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植村洋斗が目指すは「何でもできる選手」。彼の魅力と、日藤入りの裏話


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先日横浜FC加入内定が発表された小倉陽太に続いて、早稲田の10番・植村洋斗のジュビロ磐田入りが発表された。共に4年を待たずして、3年生の夏に進路が決まった形だ。

この2人は1年生のときからトップチームに絡んで存在感を示しており、2年前に自分がYouTubeチャンネルで出した1年生ベストイレブンにも選出している。


今回は磐田入りを決めた植村洋斗の魅力と、ちょっとした裏話をしようと思う。


外池大亮監督から「10番を任せたい」というたった一言のLINEメッセージを受けて、植村は早稲田の10番を背負うことになった。この番号を最終学年を待たずして背負ったことで心持ちは変わったようで「試合を決めるプレーを出せるようにならなくては」と思ったのだと本人は語っていた。

ただ、「自分はあんまり点を取れるキャラではない」と続けて口にしたように、ゴールをバンバン奪うタイプの選手ではない。

とはいえ、数字に現れない価値が植村にはある。

基礎技術の高さをベースに、中盤の高い位置のライン間でボールを受けてターンして前進できるのが彼の特徴で、相手に脅威を与えられる。ピッチ中央から運ばれるだけでも相手にとっては怖いものだが、植村はその一歩深いところから運び出せるのだ。相手が警戒心を持ちプレッシャーがかかるエリアでもゴールへ向かうための技術を発揮できる選手と言うべきか。

簡単な言葉で片付けると、“センスがある”。

そのプレーからは得点の気配を感じるし、技術と位置取りの嗅覚を発揮しながら相手陣内へ入り込んでいくので、相手からすればとにかく怖い。点を取ることは少ないかもしれないが、周りが点を取るために敵陣へ押し込む状況を作ることができる。簡単なタスクではないし、これができる選手は少ない。

今の大学サッカー界を見渡してもここに関しては植村はトップクラスと言えるかもしれない。

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上述したような技術の高さは高校時代から際立っており、プロクラブも彼の存在に目をつけていた。高校3年次には山形の練習に参加している。ダブルボランチの一角で使われたようだが、そこでは「攻撃は間違いないが、中盤の底では守備を考えるとまだまだ」という評価だった。そして同時に「彼の適性はインサイドハーフだ」という結論も出たのだという。山形の強化部から聞いた話だ。

全てがネガティブな評価だったわけではない。が、結果的にプロ入りは叶わなかった。

「自分の武器がない。決定的なものがなかったから多分(プロに)いけなかったと思ってて。そこを大学でしっかりと見つめ直したかった。ただ、今も正直に言って自分の動きが何なのかはわかってないです。自分としてはそんな突出した武器を持つというよりは何でもできる選手になりたい、と。

元々攻撃は周りと違いを生み出せる自信はあったのですが、それだけでは駄目だと大学1年目のときに感じて、2年目から守備の分野をやろうと。そうして、守備も自分の強みになってきたのかなと思います」

高卒でのプロが叶わなかった背景について、植村はこう語っていた。明確な弱点と向き合って過ごしたこれまでの大学生活で植村が“できる”幅は広がっていった。いまやボール奪取も強みとなり、高卒時に欠けていた部分は埋まっている。

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植村についてはちょっとした"逸話”がある。高校進学についての話だ。

横浜FMのジュニアユースで西川潤(サガン鳥栖)と共にプレーをしていた中、日大藤沢のスカウトを務める河内健奨コーチの目に止まった。

「最初に目に止まったのが西川潤だったのですが、ユース昇格か桐光と決いていて。その次に目についたのが植村で、なんとしてでもとりたかった」

植村をどうしても獲得しようとした日大藤沢は驚きの行動に出る。なんと佐藤輝勝監督が自ら筆をとって手紙を植村へ送ったのだ。「まあまあ長い」(河内コーチ)ものだったという。

強烈な熱意に動かされた植村は日大藤沢へ進み、1年生から試合に出て中心選手として活躍した。

「そこまで歴史が長くはないが、日藤史上最もテクニックがある選手で、初めて試合に出したとき『こういう選手が多分、プロへ行くんだな』と思った」

河内コーチは振り返る。


ここまでの熱意を注がれるだけの魅力が植村には昔からあったということだ。ここについてはまだ聞いていないが、磐田も相当な思いを伝えたのではないかと察する。こまた改めて探ってみたい。


特別指定での起用もあるかと思うが、プロ入りまでまだあと1年半が植村には残されている。その間で、”何でもできる”の幅をもっと広げてほしいし、欲を言えば数字も残せる選手になってもらいたい。


まだまだ進化する余地はある。そんな気がしている。

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