第21節 いわきFC戦
こんにちは、私です。
いわき戦はスコアレスドローとなり、連敗を3でストップしました。
4失点を喫した前節水戸戦で欠けていた球際でのバトルや走り負けないことなどの当たり前の部分を、フィジカルを前面に押し出しタフに戦ってくるいわきを相手に表現できていたことは良かったと思います。内容的にも優位に試合を運び、被ゴール期待値は0.08に抑えほとんどチャンスを作らせませんでした。だからこそ勝点3が欲しかったゲームだと思いますし、ゴールの枠に当たるシーンが4，5回ほどありましたが、これがゴールに入るのが上位にいる、昇格するチームです。選手は打率（精度）を高め、監督は打席（チャンス数）を増やすことが求められます。
最終ラインから1列目を越えることは安定してできるようになってきました。この試合ではニアゾーンへの侵入の狙いが感じ取れたのでそこは良かったですが、これからはゴールを増やしていくためにもアタッキングサードでの崩しのバリエーション・チームの原則を増やし、チームに落とし込んでいくことが求められます。
J2リーグ 第21節
いわきFC 0－0 ジェフユナイテッド千葉
・ニアゾーンへの侵入と攻撃の課題
試合序盤から大外でボールを持った選手を内側から追い越し、ニアゾーンを突く狙いが感じ取れました。大型FWがいないですし、FWのオフザボールを活かすためにもこういった攻撃は狙っていきたいですね。
ジェフの攻撃はまず相手のDFラインの背後を突くということを優先していますが、それを意識してか結果的に攻め急いでいるような印象を受けます。もう少し攻撃のスピードを落として、ボールを大事にしながらゴールに迫りたいところ。あとは小森や呉屋に入ったところのサポート不足や受け手がしんどくなる縦パスを出してロストするシーンも気になりました。
①ニアゾーン侵入と揺さぶる意識
この試合は直近の試合よりもニアゾーンを突くという意識が高かったように思います。試合序盤からボールを持った大外の選手を内側から追い越してニアゾーンへと侵入するシーンが見られました。
特に日高に関しては上の図のようにインナーラップからニアゾーンへ侵入していくプレーが多かった。右サイドも同様に田中や髙橋が内側から追い越してクロスを上げるシーンが試合序盤から見られました。
このニアゾーンでは相手DFがボールウォッチャーになりやすく、グラウンダーのクロスが通りやすい。また、このエリアはシュートも狙うことができます。大型FWがおらず、オフザボールを強みにしているFWがいるジェフにとってはニアゾーンを突く攻撃を増やしていくべきです。この試合はこのエリアを狙う意識が感じ取れたのは良かったです。
ニアゾーンを突いてチャンスを生み出していくには揺さぶることがとても重要になってきます。
勿論、上の図ほど単純なことではありませんが、揺さぶってを繰り返せばチャンスに繋がりやすいスペースが空く可能性がある。実際に相手のクロスボールを拾ってからの展開ではありましたが、15分のビルドアップでは揺さぶってから日高がニアゾーンへと侵入し、クロスを上げるシーンがありました。サイドが詰まった状態だと当然ニアゾーンも埋められてしまいますし、ダメだったら戻して逆サイドに展開というのを繰り返さなければスペースは空きません。ジェフは揺さぶれるようにはなってきましたが、相手ブロックが組まれた状態ですぐにクロスを放ってしまうシーンもあるのでもう少し我慢強く揺さぶれるようになりたいですね。
②攻撃の最優先と攻め急ぎ感
ジェフは攻撃において相手のDFラインの背後を突くことを最優先としています。実際に相手のSB裏を突くシーンやDFラインと駆け引きする小森にロングボールを入れるシーンは多く見られました。こういう狙いがあるからこそソロモンはレンタルで出され、呉屋を獲得したのだと思います。
38分のシーンでは日高がSB裏を突いて、チャンスを生み出しました。
