キャピタルアロケーション ー どんな会社、どんな業種のオーナーなのか? #1
新しいマガジンをつくりました。
今回が第1号です。
以前、こんな定点観測を毎月行っていました。
先進国株式、新興国株式の株価指数に連動するインデックスファンド、TOPIXや日経株価指数に連動するETFの舞月末の上位の投資先を定点観測していました。
2015年12月末時点を最後に更新をやめてしまいました。
どうしてやめちゃったのでしょうか。多分、インデックスファンドへの関心が日々、減退していたからなのでしょう。その後、2017年にインデックスファンドを新たに買い付けることはやめちゃいました。将来のことは分かりませんが、再開することはまず無いと思います(今も先進国株式の株価指数に連動するファンド等、インデックスファンドは継続保有しています)。
インデックスファンドを追加で買う意思はゼロなんです。が、インデックスファンドを保有することがどんなキャピタルアロケーションになっているか、について最近、関心が高まってきました。端的に言うと、インデックスファンドの投資先の定点観測は続けておけば良かった、残念なことをしてしまった、ってことなんです。
インデックスファンドを買います。そうすると、ファンドを通じて、対象となる株式指数を構成する会社の株式を買い付けることが普通です。つまり、それらの会社のオーナーになるということですね。言い換えると、自分の資本をその会社に割り当てている、ちょっとオーバーな表現かもしれないけれど、その会社の事業の一部(非常に僅かな持分とはいえ)を「買収」している、とも言えるかもしれません。
インデックスファンドを買ったり、保有したりすることで、どんな会社、どんな業種を「買収」しているのか、それが時間とともにどんな変化をしていくのか、定点観測し続けてみると、何年後、何十年後に見返した際に面白いことになるんじゃないか!って考えました。これがこのマガジン開始のきっかけ、理由です。
1. TOPIX
このETFのポートフォリオ情報を基に作成したのがこちらの表です。
黄色で塗った会社が30社のうち、19社あります。
黄色で塗った理由、お分かりになりますか?
実は、このデータは2018年7月末、2019年7月末、2020年7月末も持っていました。黄色で塗った会社、19社は2018年7月末から4年連続で、トップ30社に居る会社です。
では、逆に2018年7月末、2019年7月末、2020年7月末、この3回で一度もトップ30に入ったことが無かった会社は何社あったとご想像されますか?
答えは3社です。
三井物産、富士通、デンソーの3社。いずれも知名度の高い大企業ですね。フレッシュさはあまり感じられません。
ベンチマークの7月末の業種ごとの配分は以下の通りです。
2. 日経株価指数
このETFの投資先情報を基に作成したのが下表です。
こちらも2018年7月末、2019年7月末、2020年7月末のデータを持っていました。
黄色で塗った21社は、2021年7月末含めて4回連続でトップ30に入っていた会社です。これまでの3回、一度もトップ30に入っていなかったのに2021年7月末にトップ30入りした会社はゼロです。
7月末の業種別配分です。
3. Russell/NOMURA Small Cap Coreインデックス
こちらのETFのデータを基に作成したのが下表です。
このファンドのデータは2020年7月末しか持っていないのですが、非常に興味深い対比となっています。2020年7月末のトップ30のうち、2021年7月末もトップ30に残っているのは、森永乳業、1社のみです。1年で大きく入れ替わっています。
2021年7月末、マネーフォワードのように勢いあるベンチャー会社が入っていたり、IHIや川崎重工業のような重厚長大感のある歴史ある会社も含まれています。2020年7月末は2位にメルカリが入っていましたが、ここはもう通り過ぎていったのでしょうか。
7月末の業種別配分です。
4. JPX 日経中小型株指数
このETFのデータを基にしてつくったのが下表です。
こちらも2020年7月末のデータしか持っていないので、それとの比較ですが、こちらは黄色で塗った13社が2020年7月末、2021年7月末の両方でトップ30入りしています。
7月末の業種別配分です。
5. S&P 500
このETFのデータを基につくったのが下表です。
こちらのETF、2019年7月末、2020年7月末のデータを持っていましたので、黄色で塗った22社(ALPHABETの発行する2つの株式が入っています)が、2019年7月末、2020年7月末、2021年7月末の3回ともにトップ30に入っています。
業種別配分はこんな感じです。
6. MSCI ACWI Index
このETFのデータを基につくったのが下表です。
こちらのETFは2020年7月末のデータしか持っていません。黄色で塗った25社(ALPHABETの発行する2つの株式が入っています)が2020年7月末、2021年7月末ともにトップ30に入っています。
業種別配分はこんな感じです。
上位10社、上位20社、上位30社への集中度の推移
上のデータを作成した6つのETFについて、上位10社、上位20社、上位30社のウエイトがどうなっているのか、どんな風に変化してきたのか、を見たのが下表です。
この上位投資先への集中度には特に関心を持っています。
こんな仮説を持っています。
パッシブ運用の割合が高まれば高まるほど、インデックスファンドの上位投資先への集中度が高まる。
パッシブ運用は通常、時価総額の大きな会社から順に「買収」していくことになると考えられます。ですから、パッシブ運用が相対的に増えると、時価総額の大きな会社への集中度が高まっていく。こう考えたのです。
上表のTOPIXでの集中度の推移を見ていると、この仮説、イケてる?と思ったりしたのですが、実はこんなデータもありました。
2013年11月末時点のTOPIX 上位30社とウエイトです。
これによると、上位10社 20.26%、上位20社 28.93%、上位30社 36.95%と、2021年7月末よりも集中度が高くなっていました。なお、2013年11月末の上位30社のうち、16社が2021年7月末もトップ30に入っています。
日経株価指数には2014年11月末のデータがありました。
これによると、上位10社 34.35%、上位20社 46.32%、上位30社 56.56%と、こちらは2021年7月末の方が集中度高となっています。なお、2013年11月末の上位30社のうち、21社が2021年7月末もトップ30に入っています。
まだまだデータが少ないですので、これからの定点観測でさらに新しい発見が得られることを期待しています。同時に、時価総額の大きな会社の方に資本が割り当てられることってどうなの?というモヤモヤも抱きながら。
次回をお楽しみに。