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畳よ畳、どうかそのままでいておくれ

目当ての物件を見つけた。

見つけたといっても、もう何ヶ月も前から「ここがいい」と決めていたところだ。諸々の手続きがいよいよはじまる。この身分で、はたして審査が通るのかという致命的な問題はさておき、もちろん新しい物件も畳の部屋だ。

しかし都内の物件、まぁ「畳」の少ないこと。
どこの不動産に行っても驚かれるし、「今どき畳は不人気なんでね〜、フローリングに変えちゃうんですよ」と天気の話をするみたいにごく普通に言われる。致し方ない。

現に物件サイトを片っ端から検索してみても、条件内で運よく畳の部屋が見つかるのはせいぜい3部屋/サイトといったところ。畳の物件の場合は間取りのイメージ図でも居間が緑になっているので、画面をどんなにスクロールをしても絶対に漏れることがない。なぜならほとんどの間取りが茶色、つまりはフローリングだからだ。茶色のなかに光る緑を見つければ良い。選んでいる暇はほとんどない。

見極めるポイントとしては間取りの他に、物件名が「〜〜〜『荘』」であるかどうかがある。
この「荘」がついているだけで、畳と出会える確率は一気に上がる。オードリーの春日さんが独身時代に住んでいたむつみ荘はその最たる例だ。

もちろん、残念ながらこの例に漏れる場合もある。名前に「荘」がついているのを発見し、嬉々としてサイトを見に行くと、床がフローリングになっているケースも多々あるのだ。押し入れはドラえもんの寝床みたいな横開きのふすま、窓は敷布団を想定した背丈の低いものなのに、肝心の床がツルピカ新品のフローリング。
畳の不人気さに耐えかねた大家が、張り替えてしまったのだろう。壁や押し入れの年季の入り具合と、つるりとしたフローリングのアンバランスさには、悲しい歴史が詰まっていて何とも切なくなる。

そこで今日は畳のおすすめポイントを全力で紹介したい。

その① そのまま座れる、そのまま寝そべられる

まぁ何といってもここでしょう。畳は本当にね、お尻が痛くならないんですよ。クッション、ラグいらず。なぜなら畳自体がラグであり、クッションだから。
私も食事の時は畳の上に皿を置き、そのまま食べている。つくづく、私は畳の人間なのだと感じる。全く罪悪感を感じない。

これがフローリングとなると、いささか心許なさを感じる。「床は汚いもの」というイメージが染み付いているのか、どうもフローリングの上でそのまま食事をとる気になれないのだ。先日、めずらしく家に大人数が来てパーティーをしたのですが、このときも全く居心地の悪さを感じませんでした。


その② 夏は涼しく、冬は(比較的)あたたかい

これは本当。夏はベッタリしないし、冬はフローリングほど冷えない。冷え性だから冬は流石に冷たくなるけれど、底冷えした寒さではないのが助かる。ここでもやはり、座ったらわかる。冬の畳はあたたかい。お尻も冷えない。

その③ ゴミが目立ちにくい

これはいいのか悪いのかわからないが、ゴミが目立ちにくい。
髪の毛は目立つから毎日掃き掃除をしているけれど、小さなゴミは目立たない。よって突然の来客でも問題なし(?)。

その④ 雑巾で掃除した後の畳が本当に気持ちいい

これは癖になる快感。フローリングとはまた違うツヤツヤ感とスベスべ感。
私はクイックルワイパーで拭き掃除をしてますが、掃除をする時はかならず裸足になります。この感覚を味わうために。つるつるになった畳を裸足で歩くと安心します。

その⑤ 家に帰ってくるたび、い草の香りに癒される

家に入った瞬間、ほのかに立ち上がるい草の香り。見たこともない「ふるさと」へ帰ってきたような……そんな感覚に包まれます。すぐに鼻が慣れてしまうので、ほんのわずかな瞬間ですが。う〜ん、やっぱり私はい草の民なのだ、と思わざるを得ません。ちなみに実家・祖父母の家には小さな畳のスペースがありますが、経年劣化していてい草の香りはほとんどゼロ。それなのになぜこんなにも「故郷」のような印象を抱いてしまうのか、それはやっぱり、この日本で生まれ育って無意識に吸ってきた空気の影響なのでしょう。

というわけで、畳には機能面も情緒面もいいところたくさんあるんです。
それに、畳だからこそイケてるインテリアを置くのが一周回ってかっこいいのではありませんか。古くは都築響一さんの『TOKYO STYLE』にも畳の部屋ながらイかした空間、たくさんのってました。リバイバルブームもあり得ると思います。インスタを開くと、畳をいい感じにリノベして現代風の和室に住んでいる若者もたくさんいます。畳の良さに、もっとたくさんの人が気づいて欲しい。

畳はいいですよ。
私はこの次も、次の次も、畳の部屋に住もうと思ってます。ずっと「畳はええよ〜」と言い続けていくと思います。

だからこれを見ている不動産関係者または大家さん、どうか畳をフローリングに変えないでください。私の住むところがなくなります。


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