元Webデザイナーが園芸店をオープンし10年が経つので誰かの役に立つように記しておく。
お店のURL:http://toky.jp
お店のInstagram:https://www.instagram.com/toky.jp/
TOKYという園芸店が10周年を迎えましたので、記念に、ということと、小売やサービス(あくまでも小規模に限るが)始められる方に、何か役に立てばと思って書きました。
ちなみに5年前に書いた記事がこちらです、よかったらどうぞ。
現在の店舗
5年前は東日本橋という場所の、雑居ビルに店舗を、月に4~6日営業スタイルでしたが、コロナ禍の中、園芸ブームが起こり、そこで蓄えた資金を元に日本橋の路面に店舗を構えることができました。
まさか10年も続くとは、と私を知っている人は内心思っているのではないでしょうか?勿論、20年目も目指して頑張ります。
タイトルにもあるように、元々はWebデザイナーでしたが、辞めてから10年近く経つと、Adobe製品のショートカットも忘れつつあります、それはそれで寂しいです(老化という説もある)
ブームは必ず沈静化する
ブームが終わりとか、終焉とか、そういうことではありません。
10年前に回りを見渡すと、作家物の鉢販売しているお店は皆無でしたが、現在は数えきれないほどの鉢屋さんが乱立しています。
誰でも、陶芸家が知り合いにいたり、屋号を作って陶器市に行けば、陶芸家と仕事をできる自体になったので、立ち位置によってはとてもいいことですし、そうでない場合もあります。
ただ、実店鋪というのはかなりハードルが高く、特に東京という地価の高額な地域でいうと、大手や企業の別部門、としてのショップは見かけるようになりましたが、個人店は本当に少ないと思います。
タイトルにもあるように、沈静化、という言葉がしっくりきます。
コロナ禍が終わり、皆が外出するようになると、インドア趣味である園芸は少し弱りを見せ、そこに更に、ロシアウクライナ問題や超円安などの状況が続き、余分な趣味である園芸にお金を落とす人が少なくなったと思います。
お店(ネットショップ)はとても増えたのに。
他ジャンルの商材を作っておく
予測も何もしていませんでしたが、資金に少し余裕があるときは、新しいことを始めるチャンスなのは言うまでもありませんが、大きく舵を切るような別サービスなどは経験上危険なのはわかっていましたので、当店では現在下記のような商材が存在しています。
現在園芸アイテムについで、売上が良いのがフィギアです。
何故フィギア?と思われた方はこちらを参照してください。
フィギアの中でも絶大な人気なのが土偶型のソフビになります。
余談ですが、人って「可愛いものが大好き」これはもう、絶対です。
かっこいいものよりも可愛いものの方が強いです(商材にもよりますが、人は可愛いものには弱い生き物)。
例えば、機動戦士ガンダムの中でも水陸両用のズゴックやアッガイが高い人気を博しているのはやはり、あの可愛らしいフォルムなんだと思います。
例えば、園芸系のアイテムの売れ行きが悪くても、他の商材でカバーできるようにしておけば、焦らなくてすみますよね。
瞬発力があって動きが早いものと最初は動きがいまいちでもすごくジワジワと売れるものを両方持っておくと、小売の奥深さが分かりますし、安心に繋がります。
二号店とか、フランチャイズなんて大きなことしなくても、一つのお店の中でも色々な商材を持っておけると思います、意外に。
上の円の図で言うと、アパレルとレンタルスペース以外には該当しませんが、他の3つの円で言うと、陶器製品が関係しています。
主軸の陶器鉢というところを軸にして商品展開すれば顧客にも受け入れられやすいし、筋も通ると思います(ソフビは陶器製のフィギアを落として割る人が続出したので制作しました)。
良い時もあれば、悪い時もある
この10年の中では勿論、ピンチと呼べるようなこともたくさんありました。
次月の陶芸家さんやメーカーさんへの支払いができないかも、なんてこともあり、そんな情けない理由で借り入れをしたこともありましたが、ブランディングをしっかりと行い、SNSと向き合ってマーケティング(そんなに難しいことしていない)すると時間はかかりますが、ファンは着実に増えます。
ただ、進んでいく中で『嘘が無いこと』は徹底するべきと思います。
同業他社で力が弱まっている所を見ると、やはりチートしたり、なんとなく怪しい動きをしている業者さんもあって、私達が気づくくらいですから、昨今のマニアックな、金銭事情に厳しい顧客はもっと早く気がつくでしょうし。
なので、嘘なく真面目にやっていく中では相当きついこともありますが、困ったときには日本政策金融公庫に駆け込めばいいんです。
よほど業績が真っ暗でなければ、ちゃんと返済計画や事業計画を作ればお金貸してくれますから。
独立して小売業、なんてお先真っ暗なイメージもありますが、真面目にやってればなんとかなります。ただ『そのサービスが心の底から好き』というのは大前提です。
裏切られても裏切らない
これもものすごく大事だと思います。
裏切るというと少し強く感じますが、手のひら返しや約束を反故にされることは割りとありますから(業種による)。
そんな中でも『自分たちだけは手のひら返さない』この気合やマインドは絶対に発言や雰囲気に出ますから、TOKYというブランドを絶大に信頼してくれている方々がいるのは、そういう誠実さを感じてくれていると思ってます。
顧客、外注さん、その全てに対して誠実であれ。
これは自分一人で運営していると難しいと思います。自分の自浄作用なんてあてにできないので、なので、社内に信頼できる、誠実さを軸に物事を考えてくれる人がいることはとても重要と思います。
プライドを捨てて、監視してもらいましょう。
接客の奥深さ
当店に来ていただく、何名かのお客様に言われたことがあります。
