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第38節 水戸ホーリーホック戦
こんにちは、私です。
水戸戦は1-1という結果に。連勝は7で止まり、自動昇格圏が遠のく手痛いドローとなってしまいました。
相手が一人少なくなったことで難しい試合となってしまいました。相手が目線を揃え切れていない前半のうちに逆転したかったですね。
J2リーグ 第38節
ジェフユナイテッド千葉 1-1 水戸ホーリーホック
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・対策されたビルドアップと退場後
ジェフの保持時のウィークポイントはCBが相手を釣り出すアクションができないこと。これはレビューで散々書いてきたことで、引いた相手への対応は個人的にめちゃくちゃ懸念していました。
この試合での水戸はガッツリ引いたわけではありませんが、CBにある程度持たせるようなジェフのウィークを突く守備をしてきて、ジェフとしてはボールの前進に苦労していた印象です。
水戸の選手が一人少なくなってからは守備ブロックを広げるようなボールの回し方をしていて良かったです。前半のうちにもう一点取っておきたかったですね。
①水戸のジェフ対策
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水戸はジェフのCBが前を向いた状態の時はあまりプレスをかけに行かずに、田口や見木へのパスコースに蓋をし、持たせる形を取って、CBがSBへ出したところをスイッチに水戸は前プレを開始。水戸はジェフのストロングであるSBの展開力を封じ込め、ウィークであるCBのビルド能力を突いたジェフ対策を取ってきました。
ビルドアップを対策されたジェフはボールを前進させることに苦戦していた印象で、一列ずつラインを越えてゴール前に迫ることはできていませんでした。
ここで必要だったのはCBのアクション、運ぶドリブルで相手を釣り出すこと。
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図のようにCBが運んでいくことで相手を釣り出すことができ、塞がれていたボランチやアンカーへのパスコースを増やすことができます。もう片方のFWがアンカーを消しに来たら、逆サイドのCBから運べばライン突破をすることができます。
前半はCBの前にスペースがあるのにも関わらず、前線にロングボールを蹴ってしまうことが多く、少し淡泊な攻撃になってしまっていました。運んで引き付けてリリースを繰り返していくことで味方に時間とスペースを与えることができ、前進がしやすくなります。
小林監督の栃木戦のコメントを見る限り、CBの運ぶなどのアクションはチームの課題であると認識していて、今後改善する可能性が高いとは思います。実際にこの試合での佐々木は運んで相手をズラしてアンカーにパスを出すシーンが何度もありました。が、前半からもう少しそういったアクションを起こす回数を増やしたかったですね。
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上で書きましたが、前半は前線にロングボールを送るシーンが多かった印象です。水戸に蹴らされていたことも増えた要因であるとは思いますが、水戸の裏ケアが若干怪しさもあったのでここをラインブレークで突いていく狙いがあったのかなと思います。ただ、それを狙いすぎていて淡泊な攻撃になってしまっていました。下から繋いでいくこととロングボールでひっくり返すことをもう少し上手く使い分けていきたいですね。
特に14分の見木がロングボール前線に送ったシーンは勿体なかったように思います。
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見木は2トップの脇で大輔からフリーの状態でボールを受けると、運ばずに動き出していた呉屋にロングボールを蹴ってしまいました。このシーンはロングボールを蹴らずに運んでリリースをすればチャンスに繋がっていたように思います。
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見木がすぐにロングボールを蹴らずに運んで相手を引き付けることができていれば、ライン間の風間に繋ぐことができていたと思います。この位置で風間がボールを持てば、ラインブレークする田中や呉屋へのスルーパスであったり、逆サイドのドゥドゥへのサイドチェンジなどでチャンスを作り出すことができました。
このシーンも運ぶことが必要なシーンで、CBだけでなく、チーム全体で運んで相手を引き付けてからリリースすることを意識しなければいけません。
