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「自己分析」じゃない、自分の市場価値のつくりかた

今回の #樺恋課題図書 では、テクノロジーに殺されない働き方とキャリアの築き方を提唱する『Work in Tech!』を読んでいきます。

本書は2022年1月に刊行された本ですが、そのわずか一ヶ月前に発表されたAIチャットサービス「chat GPT」によって、私たちの生活はまた大きく変化しましたね。

学校のレポート課題でも、就活の「ガクチカ」を書くにも、まずはchat GPTに要点整理をしてもらう……なんてことが日常化しました。

AIやら、テクノロジーやら、文系だからよくわからないや、なんて思っているうちに、気づけば自分がAIやテクノロジーに頼りっぱなしの生活になっているんです。

「テクノロジーが仕事を飲み込む」どころか「生活を飲み込む」この時代に、私たちはどのようにして「自分の市場価値」を創造するのか。

多くの転職を経験してきた著者の森山太郎さんは、ユニコーン企業に身を置くことと結論づけています。なぜ、多くの企業が溢れかえるなか、ユニコーン企業が選ばれるのか。

『Work in Tech!』から読み解いていきましょう。

世の中の変化パターンを知る

まずは、テクノロジーによって、世の中がどのように変化しているのか、そのパターンを理解していきましょう。パターンは3つです。

1.世界は「落下」している

地球上のあらゆる物が「重力」、つまり「万有引力」に逆らえないのと同様に、僕らの住む社会や産業構造も、あるべく方向に向かって不可逆的に変化していく。

第1章 テクノロジーがもたらすピンチとチャンス p.23

つまり、テクノロジーが社会を侵食することは、もはや避けられない事実であるのです。いくら私たちがテクノロジーに抗おうとしても、世界はテクノロジーと共にあり続ける、あることを「選ぶ」というわけですね。

世界は「回転」している

何かがゆき過ぎれば必ず揺り戻しがあるように、そこには「反転する力」が働きます。

第1章 テクノロジーがもたらすピンチとチャンス p.29

テクノロジーが社会に浸透するとき、その「反対向きの力」も同時に発生します。本文にも挙げられていますが、テクノロジーが身近になればなるほど「デジタルデトックス」が持つ力も増大していくのです。

世界というものは面白いもので、一つの需要が満たされたとき、その全く反対の需要が上がっていきます。

需要と供給の入れ替わり、つまり「回転」する力で、今までの社会は前進をつづけてきました。

世界は「らせん運動」している

今まで、世界はあるべき方向に「落下」し、また、そのあるべき方向とは反対の力が作用することで「回転」しながら成長すると述べてきました。

そして、この二つが組み合わさったとき、世界は「落下」しながら「回転」していく、「らせん運動」を生み出すのです。

この概念は、18世紀末から19世紀初頭にかけて、ドイツの哲学者ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲルが「事物のらせん的発展の法則」として、すでに提唱されてきたものだそう。

この法則があらわす事実は、「発展とは、視点を変えれば原点回帰である」ということでもあります。つまり、テクノロジーによって姿を変えて復活してくるということです。

第1章 テクノロジーがもたらすピンチとチャンス p.35

手紙がメールに置き換わり、メールがLINEに置き換わったように、手段は時代ごとに変化を変えながらも、その根幹は変わりません。

「古くて懐かしいもの」はそこで廃れているのではなく、らせんを描くようにして、「新しいもの」に姿を変えて、世界に存在し続けているのです。

世界は「細切れ化」している

私たちは、テクノロジーが進歩するにつれて、どんどんと情報を細分化していっています。

例えば、長いテレビからYoutube、そしてさらに数秒単位のtiktokに移行していったり、Airbandbを利用して、一時的な空き家を民泊として利用したり。

どんどんと価値も、需要も細分化されているのです。需要が限定的だから、それに注力すれば値段は安く、かつ価値は高く設定できます。

テクノロジーの進歩によって、全てをカバーできることより、細かなニーズにアクセスすることが求められる世の中になっているのですね。

世界は「タイムリープ」している

世界は、時として、予想された水準よりはるかに速いスピードで成長を遂げることがあります。

本文では、新型コロナウイルスの到来によって、2019年のEC化率は15%だったのに対して、2020年1月〜3月のわずか三ヶ月で、2倍の30%に到達したそう。

これは、想定では10年かけて到達する数字だったらしく、その意味で私たちは10年の世界にタイムリープしていることになるのです。

このように僕らが住む世界は、時として一足飛びに時計の針を進めてしまうことがあります。

第1章 テクノロジーがもたらすピンチとチャンス p.48

この表現で、私的におしゃれでグッときました。世界の歩みは、想像を
膨らませ、予測することはできても、コントロールすることはできないのですね。

このように、世界ではいくつもの予測不可能な出来事が発生し、それに伴うように需要は流動的に変化していきます。そこには大きなチャンスと同時に、ピンチも紛れていることでしょう。偶然で突発的な波のなかで私たちは生きているのです。

