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「保有」と「投資」
昨日つくった記事です。
この記事には「投資している期間が長ければ長いほどいいんだ、それが望ましい」という風に読めてしまうかもしれません。しかし、そういうわけでも無いよ、ということを書いてみます。
東京証券取引所さんの取り組みでとても素晴らしいものがあります。
企業価値向上表彰 です。
東証では、優れた経営意識と確かな経営の仕組みを備え、持続的な企業価値向上を実現しているエクセレントカンパニーの実践事例の紹介を通じて、日本の上場会社の企業価値向上や資本コストに対する認識をより一層向上させ、個々の上場会社がさらなる成長に踏み出すきっかけにしてほしいとの想いを込め、2012年から「企業価値向上表彰」を実施するなど、上場会社における「企業価値向上経営」の取組みを後押ししています。
コロナ禍により2019年度を最後に企業価値向上表彰は休止状態にあるようです。表彰のイベントだけではなく企業価値向上をテーマにしたイベントも催されていました。投資家にとっても非常に参考になる表彰結果や資料がこのページには沢山あります。
貴重な資料の中の一つに「「上場会社と投資家の 建設的な対話のベストプラクティス」 講義録 があります。2017年1月に催された企業価値向上経営セミナーの講義録です。このイベントにご登壇された投資家のお二人、みさき投資・中神康議さん、いちごアセットマネジメント・吉田憲一郎さんのパネルディスカッションの記録が26ページ以降に載せられています。これが非常に参考になりました。
中神さんのコメントです。
いわゆるパッシブ投資家はずっと保有しているわけです。では、そうした投資家を長期投資家と呼ぶのかというと、私は違うのではないかと思います。これは単なる中長期で「保有」しているということに過ぎません。
どんなに長い期間、株式を持っていたとしても、単に持っているだけなら「保有」ですよ、それって「投資」と呼べる行為、行動ですかね?って。
パッシブですから”受動的保有”とも表現できるものと思います。中神さんの考えをベースにすると”能動的保有”こそが「投資」になりますね。長く保有すること、それそのものはポイントではないってことです。
簡単には変わらない会社の絶対価値に対して、株価は色々な人たちの思惑で上下するので、私どもが想定する絶対価値と比較して価格が下がれば大喜びで買いますし、価格が上がり過ぎたら保有を減らします。つまり、相対比較をするのではなくて、会社の絶対価値を計算して、それと今の株価を比較して投資をするということです。
自らの調査等で絶対(企業)価値を探究し、それを基に判断する。
これが「投資」。
ベイリー・ギフォードの ACTUAL INVESTING にも通じる考え方だと感じます。
私たちがつくるのはポートフォリオではない、(投資先との)関係だ。
って書かれてますね、シビれます。
「投資」において、最重要視されているのが「企業価値」。それが持続的に維持、向上していくか。そこなんだ、というのがお二人のコメントから伝わってきます。
吉田さん
配当も含めた株式のリターンは、20 年位の期間で見れば ROE と連動しますので、バフェット氏は、アメックスやコカ・コーラやなど ROE が 20~30%の銘柄、あるいはそれ以上にROE が高い IBM のような企業をひたすら持ち続けることで成功してきました。バフェット氏の投資のスタイルは理想ですが、われわれ『いちご』では、現状 4%の ROE でも、それが毎年 0.5 ポイントずつ上昇していけば、ずっと保有させていただく方針です。そして中長期的に ROE が 12~13%以上を継続的に維持できる会社であれば、永遠に保有してもいいと思っています。
ROE、それが持続的に維持されること、じわじわとでも向上することを指摘されています。投資信託を保有する場合でも、その投資の果実の源泉はそこで保有している会社の株式です。ですから、その会社のROEがどうなのか、どうなっていくか、は結果に大きく影響するはずです。その数字が「複利」を実現してくれるか、またどのくらいの「複利」になるのか、を決めているものと推測されます。
中神さん
われわれが見たいのは、究極的には、この会社は持続的に価値が上がる会社なのかというところです。
その可能性を探る際の材料として、有価証券報告書等の資料の重要性を示されているのも印象的です。
この会社の競争優位の源泉はどこにあって、絶対価値はいくらなのだろうかというのを、一生懸命理解をしようとしているのです。
投資信託でいうと、月次レポート等の発信において、投資先、投資候補先の会社について企業価値を理解しよう、把握しよう、突き止めよう、そうした姿勢が文章等から感じられるか、に僕は注目しています。
企業価値を探究するファンド に僕は「投資」したいです。単なる「保有」ではなく。つまり、投資先の顔ぶれ、メンバーを把握して、ファンドマネジャーが企業価値を理解しよう、把握しよう、突き止めよう、その姿勢を貫いているか、を見つめていたい、ってことです。
「保有」と「投資」とは違う。
僕もそう思います。
https://www.jpx.co.jp/equities/listed-co/award/nlsgeu000002dzl5-att/20170123_lecture_report.pdf
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