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底辺と謳われた仕事⑦

初めての給料って覚えてますか?

第7話『まともな給料』

私が前職の介護職で貰っていたお給料は毎月手取りで25万円
昇給もなく、それを8年間過ごして来た
しかも、景気が良い時は多少のボーナスもあったけど流行病の後から徐々に少なくなり、最後には寸志もなくなった

今思えばエゲツない
出来れば過去に戻ってタクシーの仕事を勧めてあげたいくらいだ

タクシー業界の給料体系も会社によっては様々あるけど、私の会社は基本給と運賃で稼いだ分から諸々の経費を引いて分配される一時金が毎月もらえる
それとは別に4ヶ月に一度ボーナスも出る

あまり細かく言えないが1ヶ月あたり前職の倍くらいは稼げる様になった

ただ、入社2ヶ月は色んな調整があってマトモな給料が支給されなかったので、嫁さんはヤキモキしていたと思う笑

あれだけワガママを通して転職したのだから、何とか前職よりもガッツリ稼げる所を見せたかった

そうこうしている間にタクシー業界に飛び込んであっという間に2ヶ月が過ぎ、タイミングよくボーナスも貰える時が来た

まだ勤務2ヶ月なのでボーナスは通常の半分にも満たなかったが、それでも基本給と合わせて前職の倍を軽く超えた

私は恐る恐る給与明細を嫁に見せた
嫁は基本、私の言葉を信用しない
彼女が信じるのは目の前にある事実のみ

『……頑張ったね。お疲れ様』
言葉少なく彼女は言った

介護職時代、私の小遣いは毎月1万円
確かに使い道と言えばコンビニでおやつを買ったり休み前にビールを買う程度なので使う事も少なく、キツくはなかったのだが44歳のオッサンが1万円なんて信じられないと周りにはよく言われた
でも、それは給料が少ないのが原因なのだから文句のつけようがない


給与明細を見た彼女はまだ半分信じられないといった表情だったが、『今度からお小遣い倍にしてあげるね』と約束してくれた

それほどまでに、この時の給料は嫁にとって衝撃だったらしい

もちろん事前にある程度話してはいたのだが、まるで信用して貰えてなかったという事が良く分かる話だ

住宅ローン、生活費、学費など色んな不安があったと思う

44歳で夫が無職になり、タクシー業界で働きたいと告られたら普通じゃいられないと今でも思うが、彼女は文句ひとつ言わずに毎日おにぎりを握ってくれた

そんな彼女にようやく安心を届ける事が出来たのだ

つづく

#創作大賞2023

第1話

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