ファン歴14年の私が大迫勇也ブレーメン移籍の“ハンパなさ”を語る
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誇張ではなく自分が世界一好きなチーム、ヴェルダー・ブレーメンに日本人が入ってきた。これまで幾度となく多くの選手の移籍先候補としてこのクラブの名が上がってきた訳だが、それは結局叶わず、もう来ないものだろうなと思っていたのが事実である。しかし、このほど、ケルンから大迫勇也が移籍してきたのだ。
メディカルチェックを終えたという報道が出てから気が気でなかったのだが、ちょっと落ち着いてきたので、この移籍に対する思いを書いてみることにした。
なぜブレーメンを応援しているか
ブレーメンが好きという話をすると、だいたい「何で??」と不思議がられてきた。中村憲剛、風間八宏、田坂祐介にも言われた。
ではなんでこのチームが好きかというと、よくある“選手入り”であるのだが、厳密に言うとそうではない。「何言ってんだこいつ」と思わないで読み進めて欲しい。
例えば川崎フロンターレのファンの中でも、日本代表の中村憲剛を見てから応援するようになったという人は多いと思うし、周りにもけっこういる。それと同じように、自分は2002年の日韓W杯で準優勝に輝いたドイツ代表のフリンクスとクローゼが好きになった。
そのフリンクスがブレーメンだったというところがこのチームを知ったそもそものきっかけだったのだが、フリンクスはW杯が終わった直後くらいにドルトムントへ行ってしまった。なので、実は自分が一番最初に好きになったドイツのクラブはドルトムントである。ウイイレでも使っていたくらいには好きだった。しかし、そこからドルトムントが財政難に陥り選手もどんどんいなくなっていく暗黒時代に入っていく。タイミング的には最悪だったと言って良い。
↑ドルトムントについてはコチラを読んでみると面白いかもです↑
そんな感じでドルトムントを応援しようと決めたのだが、その決意は速攻で崩れ去る。2003~2004年シーズン、フリンクスが消えたブレーメンがなんとブンデスリーガで優勝を果たしたのだ。緑とオレンジという奇抜な色の組み合わせとユニフォームサプライヤーであるkappaのフィット感全開のユニを見て、当時中2の竹中は心を奪われた。このとき、ユニフォームのかっこよさとかサプライヤーのデザインの重要性を初めて感じた。中田英寿がローマに在籍していたときもkappaだったと思うけど、あの伸縮性あるピチピチ感のユニフォームデザインはけっこう人気だったと思う。いまではアンダーアーマーがそれに当たるのだろうか。
とにかくここで気持ちは一気に傾いたのだが、なんと同じタイミングでクローゼがカイザースラウテルンからブレーメンにやってきた。ちなみにきっかけを作ってくれたフリンクスはドルトムントからバイエルンへ行き、その翌年の2005年の夏にブレーメンへ戻ってくる。
ということでそれ以来ずっとブレーメンを応援し続けている。若き日のジエゴやエジル、デ・ブライネが活躍して飛び立っていく中でユニフォームを買わなかったことを後悔すれば2005-2006のCLのラウンド16でエッシェンやベンゼマ、ジュニーニョ・ペルナンブカーノ擁するフランス王者リヨンに2試合合計10-2という歴史的フルボッコを喫したのを見て欧州王者は諦めたし、良くも悪くも記憶に残るプレーを連発してきたGKのティム・ヴィーゼが鍛えすぎを理由にブレーメンの次に所属したホッフェンハイムをクビになって引退後にプロレスラーになるというわけのわからんセカンドキャリアを選ぶ姿も見てきた。
ブレーメンにとって8億は相当な数字
前段が長くなったが、とにかく自分がブレーメンを好きということはわかってもらえたと思う。このGWにドイツへ行ってきたことは月刊マガジン内でも書いたが、実は最後にブレーメンの試合を観戦に行った。ゴール裏だ。その時の話は近々書くのでお待ちを。
