金魚
咄嗟に黒い金魚が溢れてきた。
お昼休み。1年の頃から同じクラスのBといつものようにふざけて遊んでいる。
「お前、人権ないから。」
いつものBのちょっとしたいじり。
「いや、なんやねん。それ笑」
乾いた笑いで傷をごまかす。その笑いとともに金魚が口から溢れる。僕にしか見えないけれど、金魚はたしかにそのまま教室中をユラユラと泳いでいる。
年が明けると、教室は赤い金魚でいっぱいになった。先生の書いた黒板の文字が見えないほどに。
僕はもうボロボロだった。黒い金魚が溢れた頃にはもう手遅れだった。
Inspired by 「金魚」(湯木慧)