見出し画像

【浮体式洋上風力#1】風力事業者の中の人がニュースでは分からない洋上風力の知識をお伝えします。

本シリーズの趣旨

投稿がかなり空いてしまいましたが、今日から洋上風力(特に浮体式)についてこれまで学んだ識を共有していきたいと思います。

というのも、昨年に転職してから浮体式洋上風力に関するマーケット調査を実施しており、新聞やニュースでは出てこない有益な情報が蓄積されてきました。

日本ではようやく洋上風力の入札が始まったかと思えば、諸事情でどんどん遅れている様子…一方で欧州を中心に洋上風力はかなり普及が進んでいます。


こういった現状から、日本の立ち位置をより鮮明に理解し、洋上風力導入の機運が高まればという思いでエネルギー業界の中の人がマーケット調査した内容を共有したいと思います。



なぜ洋上風力の中でも浮体式が有力なのか

日本の一般海域における洋上風力発電所を建設・運営を可能とする法制度として、2019年4月に再エネ海域利用法が施行されました。

さらに、第6次エネルギー基本計画(2021年10月閣議決定)において、2030年までに10GW、2040年までに30GW~45GWとする政府の洋上風力発電の導入目標が設定されています。


当該基本計画において、経済波及効果が大きい洋上風力発電が、再生可能エネルギー主力電源化の切り札として位置づけられています。

このような期待がされる一方で、我が国の周辺海域は、沖合に向かって海底面が急激に深くなることから、着床式洋上風力発電に適した水深の浅い場所が限定されます。

従って、2040年の導入目標である30GW~45GWを達成するためには、浮体式洋上風力の導入が重要となります。



海外の動向は?

海外における浮体式洋上風力の開発の動向に目を向けると、水深による制約条件が少ない浮体式洋上風力が着床式洋上風力に替わる次の洋上風力発電技術として、具体的な取り組みが進みつつあります。

世界最大の洋上風力市場である欧州においても、北海および大西洋の海岸線は水深が深いことから、浮体式洋上風車のさらなる発展の可能性は大きいとみられます。

英国では2030年までに5GWの導入目標を掲げておりCeltic Sea(ケルト海)にて2035年までに4GWの導入を目指したリーシングラウンドを実施する予定となっています。(以下英文のリンクとなります)


また、スコットランドではCrown Estate, Scotlandが2022年1月にオークション(ScotWind)を実施し、総設備容量は約25GW(6海域:着床式洋上風力、10海域:浮体式洋上風力、1海域:着床式および浮体式の混合)でした。この内、15GWが浮体式洋上風プロジェクトに及びます。


米国では、既に2021年3月に、2030年までに洋上風力発電を30GWまで拡大する目標を掲げていますが、さらに2022年9月には、浮体式洋上風力発電を2035年までに15GW導入するという目標が掲げられました。


このように、欧州、米国では、非常に大きな導入目標のもとに、具体的な取り組みが進みつつあります。



まとめ


上記のように、海外では2030年頃に浮体式洋上風力発電が大きく普及する見込みで開発が進んでいる一方、日本では残念ながら着床式がようやく運開になる程度です。

2050年のカーボンニュートラル達成のためには浮体式洋上風力の導入は必要不可欠であり、日本の産業界全体で盛り上げていきたいですね。

私もエネルギー業界の一端で働く者として、少しでも貢献できるように頑張りたいと思います。



今後の投稿の予定

今後は以下の項目について登校する予定です。もしこの投稿を見ている方で何かリクエストがあれば、そちらを優先させていただきます。

  • 浮体基礎

  • 係留・アンカーシステム

  • これまでの浮体式洋上風力PJの紹介

  • 浮体基礎の技術開発動向

  • 浮体式のイノベーション技術

  • 浮体式のコスト

  • 浮体式開発のための事前調査

  • 浮体式のメンテナンス


ご意見等あればいつでもお待ちしております。



Ren


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?