https://note.mu/reona32/n/n3ad64eef6252
そんな自分がひいきにしてやまないこのクラブに日本人が来たのだから、それはそれは嬉しくてたまらない。冒頭でも触れたようにこれまで幾度も日本人加入の噂はあったもののそれが叶わず、というのが続いてきたので、それがより一層喜びを増長させてくれる。しかもこれ、クラブ側からかなり高い評価を受けての移籍になるのだ。
今回、ケルンからの移籍金は600万ユーロで約8億円だが、率直に言って自分が知る限りここ10年でもトップクラスの投資だと思っている(長く見ているファンの人、間違ってたら教えてください)。財政的に余裕がないらしいので、そもそも国内で活躍した選手を取ることはまず難しい。
元々UEFAカップで準優勝したりチャンピオンズリーグでも毎年出ていてそこそこ強豪みたいな立ち位置だったが、2000年代後半をすぎるとミクー→ジエゴ→エジルという流れでうまくいってきたトップ下の戦力補完が全くハマらず、エジル後が空席になった。好きな選手でユニフォームも買ったのでこういうのも心苦しいが、マリン当たりから流れが狂った感がある。チェルシーが出場機会を与えたくてタダ同然で貸してくれたデ・ブライネが大爆発するラッキーパンチもあったが、気づいたらエジルやジエゴレベルの選手は遙か遠い存在となり、そもそも同じカテゴリから選手を取れなくなっていった。
そんな状況でブレーメンは国外に目を向けた。オーストリアやチェコなどの東欧とデンマーク、オランダ、スウェーデンあたりの北欧という欧州選手権になったら第3ポットくらいのイメージがる国内リーグで活躍した選手たちに対し、頑張ればJリーグクラブでも出せそうな移籍金を持ってガチャを回しにいくスタイルを取っていった。
当たり前だが外れる選手もいれば当たる選手もいて、去年コペンハーゲンから来たデンマーク代表のトーマス・デラニーと今年入ったチェコ代表のイジ・パブレンカの2人は圧倒的大当たりだった。デラニーはデンマーク代表の一員としてW杯に出るし、それが終わったらいなくなるだろう。
パブレンカについてはこれを是非共見て欲しい。
とにかく、なかなか国内から選手は取れない。そんな中で今回、降格チームという前提条件はあるものの国内からFWを600万ユーロ(8億)で取るというのだから、これは相当ビッグニュースである。
2003-2004優勝メンバーであるフランク・バウマンSDは前々から大迫勇也をリストに入れていた一方、現実的に獲得には動けなかったのだと語っている。財政的な問題は間違いなくあるだろう。
そして今回のケルン降格をチャンスと捉えて、動き出した。そこで用意したのが600万ユーロという訳だが、この数字だけではこのクラブにとってどれだけの価値かわからないと思うので、これまでの選手獲得の歴史を見てもらいたい。(金額は全てTransferMarket参照)
ここ12年でブレーメンから外に出ていった主な選手たち
ヨアン・ミクー( MF 1973年7月24日生まれ 元フランス代表)
2002年夏 ←パルマ フリー
2006年夏 →ボルドー 300万ユーロ
ペア・メルテザッカー(DF1984年9月29日生まれ 元ドイツ代表)
2006年夏 ←ハノーファー 470万ユーロ
2011年夏 →アーセナル 1,130万ユーロ
ジエゴ(MF 1985年2月28日 元ブラジル代表)
2006年夏 ←ポルト 600万ユーロ
2009年夏 →ユヴェントス 2,700万ユーロ
メスト・エジル(MF 1988年10月15日 ドイツ代表)
2008年夏 ←シャルケ 500万ユーロ
2010年夏 → レアル・マドリー 1,800万ユーロ
マルコ・マリン(MF 1989年3月13日生まれ 元ドイツ代表)
2009年夏 ←ボルシアMG 820万ユーロ