では、そんな世の中で、自分のキャリアをより良いものにするにはどうすればいいのか。著者である森山さんは、自身のキャリア遍歴をこう称しています。

早くからテクノロジーとの共存を選び、世の中が変化する方向に”先回り”した

テクノロジーという名のビッグウェーブに乗り続けたからこそ、今の自分のキャリアがあると、森山さんは説いているのです。そして、そのビッグウェーブに乗るための手段こそ、ユニコーン企業に入ることでした。

ユニコーン企業とは

まず、ユニコーン企業とは「評価額が10億ドル以上の非公開スタートアップ企業」を指します。

そして、森山さんが注目しているのは、そのビジネスモデルでも評価総額でもありません。ユニコーン企業特有の「カルチャー文化」です。

見るべきはルールではなくカルチャー

一般的に、会社には「ルール」と「カルチャー」があります。ルールはそれを破れば悪となる、つまり「良し悪し」の問題。「カルチャー」は、文化や価値観など、「好き嫌い」の問題です。

そして、多数の企業を経験してきた森山さんは「ルールよりもカルチャーで駆動する」ユニコーン企業の特性が、その成長を後押ししているのだと結論づけました。

テクノロジーを使ってラクをするのは「美しい」こと

第2章 ユニコーン企業という「異世界」のカルチャー p.85

「働く」ということは、9時から17時までパソコンに向かうことでも、地道な資料作成をすることでもなく、いかに効率よく成果を出せるかを試行錯誤すること。

あなたの思考、そして成果を評価してくれる「カルチャー」のある企業こそ、入るべき組織なのです。

人材不足だから挑戦できる

ユニコーン企業は、その圧倒的な成長スピードと同時に圧倒的な人手不足でもあるそう。

だから、高レベルな仕事を若手でも担えるチャンスが、無数に転がっているのです。あとは、企業のカルチャーが肌に合ってさえいれば、あなたは職種の業界を超えて活躍できる人間になることができます。

キャリアが育っていないうちは、何が自分に合っているのかなんて、わかりません。とにかく挑戦できる環境こそ、自己を育てるカギとなるのです。

成長は「内部要因」でなく「外部要因」

会社員の年収は、市場価値で決まります。ですが、その市場価値はどうやって決まるのでしょうか。市場価値を決める要素は主に4つです。

  1. 「業界自体の成長」

  2. 「事業の成長と収益性」

  3. 「会社の人件費に関する方針」

  4. 「個人の実績」

そして、この4つの要素が掛け合わさることで、総合的な個人の市場価値が決まります。1から4の順番で、その影響は大きくなると考えてください。

そう考えると、個人の実績の影響は他3つに比べて大きいですが、市場価値を構成しているものの3/4が、「外部的要因」であることに気づくはず。

極論かもしれませんが、事業が「成長」がすべてです。なぜなら、事業が成長しなくても、人は年をとるからです。

第3章 凡人を進化させる急成長企業のメカニズム p.126

事業が成長してさえいれば、そこいん身を置く自分のレベルも自ずと上がっていきます。何より大切なのは、「環境」なのです。

自分探しではなく、自分をブランディングする

では、そんな素敵な環境にと飛び込むにはどうすればいいのか。入りたくても入れないじゃないか、というのが本音ですよね。

まず、日本の就職活動には「自己分析」が不可欠です。過去の人生選択から、自分がどんな人間で、どんな適正があるかを考える……でも、過去だけで自分をつくりあげるのは、あまりにも早計です。未経験の業種に、あなたの適正があるのかもしれませんから。

