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【NYレポート】ハーレムの治安悪化/犠牲になった19歳の少女

皆さん、こんにちは! 在米25年目、ニューヨークはハーレム在住の指揮者、伊藤玲阿奈(れおな)です。

今日はNYマンハッタン島北部にあるハーレム地区の治安、そして、最近起こった痛ましい銃撃事件について書きたいと思います。

私がハーレムに引っ越してきた3年前までは、夜も平気で歩けるほどハーレムも安全になっていて、それまでのアフリカ(黒人)系やヒスパニック(南米)系のみならず、白人や中東・アジア人も増えてきていました。家賃高騰によって、それまで住んでいた層が引っ越しせざるをえない状況にもなっていたほどです。

ところが、それが新型コロナウイルスによるパンデミック以降、治安面ではガラリと変わってしまいました。弱者に対してヘイトをぶつける者――普段めったに変なことに遭遇しない私も、突然ぶつかられたり、「中国人かえれ!」などと絡まれたり、何度か嫌な思いをしました――や、困窮して強盗に走る者などが増えてしまったのです。頭やオーラがおかしい人が増えたのは明らかで、体感治安も大幅に悪化したと、住んでいて思います。

実は去年、私のアパートには2回も強盗が入りました。私の部屋は無事でしたが、2回とも階下のおなじ部屋が狙われたのです。

そのうち2回目のときは、ちょうど私がクラブハウスで配信している最中に起こっていて、終わって夕飯を買いに出ようとしたら警察がいて仰天しました。銃が放たれたわけでもなく、大声も聞こえなかったので、案外と気付かないものなのかもしれません。。。

狙われたご近所さんは、お怪我も何もしてないということでホッとしましたが、2回もやられたのは大損害だったことでしょう。以来、セキュリティーが強化されて、中庭にも夜中じゅう点滅するライトなどが取り付けられました。今は、夜間はなるべく外に出ないようにしています。

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普段は明るくて賑やかで、とても良い街なんですが・・・

さて、東京FM・オーディーの放送でも先日お話ししたように(下記)、2022年早々から、私の住んでいるNY市内ハーレム地区では、たいへん痛ましい事件が続きました。

とりわけショックだったのが、1月9日に近所のバーガーキングで起こった銃撃事件です。テレビなどを見ない私は、つい最近まで目と鼻の先で起こったこの事件について、起こったことさえ知らずにいました。

先週のことです。

いつもと違うスーパーにふと行こうとしたら、たまに利用しているバーガーキングにシャッターが降りていました。あれっ、と思って見てみると、シャッターの上にメッセージボードが貼られ、下にはたくさんのキャンドルが、そして、ぬいぐるみや風船も置かれていました。

「あっ、ここで誰かが亡くなったんだな・・・」

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実際の現場

私は、すぐにピンときました。

NY(おそらくアメリカ全体でも)では、誰かが亡くなると、亡くなった場所や、その人の住んでいたアパートの玄関に、故人へのメッセージやキャンドルを置いて追悼する習慣があるからです。

ただ、バーガーキングの前には、普通よりかなり多い数のキャンドルやお供え物がありました。なので気になってメッセージボードを読んだところ、痛まし過ぎる事件が起こっていました。

9日の夜、このバーガーキングに強盗が押し入って、女性の店員さんにレジから金を出すように要求しました。店員さんの名前はクリスタルさん(通称:クリスさん)。まだ19歳でした。

クリスさんは、レジのロッカーを開けるカギを探すために、カウンターの後ろで身体をかがめたそうです(強盗に入られたら、強盗の指示に従うのが鉄則ですからね)。

しかし不幸にも、犯人はそれを勘違いしたのでしょう。1発クリスさんに向けて銃を発射、それが胸に当たり、致命傷となって病院でお亡くなりになってしまったのです。19歳の若さで・・・。ご家族の嘆きはいかばかりか、想像するだけで胸が痛みます。

私がショックだったのは、それだけではありません。

クリスさんの写真がメッセージボードに貼ってあって、どうも見覚えがあるのです。はっきりと思い出せませんので勘違いかもしれませんが、ここのバーガーキングを利用したときに、おそらく彼女に接客をしてもらったことがあると思うのです。

私はぼう然としました。そして、少しの間ですけれども、黙とうを捧げてから目的のスーパーに向かったのでした。

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「クリスタルのために裁きを!(Justice for Kristal!)」

帰宅してから報道を調べてみると、もっとやるせない事実も分かりました。

犯人は30歳の男で、監視カメラの映像などから、1週間もたたずに逮捕されました。これは良い知らせでしょう。

しかし、この犯人、2020年に、なんと同じバーガーキングで働いていたのです。つまり、自分が知っている店に強盗に押し入って、100ドル(約1万1500円)を奪ったのです。19歳の女の子の命と引き換えに・・・。

2018年から19年にかけて、銃撃事件の数は歴史的といえるまでに下がっていましたが、パンデミックは人心をまた荒れさせています。

そしてバーガーキングの事件から日も浅いのに、つい先日の金曜日にも、NY市警の若い警察官がやはり銃撃によって死亡する事件が起こりました。やはりハーレム地区です。

武器の携帯は、自己責任を重んじるアメリカ憲法でも保障されているがゆえに、暴力には武器で対処しようとする(自分の身は自分で守ろうとする)機運も高まり、比較的規制が厳しいNYでさえ銃をもつ人が増えました。

しかし、これは悪循環のように感じられてなりません。せめて都市部だけでも完全に規制して欲しいと望みます。(余談ながらNYでは、市議会に関してはアメリカ国籍がない人でも投票ができるように進めています。ジョン・レノンの『イマジン』を先取りするような超画期的な政策です)

プエルトリコから移住してきたクリスさんの家族。姉が病院で亡くなったことを真っ先に電話で聞いてしまった14歳の弟。そして何よりも、GED(General Educational Development/高校卒業の学力があることを証明する証書・日本での大検のようなもの)資格をとったばかりで、これから将来を計画する矢先に犠牲になったクリスさん・・・。

クリスさんのご冥福と、ご家族の悲しみが少しでも和らぐことを心よりお祈りします。

私たちは、この事件から学び、疑心暗鬼になることなく安心して暮らせるコミュニティーを創造したいものですね。

東京FMのアプリ「オーディー」にて
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執筆者プロフィール:伊藤玲阿奈 Reona Ito
指揮者・文筆家。ジョージ・ワシントン大学国際関係学部を卒業後、指揮者になることを決意。ジュリアード音楽院・マネス音楽院の夜間課程にて学び、アーロン・コープランド音楽院(オーケストラ指揮科)修士課程卒業。ニューヨークを拠点に、カーネギーホールや国連協会後援による国際平和コンサートなど各地で活動。2014年「アメリカ賞」(プロオーケストラ指揮部門)受賞。武蔵野学院大学大学院客員准教授。2020年11月、光文社新書より初の著作『「宇宙の音楽」を聴く』を上梓。

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伊藤レオナ(在NY指揮者)
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