②退場後の攻撃の狙い
相手が一人少なくなってからは水戸が引いて守り、ジェフが押し込む形に。退場後は相手をワイドに広げてその内側を使う狙いがあったように思います。
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上の図のように右サイドでは田中、左サイドではドゥドゥもしくは日高の幅取り役に預けて、相手のSBを釣り出し、その内側のニアゾーンを突いていくような攻撃ができていたのはとても良かったと思います。
実際に田中のゴールは相手ブロックを外に広げて中を使うということができていました。
#10月8日#第38節 #水戸ホーリーホック 戦
— ジェフユナイテッド市原・千葉(公式) (@jef_united) October 8, 2023
ゴールシーンをPLAYBACK🎥
39 分#日高大 選手 #見木友哉 選手の左ポケットでのワンツー
抜け出た見木選手のふわりとした最高のパスを#田中和樹 選手が左足で
Jリーグ初ゴール⚽️🎉
DAZN視聴💁♀️https://t.co/JtKiOqCnM1 #jefunited#今こそWINBYALL2023 pic.twitter.com/2rjCart4Ev
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佐々木→ドゥドゥで相手のブロックを外に広げます。この時に日高がハーフレーンに入って引き出そうとしたことで相手SHをサイドに出させず内側に留めることができました。
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ドゥドゥに入ったことで相手SBを釣り出し、その内側のニアゾーンのエリアを日高が狙っています。
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ドゥドゥ→見木で日高とドゥドゥの中に入っていく動きが被りますが、見木がサイドに運んでカバー。外→中→外のワンツーで崩して、クロスから田中が決めました。
こうしたサイドに広げて内側を使うという攻撃が前半はできていて良かったです。前半のうちに逆転したかった…。
・苦戦した5-3-1のブロック
後半は水戸が5バックに変更し、ゴール前を固めてきたことでなかなかゴールに迫ることができず苦戦してしまいました。相手が一人少ないとはいえ、ここまでガチガチにブロックを組んで引かれると崩すのは難しいです。遠目からミドルシュートを打ったり、サイドのユニットで旋回をしたり、3センターの脇を起点としたりと工夫はできていました。が、もう少しやりようはあったのかなと個人的には思っています。
①3センターの脇を使う「振って振って」の攻撃
相手の5-3-1ブロックを崩して得点を取るということはできませんでしたが、3センターの脇を使って振って振っての攻撃ができていたのは良かったです。
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水戸は図のような5-3-1のブロックで割り切った守備をしてきました。
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5-3-1のブロックに対して使いたいエリアは3センターの脇!ここのスペースを起点にゴールに迫っていきたいです。実際にジェフはこのスペースを使ったサイドに振ることを繰り返すボール保持ができていました。
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3センター脇でボールを持つと3センターはスライド、さらに逆サイドに振るとまた3センターはスライドします。これを繰り返すと3センターの選手たちにスライドで運動量を消費させることができます。
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このスライド地獄を強いるといずれ運動量が落ち、スライドに遅れが出ます。スライドが遅れれば図のように中央にパスコースが生まれ、チャンスを作り出すことができます。
引いたブロックを相手にすると我慢できずに、狭いエリアに縦パスを入れて受け手がロストし、カウンターを受けてしまうということは日本のチームではよくあること。しかし、この試合のジェフはそうしたシーンが少なく、カウンターを受けたのも終盤の一度だけでした。むやみに縦パスを入れずに相手を揺さぶる攻撃ができていたのは良かったです。
また、後半は佐々木がよく効いていました。少し運んで相手のFWをズラして田口にパスを出したり、4バック時は3バック脇へ、3バック時は大外まで顔を出して攻撃参加から質の高いクロスを送ったりとチャンス構築に貢献していました。
