「北海道宇宙サミット2022」現地参加レポート
この記事は
2022年9月29日(木)、北海道は帯広市で「北海道宇宙サミット2022」が開催された。
堀江貴文氏らも登壇した本サミットは、現地参加者700人、オンラインも含めた合計参加者は4,700人という規模で行われ、国をあげて取り組んでいる宇宙ビジネスの過熱ぶり、関心の高さがうかがえた。
この記事では、そんな「北海道宇宙サミット2022」と、そのあとに開催された「MEET-UP」の現場の様子をご報告したい。
「北海道宇宙サミット2022」とは
「北海道宇宙サミット2022」とは、北海道大樹町、SPACE COTAN株式会社、
公益財団法人とかち財団、株式会社十勝毎日新聞社からなる「北海道宇宙サミット実行委員会」が主催する、宇宙ビジネスにフォーカスしたビジネスカンファレンスだ。2021年の初開催を皮切りに、2022年は2回目の開催となった。
入場
当日は見事な秋晴れで空気はカラッ乾燥し心地良いものの、荷物を持って歩けば少し汗ばむような陽気だった。
会場に着いたのは午前8時20分頃。受付開始までには少し余裕があったが、係員のはからいで受付を済ませ入場することができた。
入場一番、北海道大樹町に射場(ロケットを打ち上げる施設のこと)を構えるインターステラテクノロジズ社のロケットがホールに横たわっており、否が応でもこれから始まろうとしているカンファレンスの期待値が上昇する。
そのカンファレンス会場は縦長の空間でイスが等間隔にぎっしりと並べられ、収容人数は1,000人を超えるだろうと思えた。
私は最前列の席をとり、いよいよ開幕の時を迎えた。
カンファレンス
カンファレンスは、この「北海道宇宙サミット2022」のメインイベントであり、総勢22名の有識者による5つのセッションだ。時間も午前9時から午後5時半までの非常にボリューミーな内容となっている。
主な登壇者をご紹介したい。
SPACE COTAN株式会社 代表取締役社長兼CEO:小田切義憲氏
大樹町長:酒森正人氏
Our Stars株式会社 代表取締役社長/インターステラテクノロジズ株式会社 ファウンダー:堀江貴文氏
インターステラテクノロジズ株式会社 代表取締役社長:稲川貴大氏
一般社団法人Space Port Japan 代表理事:山崎直子氏
多く語られた宇宙ビジネスの中から、特に厳選して3つのテーマでレポートしたいと思う。
①宇宙の利活用の例
現在の日本の課題としてあるのは、高度経済成長期に建造されたインフラが更新時期を迎えているということである。
簡単に言えば道路や橋とかそういたものが古くなっているから新しくしないといけないということだ。
しかし、そういったものの点検や修繕、新設やその計画は莫大な時間とお金もかかる。そこで、それらの機能を空や宇宙へ上げてしまおうということだ。
現代の主たる移動手段の「自動車」は、基本的に舗装された道路が必要だ。逆に言えば、舗装された道路がなければ役に立たないし、好きなところにも行けない。いわば道路に移動させられている訳だが、その道路の整備は大変だということはご存じの通りだ。
そこで移動手段のメインを空や宇宙にしてしまえば、既存のインフラ整備を抑え、移動時間は短縮でき、道路に拘束されずに目的地まで行けるのである。
②輸送手段としてのロケットが必要
「宇宙を利用すれば、ありとあらゆる社会課題が解決できる。そのために地表のデータを収集する人工衛星をつくろう!」
これはよく耳にする話であるし、想像することも易しい。しかし、人工衛星がその役目を果たすには、宇宙にとどけなくてはならない。
現在の日本はその手段、つまり打ち上げ用のロケット自体が無いのである。打ち上げのサービスも回数も宇宙先進国と比べて圧倒的に少ない状況だ。
ロケットは使い方を変えればミサイルという兵器にもなる。その製造に必要な部品も、海外企業から購入となると各種の規制や社会情勢の変化で突然止まってしまう事態もありうる。
そう考えると、ロケットを自国内でイチからつくりあげることができるというのは非常に重要だ。
人工衛星は、打ち上げなければ意味が無い。
そのためにはもっと日本国内でのロケット製造と打ち上げ回数の増加を推し進めないといけないのである。
③宇宙と食糧生産
昨今、食糧問題もよく叫ばれる人類の課題となった。こと日本においては少子高齢化をはじめとした要因で、農業従事者の高齢化や減少が続いている。
農林水産業を維持しつつ資源の保護を行っていくには、やはり宇宙を利用することが重要となる。
衛星通信網を利用して遠隔地から設備を操作することはもちろん、生産物の生育具合からその肥料や餌やりは宇宙にある人工衛星の画像データを分析して効率的に行うのだ。
特に農業においては、地方によって農地の管理方法が全く違う。
北海道のように広大な土地あり、これまた広大な農地であれば、まさに人の目視が効かないところは空から一望したい。というのはよく分かる。
しかし、本州などではなかなかそうもいかず、細切れになった農地が市内に点在しているというのはよくある光景だ。
そんな細切れの農地を管理するために、設備の数は多くなり、農地間の移動の距離・頻度が共に増えて農業従事者の負担になっている。
これらの課題を宇宙からの観測とデータ分析で効率的に行うことで解決し、生産性の高い農業を成長させたい。
MEET-UP
「MEET-UP」はカンファレンスの終了後、申し込みのあった人同士での立食形式の交流会だ。
SPACE COTAN株式会社 小田切社長の挨拶から始まったMEET-UPは、酔いの勢いもあって各所で活発な名刺交換と熱心な意見交換がみられた。
カンファレンス中は意外と名刺交換をする機会が無かったため、名刺交換の主戦場はこのMEET-UPになったのだが、やはり登壇者は人気で、名刺交換をするまでにあちこちへ移動したり列にならんだりとその機会を狙った。
全体的に「ビジネスをしにきている」という雰囲気がバチバチにあり、仕事につながる話がトントン拍子に進んでいった。特に、具体的な課題を抱えている企業はその勢いも強く、すぐさま担当者をご紹介していただいたりして解決策を議論できたりした。
2時間という時間もあっという間に過ぎ、MEET-UPは酒森大樹町長の挨拶で幕を閉じた。
持ちきれないほどの充実感と程よい疲労感、これからのビジネスへの期待感とこの熱気を帯びた空間から去ることへの若干の寂しさを覚えながら、宿泊先へと向かうバスに乗り込んだ。
あとがき
宇宙は、宇宙そのものに限らずビジネスにおいても未知な部分が非常に多い。
この記事を読んでくださった方の中には、宇宙ビジネスに参入して良いのかどうかを迷っている方もおられるだろう。
実際に宇宙ビジネスが今後どの様に変化するかは分からない。
しかし、今回の「北海道宇宙サミット2022」を現地で参加した私自身の感想としては、宇宙はもう私たちのすぐそばにあり、無関係ではいられないということだ。そしてそこにビジネスチャンスを見いだした人たちは、そのビジネスの成功を覚悟している。
・・・私は、この未知なる課題とチャンスに満ちた宇宙業界に携われていることへの感謝を感じつつ、北海道帯広市をあとにした。
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