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宇宙産業、2040年に市場規模100兆円は本当か
昨今、特筆すべき成長をみせる宇宙ビジネスであるが、その成長のひとつの指標として「世界で2040年に市場規模が100兆円になると予測されている」というのがある。
どうしてそのように言えるのか、集めた情報の中から考えてみる。
誰が「100兆円」と言っているか
2022年1月14日付けの経済産業省製造産業局宇宙産業室「第1回宇宙産業プログラムに関する事業評価検討会 中間評価/終了評価 補足説明資料」によれば、「モルガン・スタンレーによると、宇宙ビジネス全体の市場規模は、2017年の37兆円から2040年までに100兆円規模になると予測されている。」とある。
また、2022年6月16日付けの「週刊 経団連タイムス 宇宙産業の動向と経産省の取り組み」の中では、「2040年の世界の宇宙産業の市場規模は、現在の約3倍の100兆円を超えると見込まれている。」との記述がある。
先日開催された「北海道宇宙サミット2022」の中でも同様の発言があったし、現在の宇宙産業従事者1万2千人も今後増えていくだろうと述べられていた。
主観だが、100兆円になるかどうかではなく100兆円にするといった、現場の覚悟がある。
現在の日本の状況
ここで、現在の日本の状況をおさらいしよう。
産業の全体像
社団法人 日本航空宇宙工業会「令和元年度宇宙産業データブック」によれば、現在の日本の宇宙産業は、
1.宇宙機器産業
2.宇宙利用サービス産業
3.宇宙関連民生機器産業
4.ユーザー産業群
から成っている。
1と2の合計は約1.2兆円の規模であり、政府は「宇宙基本計画(20年6月閣議決定)」で、2030年台早期にこれを倍増させる目標を掲げている。
世界のロケット打ち上げ回数
2021年の国別のロケット打ち上げ回数をみてみる。
1位 アメリカ 66回
2位 中国 49回
3位 ロシア 28回
4位 インド 9回
5位 欧州 6回
6位 日本 2回
日本はロケット先進国と比較して、大きく溝をあけられている状況だ。
日本の課題
日本が抱える課題もおおまかにまとめる。
①JAXAが主導する宇宙ステーションやH2Aロケットなどで一定の存在感を示すが、産業力向上には結びつかずに終わっている。それは競争力強化に必要な標準化や実績づくりをしてこなかった背景もある。
②宇宙空間は極限環境であるため宇宙機器の運用者は過去の打ち上げ実績を重視するが、欧米やロシア、中国やインドなどは政府調達を通じて打ち上げ実績を獲得している。一方で日本国内は恒常的な衛星調達が限られていることもあり、実績作りと標準化を行う機会が少ない。
今後の見通し
衛星利用は先進国・新興国問わずに拡大し、従来の通信・放送だけでなく、地球観測やデータ利用が拡大する。
具体的には、災害監視、環境観測、農林漁業、国土管理、資源探査、安全保障などが挙げられる。
日本も、
・衛星コンステレーション構築
・衛星データ利用
・スペースデブリ対策
で、その市場に先んじようとしている。
世界の様子
先にもある通り、日本としても宇宙産業の対する意気込みは感じられるが、その取り組みとして欧米は大きく先に行っているイメージである。
特に民間企業の宇宙産業への参入が顕著だ。
イーロン・マスク率いる「SpaceX」やジェフ・ベゾスの「Blue Origin」、ポール・アレンの「Stratolaunch」やリチャード・ブランソンの「Virgin Galactic」の活躍はすでにお聞き及びのことだろう。
すでに「衛星コンステレーション」プレーヤーとしての立場を築いているものもある。
2030年、2040年にむけて
文部科学省の2021年1月18日付け「第4回将来宇宙輸送ロードマップ検討会」資料によれば、「2030年にむけた宇宙市場セグメント別の動向と変化点」において次の様にまとめ、「今後10年間で宇宙市場の多様化と拡大が同時に起きていくことが予見される」と述べている。
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また、この資料では2040年の市場規模を波及効果も含めて「160兆円」と予測している。
まとめ
宇宙産業の拡大のためには、市場の裾野を広げていくことが重要
現在の日本各地にスペースポート(宇宙港)を建設しようという動きが活発化している。
宇宙港とは、ロケット発射場を中心として、その利用客や従業員の滞在したり生活するための施設や娯楽を含めて地域ぐるみの環境を整えようというものだ。
そこで販売されるお土産や、提供される食事、各種サービスも含めて宇宙産業と考えることで、その市場は拡大を加速できるだろう。
タイトルには「100兆円は本当か」と書いたが、もちろん実際に2040年にならなければ本当かどうかは分からない。
しかし、100兆円に達するロードマップはすでに描かれ、参入するプレーヤーも増加していることは事実だ。
ひと昔前には映画の中でしか目にしなかった光景が現実になっているのと同じように、今は絵空事のように思えることが現実になる未来も、そう遠くはないのかもしれない。