②敵陣深くへの侵入とDFの目線を変えるボール
後半は水戸のブロックを崩すことができませんでしたが、攻撃を工夫することはできていました。ただ、もう少し敵陣深くに侵入すること、DFの目線を変えるようなボールが必要でした。
上で述べたように振って振っての攻撃ができていましたが、振りの幅が足りない、もう少し大外サイド深くに侵入してほしかったなと思いました。また、クロスもDFラインの手前からでなく、サイドをえぐった深い位置からのボールをもっと上げたかったですね。
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後半は3センターの脇からのクロスなどが多く、3センターの脇はよく使えていたとは思いますが、サイド深くへの侵入、サイド深くからのクロスは少なかった。
DFラインの手前からのクロスだとDFはマークとボールを視野に入れやすく、目線を変えずに跳ね返すことができます。ファー側でDFを越えるだと当然目線は変わりますが、後半の水戸のラインは低く、そういったボールは送ることができませんでした。3センター脇、DFラインの手前からでも、佐々木や日高などが質の高いボールを送っていましたが、得点には繋がらず。
一方で、サイド深くからのクロスだとDFはマークとボール両方を視野に入れにくく、飛ばしたいところに正確にクリアすることは難しい。また、サイド深くまで侵入すると相手の中盤もクロス対応によって吸収されるため、こぼれ球を拾いやすく、2次攻撃に繋げやすくなります。実際に後半の田口がミドルシュートを打ったシーンはドゥドゥ・日高のコンビネーションでサイドをえぐって、深い位置からクロスを上げたことから生まれました。
さらに、特にサイド深くからのボールをファーで折り返すようなクロスは相手DFの目線が大きく変わるためとても効果的になります。ファーを狙うクロスももっと意識してほしかったですね。
サイド深い位置への侵入はDFの目線を変えるクロスだけでなく、揺さぶる攻撃にも効果をもたらします。
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サイド深くまで侵入していくことで守備ブロックもそれに合わせて全体でスライド。
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サイド深くまで侵入しての揺さぶりは3センター脇のエリアまでの揺さぶりと比べて、相手の守備ブロックのスライドの幅を大きくすることができます。
上で書いたことと重複しますが、この試合の後半のジェフは3センター脇は使えていましたが、サイド深くまでえぐっていくことは少なく、相手のブロックを大きくスライドさせることはあまりできていなかったと思います。もっとサイド深くに侵入していくことが必要でした。
では、何故サイド深くの侵入が少なかったのか。この原因は…
・幅取り役問題
・サイドのユニット問題、突破型(椿・西堂)不在
にあると思います。
右の幅取り役は田中、左の幅取り役はドゥドゥもしくは日高が担っています。ただ、ジェフの選手は攻撃時結構流動的に動くため、幅取り役が内側に入っていくこともあります。ここで生じるのが幅取り役不在問題です。実際にこの試合でも後半だけでなく、試合全体を通して起こっていました。
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中盤の選手がボールを持った時に幅を取っている選手が内側に入ってボールを受けようとすることが多い。そこに出せずにSBなどへと迂回した時にサイドへのパスコースがなくなってしまうという現象がよく起こっていた印象です。この内側に入っていく動きによってサイドの高い位置で張る選手がいなくなるため、サイド深くまで侵入する回数が少なかった。後半、中央は固められていましたし、幅取り役はしっかりとサイドの高い位置で構えていた方が良かったように思います。
また、この試合の後半はサイドで打開できる選手が欲しかったですね。椿や西堂などのドリブルで剥がせる選手が途中から入れば、サイドの深い位置まで侵入できて、質的数的な優位性も取れますし、サイドで時間を作ることもできます。2人のような選手がいれば振って振っての攻撃ももっと機能したように思います。
・最後に
相手が一人少なくなったことで難しい展開になってしまいましたが、前半から対策されており結構苦戦した印象を受けました。失点もミスからによるもので勿体なかったです。前半のうちに逆転していれば後半はもっと楽な試合展開になったでしょうし、悔いの残る一戦となりました。
次はヴェルディ戦。少しでも上の順位へ行くためには負けられない一戦ですし、ここを勝って自動昇格への望みを繋いでほしいですね。