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動き出した時間
そういえばあの日の夜もこんな月だった。
ふと夜空を見上げると一瞬で蘇ってきた記憶
青く光るあの月は、別れた恋人の瞳のようで
まるで昨日の事のように思い出した。
僕たちはもう戻れないとわかっていたのに
砕けて散らばった心をつなぎ合わせるかのように
目を閉じてただ抱きしめ合っていた。
ふと目を開けるとキミは僕を見ていて
少し悲しそうに微笑みながら瞳からは涙が零れていた。
信じ合えていたはずだった
でもそう思っていたのは僕だけで
優しい恋人に甘えていた僕は
不安にさせていたことにも気づかず
彼女を孤独に閉じ込めていた。
まるで夜空に浮かぶ星のように
いくつもの数えきれない想いが溢れ出して
だけどどうしたらいいのかわからなくて
わかり合えないもどかしさに苛立ちながらも
僕が終わりを受け入れていくのと同じように
まるで壊れるように夜は更けていくだけだった。
あの日のキミの瞳とそこに映る僕の瞳は
今夜の月の青さととてもよく似ていて
それを思い出した瞬間から
僕は涙が止まらなかった。
あの日から止まっていた月日が
ようやく少しずつ動き出すかのように
凍ったままの心は涙と一緒に溶け出していくかのように
僕は、ただただ泣いていたんだ。