5つの”P” と 月次レポート
#月次レポート研究所 です。
こんな募集をさせていただいています。
この中で挙げた3つのお題のうち、2つ目。
● 「5つのP」の軽重をどう考えるか、どんな要素が個々のPに包含されているか、についてのご意見。
こちらについて、僕の意見を書いてみます。
その前に「5つのP」についての発信をご紹介です。
「5つのP」をかんがえてみよう
新しい発信に出会えたら追加していきます。
さて、「5つのP」で検索してみると、
People, Prosperity, Planet, Peace, Partnership
という5つの「P」が一番最初に出てきました。
5つの「P」で考えるSDGs
SDGsには17の目標がありますが,それをさらに5つのキーワードで考えると,よりイメージがしやすくなります。
SDGにも5つの「P」があるんですね、ワオ!
今回のテーマはこれとは違った「5つのP」です。
運用評価におけるポイント
「フィロソフィー(Philosophy)=投資哲学」、
「ピープル(People)=人材」、
「プロセス(Process)=投資プロセス」、
「ポートフォリオ(Portfolio)=ポートフォリオの構成」、
「パフォーマンス(Performance)=運用効果」のこと。
この「5つのP」のうち、どのPを重要視しているか、敢えて順番を付けるとすればどうなるか。また、それぞれのPにはどんな要素が含まれるか。僕の考えを書いてみます。
People
「ロケーション、ロケーション、ロケーション」
不動産や小売で「立地」の重要性が強調されますが、アクティブファンドにおいて最も大事なのはPeople、ファンドに関わる人だと考えています。
People, People, People
「人」が兎にも角にも大事。
どんな経験を積んだ人が、どんな思いでお金を預かり、調査、判断し、意思決定しているのか。それがファンドの「左側」に表現されるからです。「左側」を形づくる「人」は極めて重要です。
しかし、ファンドは「左側」だけでは成り立ちません。「右側」が必須です。
こういうことです。
投資家がお金、「資本」を託すからこそ、ファンドは成り立ちます。したがって、お金の出し手、どんな人がファンドに資金を託しているか、もPeopleという点で非常に大切になってきます。この「資本」をどのように調達してくるか、は言い換えると、ファンドをどう販売するか、ということにつながってきますので、アクティブファンドの場合、投資家と投信会社との間を媒介する販売会社の果たす役割が大きくなります。
ファンドに資金を託している投資家の姿勢、行動を推測するのに有用だと考えているのが受益権総口数です。純資産総額ではなく受益権総口数です。
(純資産総額) ➗ (基準価額) = (受益権総口数)
受益権総口数が増加すれば、それはファンドに新たな資本が注ぎ込まれていることになります。逆に減少していれば、それはファンドから資本が流出していることになります。上のバランスシートからすると「右側」にお金を払い出すために「左側」の資産を処分することになる、ということです。
ひふみ投信の月次レポート からです。受益権総口数が掲載されています。その増減の推移が分かるといいな、と思います。
さらにもう一歩進めて、どれだけの人数の人がそのファンドを保有しているのか、また、どのくらいの期間保有しているのか、そうした情報が分かると、People、ファンドを支える投資家の姿勢や態度に対する解像度がグッと高まるのでは無いでしょうか。
Peopleの次に大事だと考えるのは Philosophy です。
Philosophy
「投資哲学」と呼ばれるものです。重要性はあちこちで強調されています。しかし、説得力をしっかり持っている、「なるほど!」と唸らされるところまで研ぎ込まれたものはまだまだ少ないように感じます。
一案として、こんなアプローチはどうでしょうか。
バリュークリエイトさんの「価値観」です。
どんな基準で判断するのか、について「こんなことは自分たちの流儀に反するので決して行いません」ということを示すようなイメージです。
「こんな会社はヤダ!投資しません」というパターンが明示されていることで、そのファンドの哲学、価値観、判断基準への理解度が高まる。そんな仮説です。
Philosophyと同じくらいに重要なのがProcessです。
Process
非常に納得性の高い、説得力に富んだPhilosophyが仮に掲げられていたとしても、それに則ったファンド運営が実行されているか。通常、当然のように実行されていると考えています。目論見書等で示されているProcessはきちんと実行されていることでしょう。しかし、その実態を詳しく説明していないアクティブファンドが大多数です。このProcessに関する発信の乏しさがアクティブファンドの評価を貶めていると僕は考えています。
投資候補の選別、ショートリストにする過程でどんな行動を取っているのか、投資候補となった会社をどんな角度から調査し、どんな視点で分析を行ったのか、それらを基に如何なる投資仮説を打ち立て投資判断を行なったのか。
投資実行後、投資先をどのようにモニタリングし、どんな対話を持ったのか、判断変更(配分を増やす、減らす、はたまた、売却する)の要否をどう判断するのか。
当然、全ての行動、Processを具体的に説明することは不可能でしょうし、そんなことは求めません。でも、新規投資するかしないか最終判断に迫っている会社の数、配分の増減を検討中の投資先の数、全売却も視野に入ってい投資先の数とか、そういうことが分かると、ファンドの運営についてのイメージが深まると思うんですよね。
その月に新しい投資先を何社加えたのか、保有株式を全売却とした会社が何社あったのか、それくらいは月次レポートに当然のように報告してもらいたいものです。
People, Philosophy, Process の結晶がPortfolioですね。
Portfolio
ファンドの全ての投資先を月次で確認することが出来たら楽しいのですけど、特にそこまでは求めていません。
エディンバラのある投資会社のポートフォリオの説明資料からです。
投資先全体を一つの会社と見立てた業績や財務の指標も入っていて、それに加えて、市場の評価 Valuation についても明示されています。アクティブシェア、回転率も。この種のデータを提供してもらえると嬉しいですね。各指標のこれまでの推移が分かるとさらに嬉しいです。
月次レポートにポートフォリオの特性(ファンダメンタル、バリュエーション等)が当たり前に掲載されるようになって欲しいですね。
Performance は最後です。
Performance
ファンドのパフォーマンスについて、この種のグラフをあちこちで見かけますよね。
この種のグラフ、チャートにあまり意味があるとは思っていません。ほとんどの月次レポートもこの種のグラフを載せていますけれど。このチャートはある一瞬を切り取ったスナップショットです。どこを起点にするか、で大きく変化します。そして、投資信託はほぼ全ての営業日で買付、解約ができます。ですので、ある期間、例えば5年保有していた場合のパフォーマンスがどんな風に推移していたか、を僕は重視しています。ローリングリターンです。
米国のRoyce Investment Partnersのあるファンドのページからです。
10年保有、直近20年間のデータ期間数121個のうち、80の期間でベンチマークを上回るパフォーマンスだと示しています(左側の表)。また、10年保有で年率10%以上のパフォーマンスだった期間が235のうち167個あったことを示しています。10年で年率10%とは、2.5倍以上になったということです。
ただ、Performanceはあくまで過去のお話です。将来のことは分かりません。ですので、ここに大きな注意、関心を払っても仕方がないな、というのが率直なところです。
Performanceがどんなに傑出していても、People, Philosophy, Process, Portfolioに「なるほど」と納得できなければ、自分自身の資本を託してみたいという関心、興味は湧き起こってきません。
People > Philosophy=Process=Portfolio >>> Performance
5つのPに軽重をつけるとすると、僕の考えは上記の通りとなります。
5つのPについて、どんなお考えを持たれているのか、様々なご意見を聞いてみたいです。
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