2012年夏 →チェルシー 800万ユーロ
マルコ・アルナウトヴィッチ(FW 1989年4月19日生まれ オーストリア代表 )
2010年夏 ←トゥウェンテ 558万ユーロ
2013年夏 →ストーク 252万ユーロ
ソクラティス・パパスタソプーロス(DF 1988年6月9日生まれ ギリシャ代表)
2012年夏 ←ジェノア 315万ユーロ
2013年夏 →ドルトムント 891万ユーロ
エリエロ・エリア(FW 1987年2月13日生まれ 元オランダ代表)
2012年夏 ←ユベントス 495万ユーロ
2015年夏 →フェイエノールト フリー
フランコ・ディサント(FW 1989年8月7日生まれ 元アルゼンチン代表)
2013年夏 ←ウィガン フリー
2015年夏 →シャルケ 600万ユーロ
ニルス・ペーターセン(FW 1988年12月6日生まれ ドイツ代表)
2013年冬 ←バイエルン 270万ユーロ
2015年夏 →フライブルク 252万ユーロ
アンソニー・ウジャ(FW 1990年10月14日生まれ 元ナイジェリア代表)
2015年夏 ←ケルン 450万ユーロ
2016年夏 →遼寧宏運 1,150万ユーロ
セルジ・ニャブリ(FW 1995年7月14日生まれ ドイツ代表)
2016年夏 ←アーセナル 500万ユーロ
2017年夏 →バイエルン 800万ユーロ
まだチームを去っていない中心選手
イジ・パブレンカ(GK 1992年4月14日 チェコ代表)
2017年夏 ←スラヴィア・プラハ 300万ユーロ
トーマス・デラニー(MF 1991年9月3日生まれ デンマーク代表)
2017年冬 ←コペンハーゲン 200万ユーロ
マックス・クルーゼ(FW 1998年3月19日生まれ 元ドイツ代表)
2016年夏 ←ヴォルフスブルク 750万ユーロ
ミロト・ラシカ(MF 1996年6月28日生まれ コソボ代表)
2018年 ←フィテッセ 700万ユーロ
最近のブレーメンの歴史の中でもそこそこ名が知られている選手を出したわけだが、これを見れば総じてこのクラブが主力としたい選手に払う額の平均額が見えてくると思う。当時と今で価値が異なるので一概に言えないと思うが、ジエゴやエジルを獲得したときと今回の大迫勇也は同額と思ってくれればなんとなすごさがわかると思う。
10得点はマスト
そして、年齢とポジションに対する移籍金を考えると…
アンソニー・ウジャ(24歳で450万ユーロ)
マックス・クルーゼ(28歳で750万ユーロ)
セルジ・ニャブリ(21歳で500万ユーロ)
この3人が今回の移籍に近いと思っていて、すなわち彼らが残した数字くらいは達成して貰わなければ困る、というのがファン心理である。ではこの4人が1年目でどれだけ活躍したかというと…
ウジャ 27試合11ゴール
クルーゼ 23試合15ゴール
ニャブリ 32試合11ゴール
何を言いたいか。見出しにもしたが、10点以上取らなければファンは認めてくれない。少なくとも自分は納得できない。
近年、ブレーメンがいい感じときは合わせて25点くらいに絡むアタッカー2人がいる、というイメージがある。去年のニャブリとクルーゼなんかはまさにその典型なのだが、今回の大迫勇也にはおそらくクルーゼとのホットライン形成が期待されているのだと思う。
上手いこといって15点とか取ったときには、当たり前だがプレミア行きやCLに絡むようなブンデス上位のクラブへの道が開けると思う。活躍したらけっこうすすぐにいなくなるので。
ぜひとも活躍して、このクラブの歴史に名を刻んでもらいたいし、多くの人にブレーメンを好きになってもらいたい。
最後に。ブレーメンの音楽隊は結局ブレーメンに到着できていない。それだけは覚えておいてほしい。
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