日高がサイド裏を突いて、内側で椿のマークについていた相手のSBを引き付け、ワンタッチでフリーになった椿へ。椿はフェイントで相手のCBを交わして、シュートを打ちますが、シュートは相手GKの正面に飛んでしまいました。少しだけ足下に入り過ぎましたかね、巻いて逆サイドに打つイメージだったと思いますが、これは決めてほしかったです…。
ただ、背後を突くという最優先事項があるからこそ生まれたチャンスだと思いますし、シンプルですが過程は良かったです。
他にも図のように相手DFと駆け引きする小森にロングボールを出すシーンも多く、相手DFの背後を突くということを攻撃の最優先事項としていることが読み取れます。
ただ、ジェフは相手のDFラインの背後を突くということを意識しすぎていてロングボールが多くなり、攻撃がたんぱくになってしまっているような印象です。また、攻め急いでしまっているようにも見えます。勿論、相手DFラインの背後が空いているならそこを狙った方が得点を奪う確率は高いですし、効率も良い。この攻撃の優先順位のつけ方は間違っていないと思います。しかし、そこを狙いすぎるのは良くはない。背後を取りにくい状況でロングボールを蹴ってしまうとボールロストしやすく、カウンターを受けるリスクも高まります。
例えば、図のような相手のDFラインが揃っていて引き気味かつセカンドボールを回収できるような立ち位置を取れていない状況でロングボールを蹴ってしまうと、ボールロストしてしまいます。ロングボールを蹴るのなら相手＋自分たちの立ち位置を考えなければいけません。
縦に速く攻める、テンポよく攻撃するなどよく言われますが、速く攻めることでプレーの難易度が高まりますし、味方に時間を与えるためにもゆっくりプレーすることも大事です。スピードを落として味方に時間を与えること、相手を引き付けながらプレーして味方にスペースを与えることをチーム全体で意識しなければいけません。
ジェフは縦に急ぐ傾向にあり、それが結果的に前線の選手の孤立やボールロストを生み出してしまっているように思います。状況に応じて裏を突くのか、繋いでゴールに迫るのかといった判断の質をチーム全体で高めていくことが求められます。
③FWへのサポートと縦パス
小森は陣地回復やスローインなどでターゲットになることが多いですが、味方のサポートが遠く、孤立してボールロストしてしまうシーンが目立ちました。
小森に当てるのならすぐ近くでサポートをする選手が必要になります。見木が中盤のタスクをやって小森と遠いことも多かったので、こういったサッカーをするのであれば、修正が必要です。
ただ、縦につけるシーンが多く、それを小森がキープすることが多かったですが、難易度を高いプレーを選択してしまっているように思います。
勿論、スペースがあって余裕があるかつ落としを受ける選手がいるのであれば縦パスを入れても良いと思いますが、図のように縦パスを入れると相手に寄せられやすく、ゴールに背を向けているため、ゴールに直結するようなプレーも難しくなります。また、ターンをするにしても180度のターンとなり難易度が高いプレーとなります。このような縦パスはより一層受け手であるFWの質が求められてしまいます。
ボールホルダーの斜め前に立ち位置を取ることでゴールに背を向けずに半身の状態から前を向くことができます。180度のターンよりも90度でターンした方が難易度が低いですし、ボールホルダーの正面よりも斜め前に立つことを意識してほしいです。
・選手起用のよる収穫
髙橋がSBで起用されましたが、ボール保持で効いていましたし非保持時もしっかりとSBの仕事をできていて良かったです。相手のレベルが高まった時にどうなるかは未知数ですが、今後もSB起用で見てみたいです。
佐々木や田口は久しぶりのスタメン起用となり、試合勘のところで不安でしたが、ともにボール保持で効いていて良かったですね。2人ともミスでボールロストするシーンも何度かありましたが、コンディションがさらに上がってくれば、もっと安定感が増してくると思います。特に左CBに左利きの佐々木を置けたことで後ろからの繋ぎでスムーズさが増した印象です。
