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【指揮者メモ】任せすぎ(振らなさすぎ)問題

【任せ過ぎ(振らなさ過ぎ)問題】

おとといの投稿とは真逆の問題。これは晩年のカラヤンが好例。彼の指揮法は腰から首に負担がかかるので晩年は手術が続き、奏者に任せる傾向が一層強くなった。コンマスの負担が限界を超え、よく合奏が乱れていた。

例えば、「運命」1楽章でトランペットやティンパニが合わず、睨みつける映像が残っている。最晩年の「トスカ」では暗譜で凄まじい職人芸を見せてくれるが、アンサンブルが混乱している箇所が散見される。当時あの指揮で演奏できたのはベルリンとウィーンくらいではないか。また、学生オケ講習ではカラヤンが振らなさすぎて困惑し、帝王な振る舞いへの反発もあり、反乱を起こしかけたことさえある。

最低限しっかり振るべきことはあり、いま97歳のブロムシュテットは不自由な身体でも本当にうま〜く指揮している!老いを受け入れ、不要なプライドや執着をとうに捨てているからだろう。私はそこに高潔な魂を見ている。

それでもカラヤンの凄さは、振らなくても演奏できるまでにベルリンを育て、それを誇り高き楽員に受け入れさせる音楽的カリスマ的才能にある。

©伊藤玲阿奈 2024 無断転載をお断りします

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伊藤レオナ(在NY指揮者)
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