PEファンドとクラビス氏
日頃新聞を読んでいれば、或いは株式投資をしていれば、プライベート・エクイティファンド、すなわち「PEファンド」という名前を聞いたことがあるはずだ。
それは保険会社や年金基金などからお金を集め、主に上場していない会社を買い、コスト削減や採用や海外展開などを手伝って立派にしたうえで他の会社や投資家などに売却する、いわば金融取引と経営支援で稼ぐファンドのことである。
タイトルのヘンリー・クラビス氏は、そのような仕事をする業界を作り出した1人であり、私は野蛮な来訪者でその名を覚えてから、最近の日経新聞名物コーナー「私の履歴書」への登場で久々にその名を目にすることになった。
クラビス氏は1944年生まれで、1970年代のアメリカで投資銀行勤務を経てPEファンドのKKR創業に携わった人だ。その人となりについて、1988-9年の一大企業買収(RJRナビスコの約3兆円の買収)をめぐる関係者たちへのウォール・ストリート・ジャーナルの記者の取材によって記された「野蛮な来訪者」には下記のようなエピソードが出てきている。
・1970年代、創業初期のKKRで1日16時間働くような猛烈社員だった
・1980年代前半には投資銀行と弁護士の小軍団を指揮して投資案件をリードする存在だった
・華やかな社交生活を好みニューヨーク社交界の常連になっていた(パーティーでドナルド・トランプと話していたこともある)
・回転ドアに一瞬閉じ込めたりしてライバルをからかうのが好きだった
・RJRナビスコ買収合戦のあいだはマスコミに私生活まで色々ふみこまれ悩まされた
・買収合戦の最終盤には、投資銀行スタッフを前にしてわざと買収をあきらめる芝居をした後、決行を告げて盛り上げるなどユーモラスな一面があった
・買収合戦に勝利した後、関わったスタッフや友人など400人を集めた豪華なディナーを主催した
これらのエピソードからは、よく働きよく遊ぶ、とても豪快で社交的な人物であることがうかがわれる。
今やクラビス氏も80代をむかえ、PEファンド業界は日本でも大きな存在感を示すようになってきている。ファンドそれぞれも得意領域や提携企業に違いが出てきて個性的だ。新たなスターが続々と現れ、小説になるようなエピソードが日本でも出てくるのではないかと楽しみだ。
ファンドからの投資を得て企業を飛躍させようと考える経営者からしても、必ずしも買収まで行かなくとも(数%の出資だけでも)改革に協力するファンドもあり、企業成長の強力な助っ人になるのではないかと思う。
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