世の中を良くする企業ファンド の月次レポートに注目です!
グリーンウォッシュとは、1980年代に環境保護活動家のジェイ・ウェストベルトが提唱した言葉で、企業が環境に対する取組みにおいて実態よりもよく見えるように宣伝することである。主に企業が環境保護活動において虚偽の主張や、誤解を招くような主張をする際に指摘する言葉となる。
この”グリーンウォッシュ”の派生語として、最近、”ESGウォッシュ”を目にすることが多くなりましたね。
言葉を選ばずに書くと”ESGウォッシュ”はこんな感じでしょうか。
ファンドの名前に「ESG」(あるいはそれを連想される言葉)を付けているけど、それは看板、表紙だけ。その実、ESGに配慮しているとは言えない、そんなファンド。
それが”ESGウォッシュ”ということになるのでしょう。
上記のThinkESGでは、こんな指摘がなされています。
3. 運用会社は十分な報告を行っているか?
優良なESG投資商品は、持続可能性や倫理的かつソーシャル関連のコミットメントの進捗状況を投資家に定期的に報告しているだろう。
資産運用会社はどのように持続可能性を上げたのか、あるいはエンゲージメント(目的を持った対話)を通じてどのように企業活動に良い影響をもたらしたか、などについて報告を行っているかを確認するのが好ましい。
ESG投資ファンドで最も大事なことは、突き詰めると、次の3つだと考えています。
1. 投資判断の責任者、ファンドマネジャーが、自分たちで設けた基準に沿って、調査、分析しているか、投資判断をしているか。
2. 投資先の事業活動で実現される価値、その創造のプロセスにおいて、地球環境や社会課題がきちんと考慮されているか、それを持続的なものとすることが出来ているか、投資先としっかりと真正面から「対話」出来ているか。
3. 上記の2つの点で、お金を託されている側が、お金を託した投資家に、自分たちの「行動」をしっかりと報告、また、年に一度程度、対話出来ているか。
3つ目で「行動」と書いたのは、日本の公募ファンドの月次レポートのその大多数が、”運用状況”、”今後の方針”で終えてしまっている実状があるからです。
”運用状況”は投資先の株価、市場からの評価の騰落が中心です。それはファンドマネジャーの投資判断の結果であって「行動」ではありません。売買の行動が書かれていることもありますが、売買という行動に、投資家はお金を預けているのでしょうか。その行動の元になった判断、そこに至らしめた調査、分析、意思決定に投資家はお金(資本)を託しているのです。語るべきは「A社の株式を買いました、B社の株式を売りました」ではなく、その判断に至るまでにどのくらいの時間をかけて、どんな調査、分析を行って、その結果、得られた投資仮説はどんなものだったのか、そうしたプロセスでしょう。
もう一つ、非常に大事なことがあります。それは投資先の会社のモニタリングです。
投資先の価値が損なわれていないか、投資決定した際の投資仮説は立証されているか、それらの評価をどのように調査、検証しているか、という「行動」です。
加えて、ESG投資ファンドであれば、そうした検証や、より一層進歩した事業活動が実現できないか、と投資先と「対話」できているか、です。
”今後の方針”はあくまで「これから、こうします」という計画です。計画のレビューが次月以降で為されない限り、ほとんど意味が無いように思われます。また、多くの場合、内容は抽象的なものです。
あるファンド名に”ESG"を銘打った公募ファンドの月次レポートから です。
ESG投資ファンドを名乗る以上、
+投資先との「対話」。きちんと行動できているか。
+投資家への「報告」、「対話」。丁寧に行動できているか。
この2つが問われるものと僕は考えています。
こうした「対話」が身のあるものとなるためには、投資先の会社、投資家との関係が時間の経過とともに強くなっていくことも大きな要素になります。
投資先の会社を頻繁に入れ替えているようなファンド。そんなファンドが投資先と、ちゃんと「対話」出来るでしょうか。しっかりと腰を据えて長期の目線で投資しているからこそお互いを尊重した「対話」が実現するものと思います。投資家との関係も同様でしょう。出たり入ったりの投資家が多く、ファンドの資金流出入も不安定。そうした関係である限りは、お互いの信頼は育たないことでしょう。
昨日、Shimoyamaさんのツイートでこんなファンドが設定されたことを知りました。
世の中を良くする企業ファンド
「世の中を良くする」 と銘打っています。
販売しているSBI証券に特設ページがありました。
当ファンドは、「世の中を良くする企業=社会的課題の解決をする(SDGsに貢献する)ことによって、長期にわたり企業価値を向上させていくことが出来る企業」に投資を行います。
具体的にどんな会社に投資するのか、ということなのでしょう。こんなページもありました。
ESGに取り組む注目の"世の中を良くする企業"を深堀り! 第一回 「ダイキン工業株式会社」
”第一回”と書かれているので、何回か続くのでしょうね。
ESGの視点から説明されているように見えるものの、そもそもESGの要素を投資判断でどのように考慮するのか、そこはこのページで説明されているようには感じられません。
そこで交付目論見書を確認してみました。
わが国の株式の中から、SDGs※1 や ESG※2 などに係る社会的課題の解決への取り組みに着目し、利益成⻑することが期待される企業の株式に実質的に投資することを基本とします。
わが国の上場株式の中から、個別企業の調査・分析等に基 づいたボトムアップアプローチにより、SDGs への取り組み、一定以上の収益力の持続性について評価を行ない、投資候補銘柄を絞り込みます。
投資候補銘柄の中から、ESG への取り組み、企業理念や事 業の持続性・革新性、バリュエーションなどの観点から組 入銘柄を選定し、市場動向、流動性等を勘案して組入比率 を決定します。
ある程度具体性を持って説明されている箇所は以上です。1ページで終了です。
ESG投資ファンドでは、上述の通り、投資実行後の「対話」がとても大事になってくると考えていますが、「対話」という言葉は目論見書の中には見当たりませんでした。
ただ、これは「目論見書」です。「これから、こうします」という計画です。
ファンドにお金を託してくれた投資家の為にどんな「行動」を為したのか、それを報告する、伝えられる媒体がある!
「月次レポート」ですね。
「世の中を良くする」とまで言い切っているわけですから、どうしてそのように判断したのか、丁寧にわかりやすく説明してくれることでしょう。
このファンドの「月次レポート」が楽しみですね。注目されますね。
”世の中を良くする企業ファンド” で検索してみると、もう1本、HITするファンドがあります。
確定拠出年金向けに設定されたファンドのようです。
設定は2020年5月。2021年3月時点の投資先は 運用報告書 からです。
38社に投資しているようです。既視感があるような、、、
直近の月次レポート からです。
上記の決算から約4ヶ月。投資先は37社。10位のソニーグループは2021年3月時点では投資先に含まれていません。この4ヶ月で新たに投資先に加えられたということです。つまり、この4ヶ月で38社のうち、少なくとも2社の株式が全売却されたことになります。
このような投資姿勢が果たして、投資先との真摯な「対話」を実現するのか、という疑問を抱いてしまいます。もちろん、投資判断ですから、全売却という行動そのものを否定するわけではありません。ESG要素を考慮した上での判断なのか、それ以外の要素(業績の見通し、あるいは、市場での評価=バリュエーション)による判断なのか、そうした判断理由を示されるべきでは。
ほぼ同じ名前なのに、マザーファンドが違うものになっているのも奇異な感じですね。
この辺は細かい話です。
大事なポイント、繰り返しておきます。
「月次レポート」が楽しみですね。注目されますね。