株式でマッキンゼーを雇う
マッキンゼーの名声は、大前研一氏の活躍もあって社会にとどろいている。経営層やそれを目指す人々であれば、どんなに忙しくても本の一冊や記事の一つでも読んだことはあるはずだ。
そして経営層にある方の場合、その支援を受けて会社を飛躍的に成長させたいと願うのではないかと思う。経営の知見を集めたハードワーカーが、自社の成功の為に3カ月くらい伴走して戦略とその実行計画を見定め、或いは実行支援までしてくれたら、それまで考えも及ばなかった飛躍的チャンスを得られるかもしれない。財務的な成長だけではない、関わった自社のスタッフたちは戦略的な大きな仕事を通じて成長してくれるかもしれない。社内に優れた仕事の進め方が型として根付いてくれたら、その効果は長期に及ぶだろう。
事業の拡大とともにやり甲斐のあるポジションが新たに作り出されたら、社員はますます仕事意欲を高めるだろう。給与も上げてモチベーションを高めることも考えられる。
そう思って、マッキンゼーに仕事を依頼しようとしたらいくらかかるか問い合わせる。そして、3カ月くらい雇おうとすると余裕で一億円以上かかるという現実に気付くのだ。
実際のところ、売上1000億円を超えるような企業がマッキンゼーをはじめとした戦略コンサルを雇うというのが相場となっていて、中堅中小企業ではほとんど雇えないのである。
しかしこの長年の壁を、PEファンド業界の急激な拡大がこじ開けようとしている。PEファンドというのは、レポートバンクでも詳しくレポートしているが、
要するにマッキンゼーなどを卒業した戦略コンサルタントやゴールドマン・サックスなどを卒業した投資銀行家たちが集まり、銀行や年金機構や大企業から資本金を集めて中堅中小企業などの株式を買い、経営改革を進めて成長させ、価値の上がった株式を売って儲けようという集団である。
ファンドによって経営改革にどう向き合うかは多様なので関わる際には確認が必要だが、それは属するメンバーの経歴を見れば大体わかる。
こうしたファンドは中堅中小企業の経営層にとってみれば、優れた経営改革をしてくれるが、その代わりに支配権を明け渡さなければならない劇薬のように見えているかもしれない。
しかしよくよく調べると、これも前述のレポートに取り上げているが、数パーセントの株式でも動いてくれるファンドが存在するのだ。
つまり、支配権は経営層に残ったまま、戦略コンサルタントが経営コンサルティングをしてくれるのである。まさに、株式でマッキンゼーを雇うような選択肢が現れたと言える。
こうしたファンドは、今は主に、上場してはいるが中堅中小規模にとどまっている企業の株式を数億円分購入して経営支援に乗り出すような動き方をしている。例えばアドバンテッジアドバイザーズが該当するだろう。今は独立されているが、その記事が数年前にマールオンラインで出ていたので下記にリンクを紹介する。このファンドは古川さんだけでなくディレクター、スタッフ層にも戦略コンサル出身者を複数人揃えていることが他のインタビュー記事や公式サイトからも分かる。
現在はこのようなファンドは数が少ないので、相談しても上場している中堅中小企業のみの対応を手がけたり、そもそも手一杯になっているかもしれないが、現在進行形で広がるファンド業界は、そのトレンドからしてやがて手軽に戦略コンサルティングサービスを得られる環境をもたらしてくれるだろう。
さらなるPEファンド業界の拡大と経営改革支援の拡充は、きっと日本の産業界の事業効率を高め、経済成長をもたらすと思い、楽しみに業界をみている。