障壁を打破する絶好のソリューションになるのではないでしょうか。
おそらくこれは、カスタマーサクセスとプロダクトマネジメントが結びついて、ヒューマンファーストなテクノロジーを提供する新時代の始まりです。
--以上--
by Kengo Iwata