月があくびをした
毛先を唇に当て 虹色の月のモールス信号を書き写す
空に滲む光の許可を得て
左右が逆なのではない 逆になっているのは色である
つまり向こう側が透けて見えるのだ
月を食べる
潤いなき肉に水を注ぐかのように 遠くの梟も夜に月を食べるだろうか
それならば拡がる羽根の裾は 長くなければならない
春の舞を舞うには 肝に銘じることがある
ソナタの音は聞こえているか
月は言った
水を飲み干してしまった火の精は バラのトゲが嫌い
知ってた? 火の影の光
未知が呼んでいるの 彼らにそう伝えて
囁く声は森の記憶の 遠吠えの幻を映すからと
そこは深海の底
なのか?
アメジスト紫の深淵 遙かなる赤は印を添えて天に向かって咆哮する
沖へ誘う霧を避けて
由来の辿る道 源流の水滴る
大いなるカサブランカのように
かの花は陽に揺れて 彩なし綾なす光と戯れる
噂をし合う声を漏らし すると影が長くなり始める
長くなったらお家に帰らなくっちゃ
そう言われたの
枕に子どもの遊び声が響き始めたら
その時は……
その時は?
タイトルを