「いい感じに放っておいてくれるので落ち着いて商品が見れる」
これは、本当に最初から考えていました。
服屋さんなどに行って、店員さんがずっと話しかけてきたり、こちらをじっと見ていると、そのお店には行かなくなる経験を活かして、基本はこちらからは話しかけません。
ただ、入店・退店されるお客様にはしっかりとご挨拶する、などは絶対です。商品購入されなくても同様です、これを怠ると次回来店の確率が低くなると考えているからです。
そう言っても、シャイで質問できないお客様もいますので、悩まれていて、声かけてほしそうな方にはこちらからお声がけします。
程よい距離感の接客をするだけでリピーターは増えます。
極限まで臨時休業するべからず
お店に行ったら『本日は都合により臨時休業いたします』という張り紙を見てがっかりした経験は誰しもあると思います。
この経験をすると、お店の定休日や営業時間に対しての信用が損なわれます「あそこやってるか分からないから信頼できるあっちのお店に行ってみようか」となってしまいます。
気軽に臨時休業するお店は顧客の大切な時間を奪う可能性がある、という意識を持つべきです、そう考えたら、よほど極限の理由がない限り、臨時休業はしてはいけないと思います。
SNSをフル活用していて、臨時休業のお知らせをしても、見ていない顧客はたくさんいますので。
仕入れで力量が決まる
卸売商品を仕入れる場合、時間をかけ、細かく商品を選んで、少量だけ仕入れるということはあまりおすすめしません。
卸先は、売れるものもそうでないものも、色々取り揃えていることがほとんどなので、顧客と同じ目線でモノを選ばずに、狙っているものもそうでないものも含めて買ってあげると喜ばれます。
そんな余裕無い、というのは分かります。
でも、このサイクルを続けることで「こいつら気合入ってるな」と思ってくれる卸先が必ずいて、そうすると優先して良いものを卸してくれるようになることも少なくありません。
ただ、そういった優しさだけではいずれカモにされてしまう可能性もありますので、慎重さも必要な場合がありますが、相手の売りたくないもの(※1)を買った場合は特に、相手が売りたいものも買ってあげる、手持ちの資金と相談しながらギリギリを攻める勇気も必要です。
(※1)人気商品などは自分で販売したほうが利益率が高いので卸したくないのが本音。
現在ではなく、未来を考えて商品構成する
現在、というのは『現在の時流』と考えてもらえればと、今人気のある商材ですね。
他のショップも考えることは同じです、人気のあるもので構成しようとしますから、商品が被り、差別化がはかれなくなります。
ではどうやって、商品構成をするか、というと『先々にお客さんがほしくなりそうな商品』を意識する、そういう意識を常に鍛えておくことが重要と思います。
例えば当店ですと、園芸業界では少し前まで黒いゴツゴツした鉢が人気で主流でしたが、少しづつ明るめな色の、モダンな鉢が売れるようになってきています。
何故それが分かるかと言うと、そういう流れになると予測して、商品開発や仕入れを行っていたからです。
考えることは、業者も顧客も基本同じという法則があります(経験上あると思う)なので今ではなく未来を見据えた、今は売れ行きが悪くとも「三年後には受け入れられるはず」というような目で商品を選ぶと良いと思います。その間に潰れてしまっては元も子もないので、余剰資金と忍耐を蓄えてください。
未来に売れる商品構成にしておけば、焦って仕入れる必要もありません。
顧客に消費されてはいけない
矛盾があり、表現の仕方が難しいのですが、モノは消費されたいですが、想いは消費されたくありません。
商品を販売して、文化を提示していくのは顧客ではなく、売り手の私達です。
特に上記で書いた、売れ筋の商品だけで構成するなどは、常に今売れるものを仕入れ続け、それを繰り返すことで消耗し削られ、消費され尽くして終わり、なんてことになってしまいます。
お客様は神様です、が古い謳い文句なのは周知の事実ですが、顧客と売り手は対等です。消費されないように、顧客の常に先を行く攻めのスタイルでいなければいけない、と私達は考えます。
コンセプトで串刺しにする
店内でお客様が回遊し、ひとしきり見終えたところで「なるほどこういうことがやりたいのね」と思わせたら勝ちです。
商品構成、レイアウト、価格、接客、そういうものを一つの塊で見た場合に腑に落とすことができれば。
それを言葉だけでなく、空間全体で伝えられたら、その場で何も購買に繋がらなくても、もう一度来てくれます。誰だってコンセプトという筋が通っている方が好きなので、折角特別なモノを買うなら、そういうお店で買いたいはずです。
残るのは文化的な価値
時代の流れの中で、様々なブルーオーシャンな状態が生まれ、様々なブランドが生まれる中、生き残れるのは『文化的な価値を提示できるか』が鍵だと思っています。
流行っているから、売れるから、そういう考えの人が大半なはずですから、そういったブームが終わったあとでも、そのブームでファンになってくれた人たちに寄り添い、これから参入してくる人たちに対しても可能性を提示し続けること、それが文化的だと私は思っています。
今この瞬間を見ても、売れずに衰退していっている園芸店が散見されます。時代に、消費者に消費され、それで終わりではあまりにも悲しい。
次の時代にも引き継がれ、尚新しさを感じるようなモノを提供する、そんな気持ちが大事です。
最後に
これから新しいことにチャンレンジする人たちに向けて、10年も続けているから語れる立場にあるだろう、という想いで書いてみました。
一生は短い。
お互い悔いのないように生き抜きましょう!!
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