ブリコルール(#15)
レヴィ=ストロースは、『野生の思考』という文化人類学の本の中で、ブリコルール(bricoleur)という人物類型のことを書いています。
フランス語で、ありあわせの道具や資材で何かを作ることをブリコラージュ(bricolage)と呼び、ブリコラージュする人を、ブリコルールと呼びます。
レヴィ=ストロースは、ブラジルの奥地でインディオたちと生活するなかで、インディオ達をブリコルールに見立てました。インディオたちは、ジャングルの中で見つけた物を、その時は何の役に立つかわからないものでも、直感的に袋に入れて持ち帰ったそうです。ただ、その時は何の役に立つかわからないような物でも、後になって様々な使用機会が出てきて、結果的に必要だったとわかる。
直感。想像力。
計画や予想とは正反対の位置にある概念ですが、自分にとって本当に必要な物、必要な選択、必要な人、新しく生み出すコンテンツ。こういったものを選んだり、組み合わせたりすることができるセンサーみたいなものが、本来、人間には備わっているのかもしれません。
しかし、消費社会によって、大衆社会によって、その生まれながら持っているセンサーの精度が狂いに狂ってしまっている。
ローグライクRPGとブリコラージュ
このレヴィ=ストロースのインディオの話は、ローグライクRPGというゲームジャンルに似ています。(日本ではチュンソフトが『トルネコの大冒険』、『風来のシレン』というソフトを販売して有名になりました)ローグライクというのは、プレイヤーがダンジョンに潜って、そこでランダムに発生する武器やアイテムを駆使して、敵を倒して奥に進んでダンジョンをクリアする。というようなゲームです。非常に面白いゲームです。
そのダンジョンに落ちているアイテムというのが、実際、その時にははっきりとどういう役割で使用するか決まってはいない。色々ダンジョン内に落ちているので、とりあえず拾っていく。手持ちの制限もあるので、取捨選択していく。そこが、まさにブリコラージュです。様々な場面で使用できるように、いくつかの機能を持ったアイテムも多いです。
まとめ
人間だれでも自分の人生を振り返った時に、点と点を繋げていくと、意外となんかあるんじゃないか?使えそうな物があるんじゃないか?という結論でした。今回の記事は、内田樹『日本霊性論』(NHK出版新書)に影響を受けて執筆しました。
未来のことは、誰にもかわらず、選択に答えも正解もありません。あとから考えて、これが正解だったということは誰にでもいえます(結果論)が、何かが役に立つか、立たないかは、未来の自分が回収するものだと思います。