「どんな音楽聴いてるんですか?」と聞かれましても
最近ぜんぜん書けていないなぁと思い、noteを開いてみた。こんばんは、note住民の皆さん。お元気ですか。
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自己紹介のとき、一番聞かれて困るのが「どんな音楽を聴いてるんですか」という質問。具体的なアーティスト名も曲名も、なにも答えられない。
なぜなら聴く音楽が毎日変わるからだ。もちろん好きなアーティストはいるが、毎日聴くわけじゃないし、気に入ったものを数曲だけ掻いつまむようにして聴いている。アルバム全体をじっくり聴くことは、恥ずかしながらほとんどない。
10代の頃と比べて、最近は貪欲にディグる気力もなくなった。この情報であふれる現代においては、目的もなく何かを探すことは苦行に等しい。
今はラジオから流れてきた曲や、町中で聴こえてきた曲を単体でどんどこプレイリストに入れていく完全な受身スタイル。私が毎日開くプレイリスト名もざっくり「24年!」だ。そこにはクラシックもあれば洋楽もあり、KPOPもある。ちゃんと『それいけカープ(広島東洋カープのテーマソング)』まであったりするから、随分と雑食だ。
しかし「どんな音楽を聴いているのか」と質問してくる人は、文字通りの意味だけではなく、私がどんな人間なのかを推しはかろうともしているのだ。「いや、毎日変わるので答えられません」は、正直ゆるされない回答だろう。
その結果、私の「聴いている音楽」はその時々によってバラバラになっている。もし私の会話をすべて盗み聞きしている人がいれば、私という人間はなんとも予測不能な、一貫性のない奴に見えることだろう。
弱い人間なので、「こう思われたい」とか「こう言ったら話が盛り上がりそう」などという、その場の欲にまみれた返答をしている。相手の身なりや年齢、仕事によって「私が聴いている音楽」を変えるのだ。
服装がおしゃれで、なんとなく世田谷区に住んでそうな人には邦ロックのおしゃれなバンドを言うし、その人が吹奏楽などの楽器経験者と知れば「いまだに吹奏楽のほうの『宝島』聴いてます」と答える(吹奏楽の経験者であれば知らない人はいないであろう名曲)。カルチャーが好きで本をよく読んでそうな人には昭和の楽曲をいくつか言ったりもする。
でも、どれも心から好きなのだ。吹奏楽の曲も、洒落たバンドの曲も、同じくらい好き。けっして嘘を言っているのではない。
だから「どんな音楽を聴いているんですか?」と聞かれた時は、毎回真剣に、答えをカスタマイズしていることになる。相手との共通の話題になりそうなものを探りつつ、サマになるような音楽のジャンルを……。こんなふうに音楽をアクセサリー感覚でとらえるのはうっすらとした罪悪感があるんだけども。
あろうことか、私もついつい流れで同じ質問を相手に聞き返すことがある。ひどく後悔する。自分だって聞かれて嫌な質問を、いくら沈黙を埋めるための会話とはいえ人にするなよ、と。
この前も同じ「どんな音楽を聴いているんですか」という質問をされて、てきとうに「んー昭和歌謡ですかねぇ」と格好をつけてしまった(本当にカッコついてるのか?)。その人は洋服は黒しか持ってない・スニーカー好きという、私からすればザ・おしゃれな人だった。黒好きにはなんとなく意思の強い人が多い印象があるので、こちらも世界観強めな(?)「昭和歌謡曲」で応えたわけだ。
そして愚かなことに「あなたはどうですか?」と私も聞き返してしまった。聞いたあとに「しまった」と思った。案の定、自分が全く知らないアーティスト名を口にしたからだ。その人もしぶしぶ答えたに違いない。「どうせお前にはわかんないだろ」と思いながら。
自分がされて嫌なことは相手にしないこと。これ、人間関係の大前提!!!
今度からはもうやめようと思う。無闇に音楽の話、持ち出さない。
え、リアルな話ですか?
格好をつけずに答えると?
ーーええ、最近聴いている音楽はもっぱらクラシック音楽です。歌詞に疲れてしまったので、中高生の頃に弾いていた交響曲を引っ張り出して聴いてます。チャイコフスキーやワーグナーはすばらしいですね。最近はユーリ・シモノフの指揮を動画で見るのにハマっています。いちど彼のもとで演奏してみたいものです……
……
ね?本気で答えたら、みんないなくなるでしょう?
そういうことなんです、人と音楽の話をするのは。デリケートなんです。