四季報写経200社達成!少しずつ見えてきた企業の本質と内部監査への新たな視点の発見
今年7月末から取り組んできた四季報写経がついに200社に到達した。当初は2024年の新規上場企業を中心に進め、その後、四季報の冒頭から時価総額500億円以上の企業を選んで写経を続けてきた。目標は1000社。まだ全業種を網羅するには至っていないものの、この取り組みを通じて、企業分析と内部監査の双方において、新たな気づきと学びを得ることができた。
写経を重ねるごとに、企業への理解は確実に深まっていった。私たちは日常的に様々な企業名を耳にするが、その実態について、どれだけ正確に理解しているだろうか。例えば、ある製造業の企業は、一般的には特定の製品で知られているが、実際には多角的な事業展開を行っており、新規事業が急成長を遂げていることを知った。また、サービス業の企業では、表面的には競合が多い市場に見えて、実は独自の技術やノウハウによって、高い参入障壁を築いていることが分かった。
特に興味深かったのは、企業同士の意外なつながりの発見だ。ある中堅企業が、実は業界大手の重要な子会社であったり、複数の企業が緩やかな企業連合を形成していたりと、四季報の数字の向こう側に、複雑な企業間関係が浮かび上がってきた。これらの発見は、単なる興味深い事実以上の意味を持つ。なぜなら、こうした関係性の理解は、内部監査において重要な視点となるからだ。
内部監査の本質的な役割は、組織の経営目標達成を支援することにある。その中で、企業の事業構造や戦略を深く理解することは不可欠だ。四季報写経を通じて得られる知見は、まさにこの点で大きな価値を持つ。例えば、ある業界で多くの企業がデジタル化への投資を加速させている状況を把握することで、自社の取り組みの妥当性や、潜在的なリスクを評価する際の重要な参照点となる。
また、財務データの詳細な分析は、内部統制の実効性を評価する上で重要な示唆を与えてくれる。収益構造や資産効率の業界標準を知ることで、自社の数値が持つ意味をより正確に理解できるようになった。例えば、売上高利益率が業界平均を大きく下回る場合、そこには何らかの構造的な課題が潜んでいる可能性がある。あるいは、運転資本回転率が著しく低い場合、資金管理体制の見直しが必要かもしれない。
特筆すべきは、四季報写経がリスク評価能力の向上に大きく寄与している点だ。様々な企業の事例を学ぶことで、潜在的なリスク要因への感度が高まり、より的確な監査計画の立案が可能になった。例えば、急速な事業拡大を進める企業の事例からは、成長に伴うリスクの種類と、それに対する統制の重要性を学ぶことができた。
さらに、企業のガバナンス体制についても、新たな視点を得ることができた。各社の有価証券報告書と照らし合わせながら四季報を読み込むことで、形式的なガバナンス体制の背後にある実質的な課題が見えてくる。これは、内部監査において経営陣に提言を行う際の重要な視座となる。
この200社の写経を通じて、改めて感じたのは、内部監査人には幅広い視野と深い洞察力が求められるということだ。単に規程や手続きの遵守状況を確認するだけでなく、企業の持続的な成長に貢献する存在として、常に新しい知見を吸収し続ける必要がある。
四季報写経は、そのための効果的な手段の一つとなっている。今後も継続的に取り組むことで、さらなる知見の蓄積を図りたい。そして、それらの学びを実際の監査活動に活かし、組織の健全な発展に貢献していきたいと考えている。
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