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海水から「塩」をつくる
誰もが一度は海水から塩をつくってみたいと思ったことがあるのではないだろうか。小学生の弟が自由研究で海水から塩をつくろうとしていたので、大学生の私もやってみることにした。
私の塩づくりは『塩の絵本』を参考にしている。子ども向けの絵本だが、イラストと写真付きで解説してあるので、何冊か読んだ本の中では一番わかりやすかった。自由研究で塩をつくってみたい人はぜひ読んで欲しい。
1,海水を汲む
海が遠い地域の人にとっては、まず海水を汲んでくることが難しいかもしれない。幸い海からそう遠くないところに住んでいるので、30分ほど車を走らせて海に出る。
写真は周辺地域が日本ジオパークに指定されている桂島の砂浜。海水浴場や港から離れている水の澄んだ場所を探して、2Lのペットボトルいっぱいに水を汲んだ。
2,海水をろ過する
ろ紙がないので厚めのクッキングペーパーで細かい砂やほこりを取り除く。透明で透き通ってみえる海水でも、けっこう砂やゴミが取れた。クッキングペーパーよりもコーヒーフィルターの方がよかったかもしれない。
3,荒焚き
2Lの海水を、10分の1の200gまで強火で煮詰める。
だんだん鍋のフチに白い結晶が付着してきた。これは塩ではなく、石こうだ。海水の中には、塩(塩化ナトリウム)以外にも色々なものが混じっていて、その中でも一番最初に結晶化するのが石こう(硫酸カルシウム)だ。海水を10分の1くらい煮詰めて、さらさらした石こうが鍋の底に溜まってきたらしてきたら一度火を止めて、石こうを取り除く。
ここではコーヒーフィルターを使った。クッキングペーパーよりも目が細かい気がする。コーヒーフィルターに付着している白いものが石こう。一回目は火を止めるのが早すぎたので、2回荒炊きした。初めてだと加減が難しい。
4,本焚き
ここから煮詰めて塩をつくっていく。
はじめは、荒炊きのときと同じように水が白く濁ってきた。どうやらまだ石こうが少し残っていたようだが、少しならいいかと思って続ける。
10分ほど強火にかけていると、塩が結晶化してきた!石こうも白い結晶だったので、塩の結晶と区別がつくのだろうかと疑問に思っていたが、塩は石こうよりも大きな結晶なので見分けがつく。写真でもはっきりと違いがわかると思う。
弱火にして、さらに煮詰めていく。少し目を離していたら、コンロから「ポンッ」「ポンッ」という怪しい音が聞こえてきたので慌てて見に行くと、コンロの周りに塩が飛び散っていた!本炊きは土鍋でするように書いてあったが、土鍋がなかったので普通の鍋でしたのが悪かったのか…。見苦しくて申し訳ないが、現場の惨状がよく伝わるかなと思ったので写真を載せておく。
少し水分が残っているところで火を止める。この水分は、豆腐を作るときに使われる「苦汁」らしい。まだ結晶化していない塩化マグネシウムや塩化カリウムなどが含まれているのだ。苦汁が多い塩はまずくなるらしい。写真のコーヒーフィルターの上に乗っている白いものが塩で、下に落ちてくる水分が苦汁。このあと、さらに苦汁を布巾で絞ってから日向で天日干しする。
5,完成
出来上がったのは、まさに塩!全部で60gほどの真っ白で美しい塩ができた。普段家で使っている天然塩と食べ比べてみても、劣らない味の美味しい塩ができた!!これから普段の料理に使おうと思う。手始めに塩むすびを作ってみた。
今回は2Lの海水から60gほどの塩をつくることができたが、いずれは1年分の塩を自分で作れるようになりたい。宮本常一『塩の民俗と生活』によると、海岸の近くでは薪を持って塩焚きにきた人もいたらしい。塩を自給できれば、大幅に生きる力が高まる気がする。しかし、昔と違い、海水の汚染が少し気がかりだ。どこの海にもマイクロプラスチックがあるなどと聞くと、自分の汲んできた海水は大丈夫だろうかと不安になる。
【参考】
高梨浩樹編・沢田としき絵『塩の絵本』農山漁村文化協会.2006
田村善次郎編・宮本常一著『宮本常一著作集49 塩の民俗と生活』未來社.2007