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【徹底解説】レンタルビジネスの会計処理

新たなビジネスを立ち上げる際に避けて通れないのが、会計処理の検討です。 それはレンタルビジネスも例外ではありません。

むしろ一般に馴染みのないレンタルビジネスの会計処理の検討は、モノの流れが複雑なため、より難易度が高く、新規事業担当者のみならず、経理担当者泣かせともいえます。

検索しても具体的な事例がなかなか出てこないなど、事例に乏しいレンタビジネスの会計処理の検討は、会計の原理原則から考えることが、一見遠回りに見えて近道となるでしょう。

本コラムでは家電レンタルサービス「レンティオ」の会計処理の現役担当者がレンタルビジネスの会計処理について解説します。


レンタルビジネスのモノの流れ

レンタルビジネスは、販売ビジネスに比べると、モノの流れが複雑になります。

一般的な販売ビジネスでは、注文が入ったモノがお客様の元に出荷され、お届けまで終わればモノの流れは終わりです。 レンタルビジネスでは、モノは倉庫からお客様の元に出荷され、利用後は再び倉庫に戻り、メンテナンスを終えたら別のお客様の元に再び貸し出します。

また、途中からレンタル料金が未払いとなり、そのままモノが戻ってこないことも起こりえるほか、一定のレンタル期間後に所有権が移転する仕組みを取っている場合もあります。

レンタルビジネスのモノの動きは、一般的な販売ビジネスからとは大きく異なっていると言えます。 こうした既存の販売ビジネスとの勝手の違いは、原価計上に影響を及ぼし、様々な会計処理の違いとなってくるのです。

レンタルビジネスの収益計上

では、まず代表的な会計処理のうち、収益の会計処理について考えます。
ここでは「8月25日にTVを10万円でお客様に販売した場合」を例に挙げて、レンタルビジネスと一般的な商品販売でそれぞれの収益計上を解説します。

販売の収益計上

一般的な商品販売では、8月25日にTVをお客様に引き渡したとすると、その日に10万円の売上が計上できるでしょう。 A社とお客様との製品売買契約において、A社が製品をお客様に引き渡した時点で、A社の履行義務(製品の引渡義務)は果たされたので、その時点で収益を認識することになります。

レンタルの収益計上

一方でレンタルの場合、同じTVを8月25日~9月8日の2週間、1万円でレンタルした場合、8月に計上できる売上はいくらになるでしょうか?

「商品は8月25日に引き渡したのだから、8月25日に1万円の売上だろう」
「いやいや、レンタルは8月31日時点では完了していないのだから、8月の売上は0円ではないか?」
「終わっていないとはいえ、レンタル開始から8月31日までに7日間経過しているのだから、1,000円くらい計上してもいいんじゃないか?」

様々な考えはありますが、大事なことは、会計基準に沿った合理的なルールを社内で作成して、そのルールに則った処理を継続的に行うこと(毎回変わってはダメ)です。

ご参考までに、レンティオのレンタル収益の会計処理は、
「リース取引に関する会計基準」に基づいて、レンタル期間に応じた日割計算(1万×7/15日)で8月分の収益を認識しております。

収益認識の方法については、唯一正解というものはないため、各社で検討し、監査法人と協議の上決定する必要があるかと思います。

レンタルビジネスの原価計上

次に、原価計上についても解説していきます。
ここでは「メーカーA社がTVを5万円(税別)で製造し、お客様に10万円(税別)で販売するケース」で考えてみましょう。

販売の原価計上

TVは、販売時点で費用(売上原価)になります。販売時に売上を10万円計上、TVの原価(費用)5万円を対応させて計上し、利益は差引5万円になります。

また、TVの製造費用5万円は、TVの完成時点では貸借対照表上の製品(資産)に計上されます。資産を取り崩し原価に計上するのは販売時となります。

レンタルの原価計上

一方で、同じくメーカーのA社が5万円(税別)で製造したTVを月5千円(税別)でレンタルする場合はどうなるでしょうか。

レンタルされた製品はお客様に引き渡され、使用されますが、お客様のものになったわけではありません。あくまでA社の資産のままです。
ただ、レンタル品として使用されており、レンタル料の売上も計上されています。売上に対応する原価を計上する必要があります。これを「費用収益対応の原則」といいます。

では、具体的にいくら原価計上すればよいのでしょうか?

仮に、レンタルした時点で、販売と同様に資産を全額費用化してしまったらどうなるでしょうか。レンタル売上は、先ほどと異なり5千円、TVの原価が5万円で、差引4万5千円の赤字となり、なんとなく納得がいきません。

かといって、「赤字はイヤだから原価は100円にすれば。黒字だ」というのはダメです。「原価100円はやりすぎだから、原価4,000円にしました。売上5千円、費用4千円で利益千円。どう、それっぽいでしょう!」というのも同様です。結果だけ同じだとしても、適切なプロセスに従っていないものは認められません。

このように、原価がそのまま決められない場合は、社内で会計基準に合致した合理的なルールを作成して見積る必要があります。
見積りを行う際にはルールに則った処理を継続的に(毎回変わってはダメ)行う必要があります。

一例を上げると、このTVが3年間レンタルに使用されると考えられる場合、5万円を36カ月で減価償却することが考えられます。
この場合、5万円×(1/36)カ月=1,388円で、8月の費用は1,388円、利益は5,000-1,388=3,612円と計算されます。


TVという資産を耐用年数3年、償却方法は定額法、残存簿価1円で減価償却するという(会計基準に合致した)ルールに沿って償却費を計上するため、費用計上額に合理的な根拠があるということになります。

この費用の計算手続きについては、前回のコラム「レンタルビジネスの固定資産計上」で解説してありますのでご参照ください。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

レンタルビジネスの会計処理は、収益、費用の両面ともに製品販売と異なり、スパッと金額を決められないことがお分かりになったのではないでしょうか。
スパッと決められないということを言い換えると、収益計上も原価計上も見積りを行う必要があるということです。

見積りは外部のルールで処理方法が明示されているわけではないため、会計基準に沿った合理的なをルールを策定する必要があります。
その際に、立ち戻るのが会計上の原理原則であり、例えば費用収益対応に応じた償却方法、耐用年数などを選択することになります。

今回ご紹介した以外にも様々な論点がありますので、またご紹介できれればと思います。

なお、レンティオでは、メーカー様のドメインでレンタルサービスを展開いただけるシステム「Rentify(レンティファイ)」をリリースいたしました👏

本コラムをお読みいただき、当社サービスにご興味をお持ちいただけましたらご連絡を心よりお待ちしております。

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