①髙橋のSB起用
髙橋のSB起用は今後も見てみたいなと思いました。いわきのWGの質が高かったわけではなかったですが、守備では危ないシーンを作らせず、対峙する選手に仕事をさせませんでした。攻撃に関しては繋ぎに安定感があり、内側へダイアゴナルに入っていってファールを貰う場面もありました。
単純に中盤の選手なので今まで右SBで起用されていた西久保や松田よりも内側でのプレーに安定感があるのはめちゃくちゃ大きいと思います。また、両足使えますし、中に入っていくような意識も高く、ハーフレーンに入ってボールの回りやすい立ち位置を取れることが多かったのも良かったです。
髙橋がSBで中盤的な働きをすることで相手のSHを中に絞らせることができ、サイドでの1vs1を作りやすくなります。また、中盤の選手はDFの選手よりも足下が上手いのでハーフレーンに入ってボールを受けてもうまく捌けるため、ビルドアップを安定させることができます。
ただ、CBがボールを持った時に距離が遠すぎてしまうことが何度かあったのでそれは修正する必要があります。CB－SB間が遠すぎると効果的に揺さぶれませんし、ボールロストした時に即時奪回しにくくなってしまいます。大輔の位置を見ながら立ち位置を調整しなければいけません。
こういった修正点はありましたが、攻撃で起点となるシーンも多く、髙橋が右SBで起用されたことでビルドアップも安定していました。相手が強化されたときの守備面については未知数ですが、今後もSBで見てみたいです。
②佐々木起用の効果と運ぶドリブル
佐々木は約1年ぶりのスタメン起用となり、試合勘のところで不安でしたが、落ち着いてプレーできていたと思います。
佐々木の起用で左サイドにつけるパスの質が高まることが期待されます。地味なことですがここのパスがズレてしまうとWGの選手がスピードに乗って仕掛けられませんし、ライン突破もできません。左サイドにつけるパスは左利きの選手のほうがスムーズに行えますし、左CBに左利きを起用することはビルドアップを考えると結構大事になってきます。WGが前を向いて仕掛けるためにも、スムーズにライン突破するためにもこのパスの質が高まるのはとっても重要です。大輔も試合を重ねるごとに上手くなってはいましたが、やはり左利きである佐々木の方がこのパスには安定感があります。
また、佐々木の強みはキック精度ですが、図のようなDFラインの背後を突く小森へのロングボールや逆サイドへのサイドチェンジで質の高いボールを蹴ることができるため、相手DFラインの背後を突くということを最優先にしているチームコンセプトにマッチしています。佐々木も相手が強化されたときの守備に関しては不安が残りますが、攻撃面・ビルドアップを考えると大輔右CB、佐々木左CBのコンビがベストのように思いました。
さらに38分に運んで相手2枚を剥がしていたシーンは良かったと思います。寄せてきた相手に対して正対して逆を突き、もう一枚もフェイントをいれて交わしてサイドチェンジ。佐々木が2枚を引き付け、剥がしたことで受けた田中に時間とスペースが生まれました。こういったプレーを普通に、当たり前にすることができればスタメンは堅いのかなと思います。このような運ぶドリブルを増やしていきたいですね。
・最後に
内容的には選手起用もハマっていて良かったです。だからこそ勝てなかったのが勿体なかったですし、精度を高めていかなければいけません。ただ、決定的なチャンスを作っていくためにはもっともっと工夫していかなければいけません。ニアゾーンを意識できていたのはとても良かったですが、相手の背後を突くのも状況を見て判断する必要があり、裏を狙いすぎ、攻め急いでしまっている印象も受けます。背後を突くのか、繋ぐのかという判断の質をチーム全体で高めていくことが求められます。相手の一列目を越えることであったり、揺さぶることなど、徐々にできることは増えてるので、後半戦では前半戦で出た課題をクリアしていき結果に拘っていきたいですね。