【指揮者メモ】振り過ぎ問題
【振り過ぎ問題】
指揮を教える難しさの一つは、「振らないでいい」場合があることを分からせることだ。小澤征爾先生がカラヤンからよく言われたのは「振り過ぎだ!」だったらしい。
しかし、振らないでいい、または振るべきでないタイミングについて言葉で理論的に伝えることは非常に難しい。むしろ若い学生にはある程度好きにやらせた方が伸びると思う。あのクナッパーツブッシュでさえ若い頃は激しかった。
そういえば、いぜん東京・赤坂の喫茶店に入るとマスターがカウンターのお客さんと「最近の指揮者は振り過ぎ。もっと音楽を聴かせてくれないと」などと話しているのが聞こえた。
私は、「昔の指揮者も変わらんわ。晩年のスタイルだけでみやがって。自分で出来てからから言え」と思ったが、さすがに黙っていた。
会社組織でも、部下に任せきれずに口をたくさん出し、ミスしたら「一回で覚えろ」と怒り出す上司は多い。「いつでも何度でも分からないことは聞きなさい。その代わりお互い責任ある判断を心がけよう」という上司はどれだけいることか。
あのマスターはさぞかし素晴らしい上司なのだろう。
©伊藤玲阿奈 2024
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