「自分なんてもの、今はない。ないものはないんだから仕方がない」

第4章 自分という商品を「再設計をしよう p.132

自分を探すから、やりたいことがわからなくなる。だったら、いっそ目の前のものに全力で取り組んでみることが大事だと、森山さんは説いています。

一つのことをやり切ることができれば、それに対するフィードバックが手に入ります。客観的な「得意不得意」、そして主観的な「やりたくないこと」がわかるのです。

やりたいことより、やりたくないこと

やりたいことは人間無限に考えつくものですが、意外とやりたくないものは少なく、また確立したものとしてあります。

だからとにかくやってみて、「やりたくない」を見つける。「やりたくない」を探すことで、最終的な「やりたい」を見つけるのが、実は一番効率のいい方法なのでした。

独学で実績をつくる

やりたい方針が決まっても、アピールできるところがない……、なら、アピールポイントをつくってしまいましょう。

例えば、未経験でウェブマーケティングに転職したいと言っても、そのための行動を何もしていなければ、もちろん評価の対象にはなりません。

だから、自分でYoutubeを開設し、そこに広告を自費で打ってみるのです。それがたとえうまくいかなくても、「経験」があなたの武器になります。

周りとの差をつくるのは、いつだって圧倒的なトライアンドエラー。経験のある人間の言葉には、自然と説得力が生まれているはずです。

未来の大手を嗅ぎ分ける

ここまで準備できたなら、次は場所選びです。大手か、はたまたベンチャーかで悩む必要はありません。大切なのは、その企業が未来でも成長し続けるかどうか。それを見分ける、4つのポイントを解説していきます。

  1. 伸びる市場で収益性の高いビジネスをしているか

  2. 過去数年間の売り上げがマーケットの成長率を超えているか

  3. ビジネスモデルは参入障壁を持つか

  4. 海外マーケットの先行事例があるか

  5. 優秀な人材が揃っているか

この5つの要素を満たしている企業は、今後も成長していく可能性が高いそう。ただ、その情報が公開されているかは、わかりませんよね。

そうなったときに役立つのがエージェントの存在です。エージェントは独自の情報網でそういった情報を手にすることができます。自分だけでは賄えないところは最大限他人に頼る力も大切なのですね。

「自分をSEOする」就職アプローチ

森山さんは、従来の就職プロセスとは違った、SEO型の就職アプローチについても言及しています。

ユニコーン企業は、先述したように、流れが早く、突発的な需要が生まれやすい状態にあります。だから、自分からアクセスしても、自分の能力と需要が噛み合わないことが多々あります。

だから、必要なときに自分が「探される」環境をつくりあげてしまえばいいのです。

SNSやプラットフォームを使い、情報を発信し続ければ、それを目に留めてくれる人がいるかもしれません。

「ゆるいつながり」が大きなチャンスを引き寄せると、森山さんは実体験として説明していました。

就職がゴールではない

今までのメゾットを全て活用すれば、就職の成功率は飛躍的にアップするはず。でも、それだけで終わりではいけません。

テクノロジーによって全てが可視化された現代社会では、小手先のテクニックでは到底会社内をサバイブすることができないのです。

忘れてはならないのは、そこに何をするか。就職活動は、そのための手段なのです。

長い職業人生で本当に大切なのは、転職よりも一緒に働いた人たちとの「絆」だと思います。

第5章 あなたが「探される仕組み」をつくろう p.221

関わることができてよかったと思わせる人材、そして人間になることが、私たちの最終到達点なのではないでしょうか。

生き抜くためにスキルを磨け

メタスキルのある人間になる

どこにいても必要とされる人間になるために、最後に必要なのはスキルです。森山さんはテクノロジー社会を生きるために必要はスキルを「メタスキル」と称しました。

メタスキルとは・・・新たなスキルを①選別、②習得、③応用するスキルである。

第6章 「メタスキル」と「センス」を鍛えよう p.227

的確なニーズのあるスキルを「選び」、スキルを「習得」するためのルーティーンを確立し、複数のスキルを「応用」して新しいスキルとする力、つまりメタスキルが、現代社会には求められているのです。

センスを磨く

メタスキルを得るにはある程度のセンスも必要です。大きく3つのセンスに分けて、簡単にご説明します。

  • 相手に「なりきって」思考するセンス

  • 悩みを「解決」でなく「解消」で考えるセンス

  • 逆境を「面白がる」センス

つまり、客観的に、マクロな視線で物事を捉えること。これが人生で磨くべき「センス」だったのです。

まとめ

『work in Tech!』は就活中の私が心のなかで感じでいた漠然とした不安、モヤモヤを的確に言語化し、明確なアンサーを提示してくれるような一冊でした。

目先の安定でなく、自分を成長させ続けることを選ぶ。それこそが、自分の人生を豊かに、そして安定させる秘訣でした。

個人的に、すごく学びのあるポイントが多く、私の人生の軸にも大きく関わった一冊でした。

転職者向けに書かれた本ですが、将来ビジョンに悩んでいる全ての人におすすめしたい一冊です。




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